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息子の命と引き換えに、あなたは全てを失った第2話

この話は約1555字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

「友部様の権利を守ることが最優先です。救急車など待たせておけ、とのご指示です」

周りで見ていた野次馬たちも、さすがに黙っていられなくなった。

若い男たちが数人前に出て、ボディガードを指さして怒鳴りつけた。

「あんたたち、人間の血が通ってないのか!」

「人を撥ねておいて助けもせず、道まで塞ぐなんて、命をなんだと思ってるんだ!」

「みんなで強行突破しよう!子供を助けるのが先だ!」

群衆がボディガードたちに詰め寄り、激しい押し合いになった。

リーダー格の男は眼光を鋭くさせると、腰から特殊警棒を素早く抜いた。

鈍い音が響いた。

先頭にいた若者が肩を強打され、悲鳴をあげて後ずさった。

ボディガードたちは一斉に警棒を構え、横一列になってバリケードを作った。

「南里グループへの業務妨害だ。部外者は立ち去れ。

これ以上前に出る奴は、業務妨害とみなす」

人々はその圧倒的な暴力の前に怯み、次々と後ずさった。

夏子はポルシェの車体にもたれ、気怠げに塗りたてのネイルをいじっていた。

「ほんと、底辺の人間ほど正義の味方を気取りたがるわよねー。

あんたたちを怪我させたって、社長には慰謝料くらい払えるけど、あんたたちは自分の治療費を払えるの?」

夏子は私の前まで歩み寄ると、ヒールの先で地面に落ちた泥まみれのフィギュアをコツコツと小突いた。

「このおもちゃ、どう見ても安物でしょ。せいぜい数百円ってとこ?

じゃあ言いなさいよ、いくら欲しいの?

200万円?それとも300万円?」

私は震える手でフィギュアを拾い上げ、固く握りしめた。

勇人の呼吸はどんどん弱々しくなり、胸の上下もほとんどわからないほどになっていた。

私は顔を上げ、血走った目で夏子を睨み据えた。

「お金なんていらないッ!

お願いです、道をあけて!救急隊員を通してください!

子供を助けさせてくれるなら、何でもしますから!」

夏子は眉を上げ、優越感に浸った笑みを浮かべた。

「本当に、なんでも?」

私は何度も頷いた。

「いいわ」

夏子は自分のヒールを指差した。

「さっき車から降りるとき、靴に埃がついちゃったの。

跪いて、舐めてきれいにしなさい。

私の機嫌が良くなったら、情けをかけて救急車を通してあげなくもないわ」

群衆から一斉に怒声が上がった。

「この女、狂ってる!」

「鬼かよ!」

私は唇を強く噛みしめた。口の中に鉄の味が広がった。

腕の中で、息も絶え絶えの勇人を見つめた。

もう、迷いはなかった。

地面に膝をつき、夏子の前でまっすぐに跪いた。

ガツッ。

膝が勢いよくアスファルトに打ちつけられた。

辺りが一瞬にして静まり返った。

誰もが信じられないという顔で私を見ていた。

あの無表情なボディガードでさえ、わずかに眉をひそめた。

夏子は一瞬呆気に取られた後、すぐに甲高い笑い声を上げた。

「ハハハ!あらやだ、本当に跪くなんてね!

このクソガキ、あんたにとってそんなに大事な存在だったのね」

夏子はわざと足を前に突き出し、靴先が私の顎に触れそうになった。

「さあ、舐めなさい。

ちゃんときれいにね。このヒールは社長が海外で特注してくれたものなんだから、あんたみたいな貧乏人には一生買えない代物なのよ」

私は頭を下げ、埃のついた赤いヒールを見つめた。

尊厳など、この瞬間には何の価値もなかった。

勇人を救えるなら、死ねと言われても構わなかった。

目を閉じ、ゆっくりと顔を近づけた。

私の唇が靴の表面に触れる、その寸前。

夏子が突然、勢いよく足を振り上げた。

尖ったヒールの先が、私の肩を思い切り蹴り上げた。

不意を突かれた私は、後ろ向きに倒れ込み、地面に強く打ちつけられた。

「アハハハハッ!」

夏子は腹を抱えて笑いながら、スマホを構えて私を撮影し始めた。

「本当に従順な犬ね!

ねえ、みんな、これ見てよ。今日は当たり屋に絡まれちゃってさ、お金欲しさにプライドまで投げ捨てるんだから」

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