学部一の美女に「たかり女」疑惑をバラされた?第3話
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3日目は金曜日だった。
学校では毎週金曜の昼、広場で『学生の声』という催しが開かれる。誰でも壇上に立って発言できるイベントだ。
私はこの機会を借りて、真相をはっきりさせるつもりでいた。
ところが朝、教室に着くと、席に一通の封筒が置かれていた。
学部の公印が押された、正式な通知書だった。
【桜井望さんの今学期表彰資格取り消しに関する通知】
【理由:重大な品行上の疑義があり、学生自治会からの申し立てにより、一切の表彰資格を停止する】
発行日は昨日付だった。
美月の仕事の速さは、出前よりも速いようだ。
申し立てから処分まで、24時間もかかっていない。
私は通知書を持って担当教員の恵子のところへ向かった。
恵子は朝ごはんを食べている最中だった。
「桜井さん、今回の件ですが……注目を集めすぎているようですね。
学校側としましても、これ以上世論の的になるのを抑えるためなんです。
九条くんが戻って詳細がはっきりすれば、表彰資格の回復に向けて検討の余地もあります……まずは、事態が沈静化するのを待ちましょう」
「彼が戻るのは明日なのに、私は今日という日のうちに処分されているんです」
「手続き上は問題ありません」
「手続き上?それならお聞きしますが、学生自治会に個人の銀行カードを差し押さえる権限があるんですか?」
「それは……まず学生自治会と話し合ってください」
世論の前では、「手続き」なんて声の大きい者にとっての都合のいい形に、粘土のように形を変えられるものだ。
昼休みになり、私は広場に向かい発言の申し込みに行った。
だが美月が先回りして、「学生の声」の申込用紙に細工をしており、私の名前は線が引かれて消されていた。
それだけではなく、私の名前の横にはこう書き添えてあった。
【当該学生は現在品行上の疑義があり、公の場での発言は不適切】
私は広場の端に立って、壇上で演説する美月を見ていた。
「私たちは、不当な付きまといには勇気を持ってノーと言うべきです。
誰にでも、不当な嫌がらせを拒否する権利があります」
客席から盛大な拍手が起こった。
誰かがこちらに目をやり、ひそひそと囁き合った。
美月が私に気づいた。
マイクに向かって、微かに笑ってみせる。
「もちろん、過ちを犯した学生にも、改める機会は与えるべきだと思います。
誰かさんには、自分の行いを本当の意味で反省していただきたいですね」
その視線が、まっすぐ私に落ちた。
その視線を追うように、周囲にいた人々の目が一斉にこちらへ向けられる。
私は日差しの下に立っていたのに、まるで裁きの壇上にいるようだった。
夕奈が私の袖を引いて、その場から連れ出そうとした。
「ここにいちゃだめ、わざとやってるんだから」
私はその手を振りほどいた。
「ね、写真、撮って」
「何の?」
「広場の申込用紙。私の名前が消されてるやつ」
夕奈は写真を撮って送ってくれた。
私はその写真を保存してから、教務課にも足を運んだ。
教務課の職員によれば、表彰資格の取り消しには教授会での審議が必要だという。
だが昨日、教授会は開かれていなかった。
つまり、あの通知書の手続きは不備があるということだ。
だが職員はこう付け加えた。
「学部側は、来週月曜に追加で会議を開いて、正式に決定するそうです」
「会議は月曜なのに、通知書はもう昨日届いているんですか?」
「先に通知して、手続きは後から整えるんです。特殊な事情ですから」
特殊な事情。
訳せばこうだ。先に処分しておいて、手続きは後からでっち上げる。
教務課を出ると、また茉莉が現れた。
印刷済みの謝罪文を差し出してくる。
「美月先輩が、今日中に掲示板に上げれば、表彰資格の処分を撤回してくれるって」
私は受け取って、目を通した。
全文800字。要となる段落はこうだ。
【私は長期にわたり、不適切な方法で九条蒼真先輩につきまとい、彼の学業と生活に重大な支障をきたしたことを認めます。
自分の過ちを深く反省しております】
私はその紙を折りたたんで、ポケットにしまった。
茉莉がほっと息をついた。
「じゃあ、今夜あげるの?」
「あげない」
「じゃあ何のために持ってるの?」
「記念に取っておくだけ」
「これ、美月先輩が徹夜で人に書かせたものなのに……」
「文章はうまいね」
私は少し間を置いた。
「でも、やってもいないことは、一字だって認めるつもりはない」
茉莉の顔色が変わり、スマホを取り出してメッセージを送った。
10秒後、美月から届いた返信の内容は私にもはっきりと見えた。
【それなら仕方ないね。明日九条先輩が戻ったら、彼女のことなんて知らないって、本人の口から全校学生の前で言ってもらうから】
私はその文字列を数秒間見つめた。
知らない?
明日、もし蒼真が本当にそんなことを言ったら、おばあちゃんに電話をかけてやるんだから。
蒼真が社会的に終わるのが先か、それともおばあちゃんのスリッパが先に飛んでくるのが先か、見ものなものだ。
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