彼からの復讐に耐えた5年目、私は死んだ第2話
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次に目を開けたとき。
私は、自分が透き通った魂になっていることに気づいた。雅斗のそばに留まっている。
思わず自嘲の笑みが漏れた。
――死んでも、雅斗からは逃れられないの?
その頃、雅斗は3階の部屋にいる。そこには琴美の似顔絵や写真が所狭しと並べられている。
雅斗が毎日のように足を運ぶ場所だ。
琴美をあまりにも恋しく思うから、彼女を思い出すたび、ここでその姿を絵に描いている。
高校時代、雅斗は絵を描くのが何より好きだった。人物でも風景でも、描けばどれも見事な出来栄えだった。
北村家は、息子がそんな実りのない道楽にふけることを許さなかった。
その後、琴美が死んでから、雅斗は彼女の似顔絵を描くこと以外、二度と筆を取ることはなかった。
この5年間、私も何度となくこの部屋で琴美に詫びてきた。
雅斗は、琴美を死なせた私を恨み、憎んでいる。
本当は、琴美は死ななくてもよかった。私が甘えて、代わりにクルーザーの上まで荷物を取りに行ってと頼まなければ、爆発に巻き込まれて死ぬこともなかった。
5年もの間、あの光景を思い出すたび、私は夜も眠れなかった。
雅斗は言った。すべて、私のせいだと。
そうだ。私が悪いのは紛れもない事実だ。
そして雅斗は、琴美を思い出すたび、そのやり場のない感情をすべて私にぶつけた。
琴美の遺影の前で土下座させ、何度も頭を床に打ちつけさせた。
琴美の両親の家へ行って謝らせ、ひとり娘を失った二人の怒りを受け止めさせた。
何度も何度も、同じ言葉を口にさせた。「琴美、ごめんなさい」と。
「全部唯月のせいだ!」
この言葉を、私は5年間、ずっと聞き続けてきた。
それを思い出して、突然笑った。
ひどく寂しい笑いだ。
今、私は死んだ。
だからこそ、琴美に許してもらいたい。雅斗に、もうあんな冷たい目で私を見てほしくない。
けれど、そんな願いもきっと、叶うことはないのだろう。
翌朝早く、雅斗が起きた。
秘書の斉藤健一(さいとう けんいち)が、恭しく朝食を取るよう促した。
身支度を整えた雅斗は、そっけなく言った。
「唯月は病院にいる。何か体にいいものを持って、お見舞いに行ってやれ」
健一がうなずいた。
すると、そばにいる理名が健一を呼び止め、自分から申し出た。
「私が唯月さんのお見舞いに行くわ。最近はもう気持ちを入れ替えたみたいで、自分がしたことが間違ってたってわかってるみたいよ。ずっと騒ぎも起こしてないから」
「外にも出てないのか?」
雅斗が眉を寄せて尋ねた。
「はい。唯月さんはずっと静かにしています」
健一が答えた。
「社長、私が病院へ様子を見に行きましょうか?」
理名は、フルーツシェイクを飲む手を止め、柔らかな声で言った。
「大丈夫よ、雅斗。私が唯月さんを慰めてあげる。女同士だもの。それに、雅斗もこれだけたくさん物を送って機嫌を取ってあげたんでしょう?それでも駄目なら、もう唯月さんがわがままなんじゃない?」
雅斗は冷たい顔のまま、うなずいた。
私は宙に浮かびながら、その光景を皮肉な笑みで見下ろした。
琴美にどこか面影の似た理名が現れてから、雅斗は彼女を家へ連れ込むようになった。
そして、私を最も残酷なやり方で辱めるようになった。
私は、理名が琴美に似た顔で雅斗に甘えるのが嫌だった。
雅斗が琴美への罪悪感を抱えていることにつけ込み、自分の望みを叶えようとするのも嫌だった。
私が罪を背負っているのは琴美に対してであって、理名に対してではない。
だから理名が何かを求めてくるたび、私は拒んだ。
たとえば、雅斗との離婚を迫られたとき。
雅斗からもらった最初の贈り物をよこせと言われたとき。
そして、琴美が私のために神社で授かってくれたお守りを渡せと言われたとき。
けれど最後には、雅斗がいつも理名のために、それらを私から取り上げた。
きっと彼の目には、理名が琴美そのものに映っているのだろう。
この数年、私の体はどんどん弱っていった。
雅斗が健一に私のもとへ届けさせたものも、結局はすべて理名のところへ渡っていった。
食卓につき、何事もなかったかのように過ごす雅斗を、私はただぼんやりと見つめている。
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