恩返しという名の裏切り第3話
この話は約1309字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
「水瀬さん、お子さんの病状はもう待てません。すぐに移植が必要です。ドナーの方と相談されてはいかがですか?」
医師の親切な勧めを聞いて、私は検査結果を持ってぼんやりと病室に戻った。
ドアを開けると、病室の笑い声が突然止まった。
修はまださくらにみかんを食べさせる動作を維持していた。私の娘は従順にさくらの腕に寄りかかり、大きな目には笑みが満ちていた。
私の夫と子供、そして私の家庭に侵入してきた破壊者が、美しい一枚の家族絵のようだった。
そして私は扉の端に立つ卑しい下僕のようだった。
月乃は私を見た瞬間、わっと泣き出した。
「ママ、怖いおばけみたい!ママ笑わない、怖い」
五歳になる前は「ママの笑顔が一番きれい」と言っていたのに。
私は彼女と争う気力もなかった。
検査結果を修の前に叩きつけ、心の疑念がついに抑えきれなくなった。
「あなた、最初からさくらが月乃と適合することを知ってたんでしょ?
説明して。私こそが月乃の母親なのに、なぜ私の骨髄が娘と全く適合しないの?」
修は狂人を見るような目で私を見た。
「月乃と適合する人がいるのはいいことだろ?お前は月乃が助からなければ満足なのか?」
ほら、彼は全てを私のせいにするのが一番得意だ。
私は冷笑した。
「いいこと?そう、じゃあ聞くけど、移植手術の費用はどこから出すの?月乃のこの数日の入院費、全部私が借りたお金よ」
修の眉がすぐにしかめられた。
「美鈴、どういうつもりだ?さくらはもう骨髄提供に同意してくれた。まさか彼女に医療費まで出させる気か?
月乃は本当にお前の子供なのか?さくらにさえリスクを負う覚悟があるのに、お前は医療費すら出したくないのか?」
私は信じられない想いで彼を見た。
「私が出したくない?修、家のお金は全部あなたがさくらに渡したのよ!彼女に金を出せと言ってるんじゃない、返せと言ってるの!
明らかに私が不当な扱いを受けてるのに、あなたの口から出ると、まるで私が彼女に当たってるみたいじゃない!?あなたには良心がないの!?」
周囲の人々が全員、ひそひそと私を非難していた。
私は彼らに怒鳴りたかった。全貌も知らないくせに。だが一言も言えなかった。あれだけ多くの言葉、そして目の前の修。私の声が喉から出ても、誰も聞いてくれないだろう。
私が悲しみで震えているのを見ても、修の表情には苛立ちしかなかった。
「お前が月乃を怖がらせて入院させたのに、まだ何をするつもりだ」
月乃が声を上げて泣いた。
「ママいらない!ママ悪い!さくらママがいい、悪いママいらない!」
私の心は血を流していた。月乃を抱きしめたかった。聞きたかった。
この五年間、毎日私が世話をしてきたのに、娘の治療費のために他人の求婚を受け入れたのに、なぜ私が悪いママになったのかと。
だが一歩前に出ただけで、修が私を激しく押し返した。声は冷たかった。
「お前がこんな調子なら、月乃にお前みたいな母親は必要ない」
彼の強い力で押され、私はよろめいて廊下に激しく倒れた。
額が金属製の椅子の角にぶつかり、目の前が真っ赤になった。
病室のドアが私の目の前で、修によって閉められた。
すぐに、中から笑い声が聞こえてきた。
私は廊下に横たわり、全身が氷のように冷たかった。
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