彼氏と親友に裏切られた私、すべてを捨てて自由になる第1話
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私・川口暁葉(かわぐち あきは)は親友が一人いる。その名は小柳知悠(こやなぎ ちはる)だ。
彼女はまるで物乞いみたいに、毎日のように私の彼氏・陸奥辰哉(むつ たつや)にいろいろとねだっていた。
「辰哉さん、私と暁葉、どっちが可愛い?」
彼は答えた。
「君のほうが可愛い」
翌日、辰哉は私の化粧品をすべて処分し、勝手にモデル事務所からのオファーまで断っていた。
「辰哉さん、あなたが結婚するために買った家に、私の名前も入れてくれる?」
彼は答えた。
「いいよ」
1週間後、新しい登記識別情報通知が届いた。
そこにこう記されていた。
【共有者陸奥辰哉、持分2分の1。共有者小柳知悠、持分2分の1】
知悠は何かを言うたびに、私が大切にしていたものを一つずつ奪っていった。
私はついに我慢の限界に達し、別れると言って騒いだ。
辰哉は根気強く私をなだめた。
「考えすぎだよ。知悠は失恋したばかりで不安なんだ。俺はただ、彼女を拒むのがどうしても忍びないだけなんだ」
そう言って、彼は婚約指輪を私の指にはめ、「愛しているのは君だけだ」と固く誓った。
私の誕生日パーティーの日、知悠はまた口を開いた。
「辰哉、私たちって今、どんな関係なの?」
彼は答えた。
「君が決めていいよ」
翌日、SNSのタイムラインに流れてきた二人の婚姻届を見た瞬間、私は完全に諦めた。
* * *
指先を震わせながら、私は辰哉と知悠の名前が並んだ婚姻届の写真を、何度も拡大しては縮小した。
無理やり現実を受け入れようと、何度も何度も自分に言い聞かせた。
そんな私を、知悠の投稿文がまた深く傷つけた。
【夫婦になりました。誰かさん、わざわざ人の家庭に入り込もうとするのは、もうやめてください】
その下には、たくさんの共通の友人からのコメントが並んでいた。
【さすが辰哉さん、恋愛と結婚は別物だよね。結婚するなら、奥さんみたいに優しくて家庭的な人を選ぶべき!】
【2人が婚姻届にサインして誓い合った時、感動して泣いちゃったよ。本当にお似合いの夫婦!】
涙が頬を伝って落ち、溶けた蝋のように熱く、痛かった。
私は自分がまるで笑いものにされたように感じた。
辰哉と4年間付き合ってきたのに、最後には余計な存在になってしまった。
私は2人のSNS投稿に「いいね」を押した。
そしてコメント欄に【結婚おめでとう】と打ち込んだ。
するとすぐに、2人から同時にビデオ通話がかかってきた。
私は出なかった。
代わりに、他の人からかかってきた電話を取った。
以前、辰哉が断ったモデル事務所のマネージャーからで、もう一度、私をスカウトしたいという連絡だった。
「川口さん、もう一つ確認したいことがあります。この仕事は出張が多くなりますが、大丈夫ですか?」
私は迷わず答えた。「大丈夫です」
……
最初の頃、辰哉は私がモデルになることを心から応援してくれていた。
けれど、知悠の言葉を何度も聞かされるうちに、彼の態度は変わっていった。
「知悠が言ってたんだ。この業界は泥沼みたいなもので、一度足を踏み入れたら抜け出せないって。
それに、君は特に条件がいいわけでもないし、考えも甘いところがあるから、誰かに騙されないか心配なんだ」
知悠も私に言った。
「辰哉さんの機嫌をちゃんと取れば、何だって手に入るよ」
以前の私は、辰哉との関係を何より大切にしていた。
たとえ彼が差し出したものが、棘だらけの蔓だったとしても、私は必死に掴み続けていた。
でも今は、自分自身が大きな木になりたい。
……
そう決めた瞬間、私はすぐに荷造りを始めた。
クローゼットの半分は、もう空になっていた。
冬服はとっくに辰哉がまとめて、結婚するために買った新居へ運んでいた。
「今年の初雪が降る前には、必ず君を家に迎えるから」
そう言って、早めに準備しておくと話していた。
スマホの画面には、辰哉の名前が何度も表示されていた。
私は深く息を吸い、もう逃げないと決めて電話に出た。
「もう騒ぐのはやめろ。早くコメントを消してくれ。俺が彼女と婚姻届を出したことで、君が傷ついているのは分かってる。でも、みんなの前で彼女に嫌味を言う必要はないだろ」
辰哉の言葉は、最初から最後まで知悠の味方だった。
4年間一緒にいた私が、今どれほど惨めな思いをしているのかなんて、まるで気にしていない。
私は静かに言った。
「心から祝福してるよ」
彼はしばらく黙った後、深いため息をついた。
「俺が彼女と婚姻届を出したのは、ただの冗談みたいなものだ。彼女に俺たちの関係を決めさせるって約束したから。
ただの紙切れだ。何の意味もない。2、3日経って知悠の気が済んだら、離婚届を出せばいいだけだ」
「結婚っていう大事なことを、冗談で済ませるの?陸奥辰哉、あなたは今まで一度でも私を尊重したことがあるの?」
言葉にした瞬間、自分の声が震えていることに気づいた。
喉の奥が熱いもので塞がれたようで、息をするのも苦しかった。
「もう私を探さないで。あなたが彼女と婚姻届を出したその瞬間から、私たちは終わったの」
私は電話を切った。
そして、思い出が詰まった部屋を、長い間ぼんやりと見つめていた。
新居へ荷物を取りに向かう途中、辰哉からメッセージが届いた。
【怒りに任せてそんなこと言うなよ。プレゼントを選んだ。夜、家に帰ったら渡す】
私は返信せず、彼からのメッセージを通知オフにした。
新居のドアを開けた瞬間、私は言葉を失った。
目の前の光景を見て、ここが本当に自分の知っている場所なのか分からなくなった。
私が時間をかけて選んだ家具、辰哉と一緒に飾ったフォトウォール、2人で旅行先から持ち帰った冷蔵庫マグネットまで、すべて消えていた。
部屋の内装は、知悠が好きなクリーム色を基調としたものに変わっていた。
主寝室には、いつの間にか大きなツーショット写真が飾られていた。
辰哉は知悠の腰を抱き、2人は眩しいほど幸せそうに笑っていた。
私は苦笑した。
辰哉が変えたのは、不動産登記の名義だけじゃない。私たちが約束していた未来まで、全部変えてしまったんだ。
家を出る時、私は新居の鍵と婚約指輪をテーブルの上に置いた。
そして、辰哉に関わるすべてと、完全に別れを告げた。
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