彼氏と親友に裏切られた私、すべてを捨てて自由になる第2話
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深夜、私はすべての荷物をまとめた。
もともと少し狭く感じていた部屋が、急に広くなったように思えた。
恋人だった頃、辰哉との思い出は、ひとつひとつ大切にしまっていた。
2人の肩に舞い落ちた楓の葉、彼が海辺で何気なく拾って、私に渡してくれた貝殻、一緒に買い物をした時のレシート……
昔の彼は私のことを「ゴミ収集家」だと笑って、「何でも取っておくよな」と言っていた。
私は顔をそむけ、ふんと鼻を鳴らした。
「私たちが年を取った時、こういう思い出がどれだけ大切か分かるんだから!」
今、私が宝物のように大切にしていた思い出は、すべてゴミ箱の中へ消えた。
辰哉はずっと帰ってこなかった。
私は知悠のSNSで、彼の姿を見つけた。
クリーム色のシーツの上で、彼女と辰哉は指を絡め合っていた。
投稿文には、たった一言。
【新婚初夜】
私はそのまま指を下へ滑らせた。まるで、自分には関係のない投稿を眺めているかのように。
翌日の昼、私は実家へ戻った。
自分の決意を伝えるためだった。
ドアを開けた瞬間、部屋の中に響いていた笑い声がぴたりと止まった。
母は引きつった笑みを浮かべ、慌てて私を部屋の隅へ連れて行った。
「どうして来たの?
あなたたちのことは知悠から聞いたよ。最終的に辰哉が誰を選んだとしても、あの子は私の婿だし、私たちは家族だからね」
真夏だというのに、私の心は凍りついたように冷たかった。
一瞬、本当の娘がどちらなのか分からなくなった。
母は私を食卓へ連れて行き、騒ぐなと言わんばかりの目で私を牽制した。
食卓では、辰哉がずっと知悠のために料理を取り分けていた。
彼女の前の器は、料理で小さな山のようになっていた。
知悠が口を開く。
「おばさん、辰哉は本当に私に優しくて、何でも聞いてくれるんです。婚姻届を出した時、私が聞いたんです。『辰哉、これからあなたの財産は誰に渡すの?』って。
そしたら彼、結婚前の財産も結婚後の財産も全部私に渡すって言って、すぐに財産の公正証書まで作りに連れて行ってくれましたわ」
辰哉は、無表情で座っている私を見た。
「知悠は金融を勉強しているから、お金の管理を任せるなら彼女が一番安心なんだ」
母は私の手を取り、4人でグラスを合わせた。
「あなたたちがこんなに幸せそうで、おばさんも嬉しいよ」
私は表情を曇らせ、手にしていたグラスをテーブルへ強く置いた。
「ごちそうさま」
そう言って立ち上がり、寝室へ戻った。
「暁葉、私のこと怒ってるのかな?全部私のせいなの……」
知悠の甘ったるい声が、ドア越しに聞こえてきた。
すると、母と辰哉が彼女を慰め始めた。
「あの子は昔から演技だけは上手いんだから。知悠、騙されちゃだめだよ」
「君のせいじゃない。彼女が勝手に意地を張ってるだけだ」
寝室のドアが開き、知悠が辰哉の手を引いて入ってきた。
「辰哉、子どもの頃、私と暁葉は毎日この部屋にこもっておままごとしてたんだよ。夜も家に帰らず、無理やり暁葉を抱きしめて一緒に寝たこともあったわ」
そう言って、彼女はクローゼットの上に置かれた木箱を指差した。
「中には、私たちが子どもの頃に遊んでいたおもちゃが入ってるの。
暁葉、下ろして見てもいい?」
私は冷たい声で言った。「必要ないでしょ。仲のいい姉妹のふりなんて」
辰哉はそれを聞くと、つま先立ちになって箱を下ろそうとした。
「ここには知悠の思い出も入ってるんだ。君には彼女に見せないようにする権利はない」
知悠も手を伸ばし、箱を支えた。
けれど、箱がもう少しで下りるという瞬間。
彼女はそっと手の力を緩めた。
次の瞬間、何の抵抗もできないまま、箱はまっすぐ私の頭上へ落ちてきた。
頭のてっぺんに激しい痛みが走った。
それなのに、先に泣き出したのは知悠だった。
辰哉は慌てて彼女の様子を確認した。
しばらくして、ようやく我に返った彼は、険しい顔で私を見た。
「どうして手を貸さなかったんだ?どうして避けなかった?知悠をすごく怖がらせただろ」
彼の責める言葉は、あまりにも理不尽だった。
私は額を押さえていた手をゆっくり離した。
生温かい血が、頬を伝って流れ落ちる。
辰哉は一瞬、言葉を失った。
そして、隣にいる知悠へ素早く視線を向けた後、ようやく私に少しだけ柔らかな声をかけた。
「病院へ連れて行く」
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