子どもを蒸し殺した夫、地獄の後悔第1話
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誕生日パーティーで、息子と娘がうっかりスープをぶちまけ、白河充希(しらかわ みづき)にやけどを負わせてしまった。
夫の牧野迅(まきの じん)は、かすり傷ひとつない充希の手を引きながら、二人の子どもを激しく叱りつけた。
それでも怒りは収まらず、二人をサウナ室に閉じ込めた。
私、有栖川雪乃(ありすがわ ゆきの)は迅に電話をかけ、どうか子どもたちを許してほしいと必死に頼んだ。
けれど彼の声は冷えきっていた。
「もう俺に構うな!全部、お前が子どもを甘やかして駄目にしたせいだ。
人にやけどを負わせたんだぞ。ここで頭を冷やさせて、ちゃんと反省させておけ!」
温度計の数字は上がり続け、子どもたちの体にはすでに火傷の水ぶくれができ、二人は泣き叫び続けていた。
私は気が狂いそうになりながら、どうか許してほしいと懇願した。
「まだ小さくて何もわからないの、お願いだから出してあげて、このままじゃ死んでしまう……」
「もういい!お前が子どもを甘やかしすぎるから、こんなに好き勝手するようになったんだ!
それに、お前も、取り乱して騒ぐな。この程度の温度で死ぬわけがない!」
* * *
誕生日パーティーで、息子と娘がうっかりスープをぶちまけ、白河充希(しらかわ みづき)にやけどを負わせてしまった。
夫の牧野迅(まきの じん)は、かすり傷ひとつない充希の手を引きながら、二人の子どもを激しく叱りつけた。
それでも怒りは収まらず、二人をサウナ室に閉じ込めた。
私、有栖川雪乃(ありすがわ ゆきの)は迅に電話をかけ、どうか子どもたちを許してほしいと必死に頼んだ。
けれど彼の声は冷えきっていた。
「もう俺に構うな!全部、お前が子どもを甘やかして駄目にしたせいだ。
人にやけどを負わせたんだぞ。ここで頭を冷やさせて、ちゃんと反省させておけ!」
温度計の数字は上がり続け、子どもたちの体にはすでに火傷の水ぶくれができ、二人は泣き叫び続けていた。
私は気が狂いそうになりながら、どうか許してほしいと懇願した。
「まだ小さくて何もわからないの、お願いだから出してあげて、このままじゃ死んでしまう……」
「もういい!お前が子どもを甘やかしすぎるから、こんなに好き勝手するようになったんだ!
それに、お前も、取り乱して騒ぐな。この程度の温度で死ぬわけがない!」
電話は彼に切られた。
ドアの向こうでは、二人の子どもの泣き声がどんどん大きくなり、せき込む声まで混じっていた。
「あああっ!ママ、開けて!」
「熱いよ、ママ、もうしないから!」
私は気が狂ったようにサウナ室のドアを叩き続けた。
「大丈夫よ、怖がらないで!ママがここにいるから!」
このドアは特注品で、鍵も頑丈だった。どれだけ叩いても、びくともしなかった。
壁の温度計は赤い危険域を示し、けたたましい警報音が何度も何度も鳴り響いて、そのたびに私の心臓を打ちつけた。
私はもう一度、迅に電話をかけた。
「あなた、いったい何がしたいの?」と、私は涙で震える声で言った。
「充希が足をやけどした。俺が何をしたいか、わからないのか?」
「謝るわ、子どもたちのぶんまで私が謝る。だからお願い、先に戻ってきて。お願いだから、先に子どもたちを出して」
受話器の向こうで彼が鼻で笑い、次の瞬間、無機質な切断音だけが耳に残った。
私はドアの前にへたり込み、どうしようもない無力感に飲み込まれた。
子どもたちの泣き叫ぶ声はひとつひとつが刃のようで、私の体に突き刺さってきた。
どれほど時間がたったのかわからないころ、玄関のほうから鍵の回る音がした。
迅が戻ってきたのだと思い、私はもがくように立ち上がった。顔に、かすかな希望が浮かびかけた。
ドアが開き、迅が入ってきた。その隣には、もう一人いた。
充希だった。
彼女は迅の腕の中に寄り添い、いかにも心配そうな顔をしていた。
「迅、ちょっとやりすぎじゃない?まだ小さい子たちなのに」
迅は彼女を支えたまま、私には一瞥もくれなかった。
「こんな悪魔みたいなガキどもに情けをかけたら、お前がつらい思いをするだけだ」
そう言って私を見たその目は、凍るように冷たかった。
「いつまでそんなところに跪いてる?可哀想な女のふりでもしてるつもりか」
私は彼を見つめた。こんなにも長いあいだ愛してきた男なのに、今はもう、見知らぬ他人にしか思えなかった。
充希が小さく「っ……」と息をのんで、今にも泣き出しそうな顔をした。
彼女は足を持ち上げ、足首にある、スープが跳ねてついた小さな赤いあとを示した。
「雪乃さん、あなたがわざとじゃなかったことも、子どもたちがそうじゃなかったこともわかってる。でも、きちんとしつけないとだめよ。このままじゃ、先が思いやられるもの」
迅の目の冷たさはいっそう深くなった。
彼は、信じたのだ。
そして私に命じた。
「今すぐ、ひざまずいたまま充希の靴をきれいに拭け」
私は言葉を失った。
「充希が満足したら、そのあとで出すかどうか考えてやる」
サウナ室の中では、息子のせき込みがどんどん激しくなっていった。
「ゴホッ、ゴホッ……ママ、息ができないよ……」
娘の泣き声も次第に弱まり、今にも消えそうなうめき声に変わっていった。
胸が焼けつくような焦りに駆られた。
そういえば、迅が生まれたばかりのあの子たちを初めて抱き上げたとき、どれほど大事そうにしていたことか。
彼は誓ってくれた。私たちの子どもを宝物みたいに大切にして、この世でいちばん幸せな子にすると。
その誓いは今も耳の奥に残っているのに、目の前の男は悪鬼のように冷酷だった。
充希はハイヒールを履いた足を、私のほうへ突き出してきた。
つま先には、ほんの少し埃がついていた。
「雪乃さん、早くして。子どもたち、まだ待ってるんだから」
声は大きくなかった。それなのに、挑発に満ちていた。
私は迅を見た。彼は冷えきった目で私を見下ろし、私が屈するのを待っていた。
子どもたちのために。
私は目を閉じ、煮えくり返るような憎しみを胸の奥深くに押し込めた。
私は床にひざまずいたまま、這うようにして充希の前まで進んだ。
そして袖を持ち上げ、少しずつ、少しずつ、彼女の靴を拭いた。
屈辱の涙と汗が混じり合って口の中に流れ込み、ただ苦かった。
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