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彼からの復讐に耐えた5年目、私は死んだ第3話

この話は約1972字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

その瞬間、私はふと、いろいろなことを思い出した。

あの頃の、私と雅斗と琴美の思い出。

実はずっと、雅斗が想っていた相手は琴美だった。

誰の目にも明らかだった。

雅斗はいつも私に琴美の好きなものを聞いてきたし、琴美への贈り物を選ぶために私を連れ回した。琴美と遊びに行くためなら、わざと先に私と約束することさえあった。

ときどき、私は雅斗を恨んだ。

幼なじみなのは私のほうで、彼と知り合ったのも私のほうが先だった。

なのに高校2年のとき、転校してきた琴美を目にしてから、雅斗の視線は二度と私に向かなくなった。

正直に言えば、琴美を恨まずにいるなんて無理だった。

でも、琴美はあまりにも優しい人だった。誰に対しても柔らかく接し、いつだって人当たりがよかった。そんな彼女を嫌う理由なんて、私にはなかった。

だから私は、雅斗が琴美を想う気持ちを受け入れ、二人の仲を後押しする側に回ることも受け入れた。

ただ、諦めることも、二人を結びつけることも、思っていた以上に難しかった。

一度、琴美と遊びに出かけたとき、私はうっかり川に落ちたことがある。

琴美は泳げたけれど、私は泳げなかった。

ところが、それに気づいた雅斗は迷うことなく水の中へ飛び込み、一直線に琴美のほうへ泳いでいった。

水の中から、私は二人がどんどん遠ざかっていくのを見ていた。

あのとき、自分が死ぬのだと思った。

幸い、最後は通りかかった人に助けてもらった。

そのとき雅斗は罪悪感から、1週間ずっと私の面倒を見てくれた。

琴美も彼をこっぴどく叱った。

私は何を言えばいいのかわからなかったけれど、それでも雅斗の謝罪を受け入れた。

これだけ長く一緒にいたのだから、私が泳げないことくらい、雅斗だって知っていたはずだ。

ただ、雅斗にとっていちばん大切な人は琴美であって、私ではなかった。

私は脇役として、自分の立場をわきまえるべきだったのだ。

その後、私は琴美と親友になり、彼女と雅斗がどんどん近づいていくのを見ていた。

二人がお互いに想い合っていることはわかっていたから、私はそのことをわざわざ両親に話した。

何しろ、私の両親も雅斗の両親も、ずっと私と雅斗を結婚させたがっていたから。

でも、幸いにも、その話はまだ決まったわけではなかった。

だから、私は琴美を困らせるつもりもなかった。

けれど何年も経って、ようやく、世の中には思いもよらないことが起きるのだと知った。

琴美は死んだ。

私は雅斗と結婚し、5年にわたってこの悪縁に縛られ続け、最後には命まで失った。

胸の奥にほんの少し残った悔いのせいか、急に知りたくなった。雅斗は私の遺体を見たとき、どんな顔をするのだろう。

きっと、何の反応も示さないだけなのだろう。

深夜。北村家の屋敷。

雅斗は書斎で仕事を片づけている。

琴美を失って以来、彼は逃げるように仕事に没頭するようになった。そして、そのおかげで事業も目覚ましい勢いで発展した。

だからこそ、私の実家である槙沢家の事業をいとも簡単にのみ込むことができたのだ。

仕事を終えた雅斗は、こめかみを軽く押さえながら立ち上がり、窓際へ歩いていった。

外には、無数の明かりが灯っている。雅斗はそれを長いこと眺めている。

やがて、そばの机からタバコを一本取り出して火をつけ、陰鬱な目をして煙を吐いた。

これだけ長く知り合ってきたのだから、私は雅斗のことを誰よりよくわかっているつもりだ。

そんな様子を見れば、今の彼の気分がよくないことくらい、私にはすぐわかった。

ただ、どうして機嫌が悪いのか、それだけがわからない。

そのとき、書斎の扉がノックされた。

「北村社長」

「入れ」

使用人がカップをひとつ持って入ってきた。

「手作りのプレーンヨーグルトです。少し召し上がりませんか?」

「ヨーグルト?唯月の差し金か。言ってみろ、あの女はまた俺に何を企んでる?」

雅斗が皮肉っぽく問いかけた。

「えっと……違います」

使用人は唇をきゅっと結んだ。

「奥様がわざわざ種菌の選び方を教えてくださったんです。毎日作って社長に差し上げてほしいと。体に良いのです。

ただ、お電話をいただいたとき、奥様は少し気分がすぐれないようでした」

雅斗の目がわずかに動いた。

「出ていけ。

また唯月が何か芝居でもしてるんだろう。お前、まだここで働きたいなら、あの女を奥様なんて呼ぶな」

使用人の顔がさっと青ざめ、慌てて言い直した。

「唯月さんが……」

「持っていけ。二度と言わせるな」

雅斗が冷たく言い放った。

使用人は慌ててカップを抱え、その場を離れていった。

書斎には、また雅斗ひとりだけが残った。

どこか苛立った様子で椅子に腰を下ろすと、スマホを取り出し、私にメッセージを送った。

【唯月、こんな手で俺を操れると思うな。お前の思い通りになんて絶対にさせない。一生、楽になんかさせない】

送信は成功した。

けれど、以前のようにすぐ既読がつくことはなかった。

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