悔やみきれぬまま、愛は焼き尽くされた第1話
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娘が危篤のとき、私は元カレの屈辱的な要求に応じた。
AV女優のように演じ、媚を売った。
羞恥心に苛まれながらも、今夜さえ乗り越えれば娘の手術費が手に入ると自分に言い聞かせていた。
行為が終わると、スマホ越しに彼の仲間たちの嘲笑が聞こえてきた。
「佐藤お嬢様のあらゆるテクニックか。AV男優にでも教わったんじゃないか?」
私は屈辱をこらえて愛想笑いを浮かべていた。だが、後ろにいる藤原海斗(ふじわら かいと)は、笑いながら吸い殻を揉み消した。
「色っぽい姿を見せなきゃ、金なんて稼げねえだろ?
でも振り込みは来月だ」
私は驚愕し、彼の足元に縋り付いた。「……終わったらすぐに払うと、そう約束したはずよ」
お金がなければ、娘は明日にも病院を追い出されてしまう。
海斗は無造作にズボンを穿くと、傍らで流れているビデオ通話を指差した。「仲間たちがまだ満足してねえんだよ。だから金はやらん。
それに、莉奈のために児童養護施設を10箇所も買い取って慈善事業を始めたばかりでな。手元の現金が心許ないんだ。お前の分は来月まで待て」
彼は、私がいつものように嫉妬して彼に詰め寄ると思っていたのだろう。
だが、今の私は、本当に疲れ果てていた。
* * *
私は床に膝をつき、死に物狂いで藤原海斗(ふじわら かいと)の足にしがみついた。「海斗、お願い……頼むわ。1000万……1000万円だけでいいの。お願いだから」
スマホの向こうでは、下卑た笑い声が続いている。
「藤原、佐藤お嬢様はさすが評判通り、クラブのトップ嬢よりいい反応だぞ」
「昔のあの傲慢さはどこへ行った?今やただのメス犬じゃないか」
「藤原様が飽きたら、俺たちにも回してくれよ」
海斗はスマホを手に取り、私の最も恥ずかしい姿をレンズに晒した。
「聞いたか?仲間たちがまだ満足してねえんだよ。だから金はやらん。
それに、莉奈のために児童養護施設を10箇所も買い取って慈善事業を始めたばかりでな。手元の現金が心許ないんだ。お前の分は来月まで待て」
心臓が激しく締め付けられた。
約束していたのに。今夜彼を満足させれば、1000万円を即座に支払うと。
私の娘、佐藤希(さとう のぞみ)はまだICUで生死の境を彷徨っている。
医者からは、今日中に入院費を入れなければ人工呼吸器を止めると宣告されている。
もし娘が逝ってしまったら、私一人が生きていくことに何の意味があるというのか。
裸を晒す羞恥心など構っていられなかった。彼に土下座して何度も額を床に打ち付けた。
「海斗、お願い。一生のお願い。先にお金をちょうだい。お願い……!」
唇を強く噛み締めすぎて、口内に鉄錆の味が広がった。
希のためなら、プライドなんてゴミ同然だ。
土下座で1000万円が手に入るなら、この頭が割れるまで叩きつけてやる。
海斗がようやく反応を見せた。
彼は冷笑しながら脚を上げ、私を蹴り飛ばした。
そしてティッシュを取り出し、悠然と靴についた私の涙の跡をゆっくりと拭き取った。
「佐藤知里(さとう ちり)、今のお前……本当に反吐が出るぜ」彼は汚れたティッシュを私の顔に投げつけた。「金のために、プライドまで捨てたのか?三年前、1億を受け取って消えた時、こんな日が来るとは思わなかったのかよ」
また、あの誤解だ。
私は口を開いたが、言葉にならなかった。
三年前、彼の母親は私に1億円の小切手を突きつけた。
貧しい家の娘が藤原家に釣り合うわけがない、と高圧的に言い放ったのだ。
小切手を投げ返してやりたかったが、彼女は面と向かって私を脅した。
「もしこれ以上しつこくつきまとうなら、明日にはあなたの両親を路上の死体にさせてやるわ」
藤原家の権力は絶大だ。彼らを敵に回せば、この世界で助けてくれる者など誰もいない。
その時、私のお腹にはすでに希がいた。
両親の命を守るため、この子を守るため、私は屈辱に耐えて小切手を受け取り、去ることを約束した。
その後、母親は追い打ちをかけるように警告した。
もし海斗に真実を話せば、この子も、両親も、跡形もなく消すと。
あの1億円は、後でそのまま返した。
だが、海斗の目には、私は金のために彼を捨てた金目当ての女に映った。
どんな言い訳も、今の私には虚しく響くだけだった。
スマホの向こうから、突然甘ったるい女の声が聞こえた。「海斗さん、そんなに佐藤さんをいじめちゃダメですよぉ」
画面の端に、浅川莉奈(あさかわ まりな)の整った顔が現れた。
「数日前、ちょっとしたサイトで『チサト』っていう名前のAV女優さんを見かけたんですけどぉ、佐藤さんにそっくりだったんです。
出演料欲しさに、どんなポーズでもしちゃうみたいで……」
莉奈はわざとらしく口元を押さえ、声を張り上げた。「あら!佐藤さん、その1000万円、もしかしてまた撮影の機材にでも充てるおつもり?プロの男優さんでも雇って、もっと売れる作品を撮るつもりじゃないですよね?本当に向上心があって尊敬しちゃいます」
「AV女優」という言葉を聞いた瞬間、海斗の顔色が曇った。
彼は力任せに私の顎を掴み上げた。
「知里……お前、どこまで腐ってやがる。
俺の金で、そんな汚らわしいもん撮るつもりか?」
説明しようとしたが、喉からは何も声が出なかった。
何を説明すればいい?
そんなことしてないって?
海斗は信じないだろう。
彼の目には、莉奈は真っ白な紙のように純粋で、私は三年前あの1億円を受け取った瞬間から汚れそのものなのだ。
海斗は上着を手に取り、背を向けた。
「金が欲しいか?ならいいぜ」彼はドアの前で立ち止まり、言い捨てた。「明日の晩、莉奈のチャリティー晩餐会がある。そこで給仕の頭数が足りないんだ。よくやれば、気分次第でチップをやるかもな」
そう言い残し、彼はドアを乱暴に閉めて去っていった。
スマホに映る、酸素マスクをつけた希の顔を見つめる。涙は枯れ果てた。
全身のポケットをくまなく探した。
出てきたのは、わずか1920円だけだった。
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