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恋の勝負、夜明けまで待てない第2話

この話は約1785字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

「杏梨、最後のチャンスをやる。今負けを認めるなら、まだ間に合うぞ」

私は何も言わなかった。

しかし旭は、私が折れると確信しているかのように、こう付け足した。

「女の子が夜一人で帰るのは危ないだろ。負けを認めろよ、送ってってやるから」

私は思わず声を上げて笑ってしまった。

夜道が危ないことくらい、旭も分かっていたのだ。

私が夜の道端に一人で立っているのを怖がることも、彼は知っていたのだ。

それなのに旭は、それらすべてを私に負けを認めさせるためのカードとして使ってくる。

これまでの数年間、私たちはいつもこうだった。

一番を争い、勝敗を争い、どちらがより相手を愛しているかを争ってきた。

喧嘩をするたびに、旭は決まって「新しい彼女」とやらを作った。

私が慌てふためき、涙を流し、頭を下げたところで、旭はこう言うのだ。

「杏梨、またお前の負けだな」

けれど、恋愛は戦争ではない。勝敗などつくはずもなく、ただお互いを傷だらけにするだけだ。

私はもう、本当に疲れた。張り合う気力すら残っていないほどに。

だから私はスマートフォンを握りしめ、静かに言った。

「旭、私たち別れよう」

電話の向こうは長い間静まり返り、通話が切れたのではないかと思ったその時――

鼻で笑うような冷たい声が聞こえてきた。

「いいぜ、別れよう。杏梨、今回は後で泣いてすがってきても、もう元には戻れないからな」

その言葉を聞いた瞬間、冷水を頭から浴びせられたような感覚に襲われた。

まるで底知れない氷の底へ突き落とされたかのようだった。

旭が言っているのは、前回のあの時のことだ。

あの時、私が負けを認めなかったから、旭の方から別れを切り出してきた。

私はパニックになり、泣きながら長い間旭にすがりついた。

それは私が最も惨めな思いをした瞬間であり、旭が最も得意気だった瞬間でもあった。

けれど今回は違う。

今回は、私から切り出したのだ。

私は本気だった。

私は目を閉じ、消え入るような声で言った。

「安心して、もう二度とないから」

そう言い残し、私はそのまま通話を切った。

タクシーを拾って寮に戻った頃には、もう夜の十時近くになっていた。

エントランスに入ると、梓はその腕に真っ赤なバラの大きな花束を抱えていた。

誰からの贈り物かなど、推測するまでもない。

同じ階の寮友たちが梓を取り囲み、羨ましそうな声を上げている。

「旭さん、行動早すぎない?告白してすぐに花束なんて、こんなの反則でしょ。

梓、あんた幸せ者すぎ!」

私が帰ってきたのを見て、梓の顔に浮かんでいた笑顔がふっとこわばった。

「杏梨、おかえりなさい」

彼女は立ち上がり、無意識に花束を横に置いた。

「誤解しないで、これはね……」

私はバッグを下ろし、彼女の言葉を遮った。

「説明はいらない。私と旭はもう別れたから。あなたたちのことは、私には関係ないわ」

梓はすっと顔を青ざめさせた。

彼女は何か言おうと口を開きかけたが、最後にはただ小さな声でこう言った。

「まだご飯食べてないよね?メロンパン、買ってきてあるの。低血糖なんだから、空腹はダメだよ」

彼女はくるりと背を向け、メロンパンを取りに行こうとした。

「お腹空いてない」

私はそれを受け取ることなく、ただ自分の部屋に戻り、ドアを閉めた。

ドアはすべての視線を遮ってくれるが、音まで遮ることはできなかった。

しばらくすると、談話室では寮友たちが再び梓の周りに集まっていた。

声のトーンは落とされていたが、それでも私の耳にはっきりと入り込んできた。

「あんたと旭さん、いつから付き合ってたの?あんなにプライドの高い人が、まさか公開告白するなんてね。学内掲示板でも、その話題で持ちきりだよ」

私はスマートフォンを握る手をピタリと止めた。

画面は明るく光っている。

学内掲示板のトップには、旭の告白動画が掲載されていた。

動画の中で、旭は寮の前に立ち、手にバラの花束を持っていた。

梓は白いワンピースを着て、目を赤くしながらその花を受け取っている。

周囲は冷やかす声で溢れかえっていた。

誰かが叫ぶ。

「キスしろよ!」

旭は俯いてふっと笑った。

その笑顔を、私は何度も見たことがある。

ただ以前は、それは私に向けられたものだった。

けれど私たちは三年付き合ってきて、一度も交際を公にしたことはなかった。

恋愛は二人の問題であり、他人に見せびらかす必要はないと旭は言っていた。

俺たちにそんな見栄は必要ない、と旭は言っていたのだ。

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