和紙文子どもを蒸し殺した夫、地獄の後悔 · 第2話設定≡

子どもを蒸し殺した夫、地獄の後悔第2話

この話は約1269字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

靴は見違えるほどきれいになり、ぴかぴかのつま先には、無様な私の顔がはっきり映っていた。

拭き終えた私は、迅のズボンの裾をつかんだ。

「これで……もう開けてくれるの?」

私は顔を上げ、最後の命綱にすがるような思いで、卑屈なほど必死に彼を見上げた。

迅は、私を容赦なく蹴り飛ばした。

頭が壁にぶつかり、耳の奥でガンガンと音が鳴った。

充希が口元を覆い、くすりと笑った。

「雪乃さん、どうやらまだ自分の間違いがわかってないみたいね」

その一蹴りで、私の中に残っていた最後の希望は、完全に砕け散った。

私は床から立ち上がると、脇の物置へ駆け込んだ。ハンマーでもバールでもいい、とにかく何か探そうとした。

どうしてもドアをぶち破らなければならなかった。

けれど、迅のほうが早かった。彼は私の髪を乱暴につかむと、そのまま壁に強く押しつけた。

私は身動きが取れなかった。

「いい加減にしろ、まだ気が済まないのか!」

彼の腕にがっちり押さえ込まれ、振りほどくことすらできなかった。

充希はゆっくりと私の前まで歩いてきて、耳元に顔を寄せた。

そして、私たち二人にしか聞こえないほどの小さな声で、そっと言った。

「私はね、あんたの子どもに死んでほしいの」

私は全身を激しく震わせた。

「そうすれば、私の息子が堂々と牧野家のすべてを継げるもの」

頭を殴られたような衝撃が走った。

「やっぱりあなたが……充希!」

私は狂ったようにもがき、迅に向かって叫んだ。

「この人よ!この人が私たちの子どもを殺そうとしてるの!迅、目を覚まして!」

迅の顔に浮かぶ嫌悪は、さらに深くなった。

彼は怒鳴った。

「これ以上、充希を悪く言ってみろ。お前もあの中に叩き込むぞ」

彼が私を信じてくれないことが、何よりも私を苦しめた。

そのとき、ドン、と鈍い音がした。

サウナ室の中で、何か重いものが倒れた音だった。

息子のせき込みが、止まった。

娘のか細い泣き声も、消えた。

サウナ室の中は、死んだような静寂に包まれた。

その瞬間、私の心は凍りついた。

「いや……いや……」

私はうわごとのようにつぶやき、全身から力が抜け落ちていった。

充希は、絶望に沈む私の様子を見て、急に親切そうに口を開いた。

「雪乃さん、うちの息子、白血病なの。今すぐ骨髄移植が必要で」

彼女は哀れむような顔をして、まるで自分が救い主であるかのように振る舞った。

「この同意書にサインして、私の息子に骨髄を提供するって認めてくれたら、迅に頼んでドアを開けてもらうわ」

そう言って、彼女は書類とペンを差し出した。

「でなきゃ、あの子たち、本当にもうもたないかもしれないわよ」

それこそが、彼女の本当の狙いだった。

私の子どもたちの命と引き換えに、自分の息子の命を救おうとしているのだ。

そのとき、ドアの向こうから、娘の最後のかすかな呼び声が聞こえた。

「ママ……くるしいよ……」

その瞬間、私の中で何かが完全に切れた。

あの子たちを失うわけにはいかなかった。

私はその同意書をひったくるように奪い取り、内容も見ないまま、最後に自分の名前を殴り書きするように署名した。

手の震えがひどくて、署名はひどく歪んでいた。

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)