悔やみきれぬまま、愛は焼き尽くされた第2話
この話は約1820字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
この数年、金策のために私は何度も地下の闇市に足を運んできた。
今回も例外ではない。私は血を買い取る関係者を見つけ出した。
「親分、いつも通り……私の血を抜いてください」
男は横柄に私をねめつけると、肉のついた顔に蔑みの色を浮かべた。「てめえみたいな病弱な体で、どれだけの血が残ってんだよ?」
「だい、大丈夫です!体は丈夫なんですよ!」私は慌てて袖をまくり上げ、注射痕だらけの腕を見せた。
「幽霊みたいにガリガリじゃねえか。100mlも取れやしねえよ、さっさと失せろ!」
「親分!お願いします!少し……ほんの少しでいいんです!」私は必死に彼のズボンの裾を掴み、涙をボロボロとこぼした。
「娘の命がかかってるんです!お願い、彼女を助けるためにお金が必要です!」
しつこく縋る私に苛立ったのか、男は力任せに私を蹴り飛ばした。「消えろ!縁起でもねえ!」
突き飛ばされた私は、地べたに這いつくばった。
病院が設定した期限まで、あと十時間しかない。
涙が止まらない中、ふと七年前の海斗のことを思い出した。
大学を卒業したばかりの頃、彼は「親の七光りは借りたくない」と言った。
それで、私も一緒に手持ちの金をすべてプロジェクトに注ぎ込み、起業資金にした。
最も苦しい時期、二人は狭くて湿った地下室に身を寄せていた。
海斗は申し訳なさそうに私を抱きしめて泣いた。
「知里、俺は必ず成り上がってみせる」
「必ずお前を幸せにするからな」
ただ、私が望んでいたのは、ただ海斗の揺るぎない愛だけだった。
冷たい風が窓から吹き込んできて、私は彼の胸に潜り込んで温もりを求め、力強い心拍を聞いた。
「何もいらないわ。ただ、あなたの愛を全部私に頂戴。海斗、私に一滴の涙も流させないで」
会社が少し軌道に乗った頃、海斗は競合他社から悪質な嫌がらせを受け、事務所に暴漢が乗り込んできたことがあった。
海斗に突き出された刃物を見て、私は無我夢中で飛び出し、身代わりになった。
痛くて、痛くて、たまらなかった。
あの日、私は海斗との最初の子供を失った。
海斗はひどく泣きじゃくった。
私は彼が自分を責めるのが怖くて、泣き言ひとつ言わずに笑ってみせた。「大丈夫だよ」と慰めた。
その後、海斗は自らの腕一本で業界の新星へと躍り出た。
彼は一流の医師を呼び寄せ、私の体を整えてくれた。
過酷な健康状況ではあったけれど、私は今の娘、希を授かった。
彼に伝えようとした前夜、彼の母親が私を訪ねてきたのだ。
そして……私は海斗のもとを去り、一人で希を産み育てた。
だが半年前、希に重病が見つかった。
行き詰まった私は、再び海斗に頼るしかなかった。
けれど、私たちの関係はもう、元には戻らなかった。
寒風が吹きつけ、私の思考をかき乱す。
希を救えるなら……
給仕だろうが何だろうが構わない。たとえ地獄へ行けと言われても、私は行かなければならない。
私は涙を拭い、会場へと向かった。
莉奈が海斗の腕に絡まり、客をもてなしている。
周囲の嘲笑の視線が私に突き刺さった。
莉奈は得意げに手をかざした。薬指のダイヤの指輪が眩しく光っている。
私は一瞬、その輝きに目を焼かれたような痛みを覚えた。
そのデザインは私にとってあまりにも馴染み深い。
かつて海斗と恋に落ちた時、私が自らデザインしたダイヤの指輪だ。今、同じモデルが莉奈の指にはまっている。
ただ、彼女のダイヤは私が持っていたものより、ずっと高価そうだ。
彼女が美しく輝いている一方で、私は見る影もなく痩せこけているように。
「すみません、ここ、ワインお願い」聞き慣れた声が響いた。
海斗が莉奈を抱きしめ、その視線を私に釘付けにしている。
私は顔を伏せ、できるだけ正体が知られないように足早に近づいた。
「皆に紹介しよう」海斗は私からワインを受け取ると、無造作にグラスを揺らした。「こちらが、かつて没落した佐藤家の令嬢、知里だ」
会場が一瞬にして静まり返った。
無数の視線が私に集中する。
「嘘でしょ、あれが本当に佐藤知里?なんであんな姿に……」
「あの時、金のために藤原社長を振ったって噂だけど、バチが当たったのね」
莉奈は口元を押さえ、わざとらしく驚いて見せた。「あら、本当に佐藤さんですね」
彼女は海斗の腕にすがり、無邪気な笑みを浮かべた。
「佐藤さん、ウェイトレスを選んだならルールを守らなきゃダメですよ」
彼女は一歩、足を前に踏み出した。「さっき入ってきた時、靴に埃がついちゃって。
佐藤さんは昔から綺麗好きでしたよね。私の靴、拭いてくださいますか?」
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