和紙文悔やみきれぬまま、愛は焼き尽くされた · 第3話設定≡

悔やみきれぬまま、愛は焼き尽くされた第3話

この話は約1428字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

周囲に低い嘲笑が響き渡った。

海斗はただ冷たく私を見下ろしている。

かつての私のように、酒を彼の顔にぶちまけるのを待っているかのようだった。

しかし、私はそうしなかった。

プライドなんて、生活という重荷にとうの昔に踏み潰されている。

希が生きられるなら、それでいい。

私は何の迷いもなかった。

皆が息を呑む中、床に深く膝をついた。

そしてゆっくりと手を伸ばし、袖口で莉奈の靴先を少しずつ拭き始めた。

「浅川様、お拭きします……

綺麗にしたら、チップをいただけますか?」

会場は静寂に包まれた。

その時、海斗の手にあったグラスが音を立てて砕け散った。

酒がガラスの破片と共に彼の手に突き刺さった。

彼は信じられないものを見るような、激しい怒りに満ちた目で私を凝視していた。

かつてあれほど誇り高かった女が、金のために本当に膝を屈したことが、彼には耐え難かったのだろう。

莉奈も、私が本当に跪くとは思っていなかったようだ。

一瞬呆然とした彼女だったが、すぐに私の手の甲をこれでもかと力任せに踏みつけた。

「あ……っ!」

あまりの激痛にうめき声が漏れ、痛みが神経を通って脳天を突き抜ける。

けれど、手を引く勇気はなかった。

今ここで手を引けば、1000万円が消えてしまう。

私は激痛に耐え、彼女が何度も踏みつけるままに任せた。

「あらぁ、佐藤さん、手が硬すぎて私の足が痛くなっちゃうんですわ」莉奈は甘えるような声を出しながら、さらに力を込めて踏みつけた。

周囲のひそひそ話が大きくなった。

「さすがにやりすぎじゃないか……」

「知里だって、元はお嬢様だったのに」

見ていられず、顔を背ける者もいた。

「もういい!」

海斗が突然叫び、莉奈を突き飛ばした。

そして私の襟首を掴み、床から強引に引きずり上げた。

「佐藤知里、そんなに金が欲しいのか!

プライドも捨てて、踏まれてまで金が欲しいのかよ!」

彼は私に怒鳴り散らし、その飛沫が私の顔にかかった。

彼の掌に刺さったガラスの破片が痛々しい。

けれど、私の心はとっくに麻痺していた。

私は泣き顔よりも無様な笑みを無理やり浮かべた。

「藤原社長……靴、綺麗になりました」踏みつけられて血まみれになった手を、掌を上に向けて差し出した。「チップ……いただけますか?」

海斗の瞳が激しく揺れた。

「金……どこまでも金か!

なぜ謝ることも、折れることもできないんだ!」

私は視線を落とし、込み上げる血の気を抑え込んだ。「藤原社長、1000万円を……」

すると彼は、懐から小切手帳をひったくるように取り出した。

なぐり書きされたその数字は、2000万。

彼は小切手を破り取ると、私の顔に思い切り叩きつけた。

「くれてやる!持ってけ!」

小切手の端が私の目尻を切り裂いた。

頬を伝った鮮血が小切手の上に滴り落ちる。

震える手で、その紙切れを掴み取った。

それは希の命そのものだ。

これがあれば、希はずっと私のそばにいてくれる。

たとえ、私の血が、海斗の血が混じり合って汚れていようとも。

私は小切手を宝物のように、大切に胸の内にしまい込み、心臓に押し当てた。

「藤原社長、ありがとうございます。ありがとうございます」

私は海斗に向かって深く頭を下げた。

それから立ち上がり、よろめきながら外へと駆け出した。

背後からは、海斗の狂ったような怒号が響いた。

「消えろ!金を持って俺の目の前から消え失せろ!二度とその面を見せるな!」

私は耳を貸さなかった。

ただ早く、一刻も早く。

希が待っている。

会場の大門を飛び出した瞬間、莉奈が私の前に立ちはだかった。

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)

第4話は公式アプリで

当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。

R86033
  1. 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
  2. アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
iPhone・iPad
で入手
Android
で入手

アプリで第4話を読む

作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。