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婚約指輪がプルタブ?大富豪の令嬢ですが第3話

この話は約1737字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

玄関には、数足の靴が無造作に散乱している。

外国から空輸した高級ソファの上には、クレーンゲームで取ったような安っぽいぬいぐるみが山積みにされていた。

本来ならウェディング写真が飾られるはずの壁には、ダーツの的が掛けられ、私の顔を覆い隠している。

引きつる口元で笑おうとしたけれど、皮肉な笑みさえ浮かべることができなかった。

これが、彼の言う「サプライズ」というわけだ。

その時、玄関のドアが開いた。

悠真が莉子を支えながら帰ってきたのだ。

ソファに座る私を見て、二人はその場に立ち尽くした。

悠真は早足で近寄り、弁解を始めた。

「翠、莉子が大家さんに追い出されてしまって。一時的にここに住まわせているんだ。

話そうとは思っていたんだが、急なことで言えなかった。どうせ誰も住んでいない家だし、人の気配があった方がいいだろうと思って……」

私は手を上げて彼の言葉を遮った。

「今すぐ荷物をまとめて出て行かせて」

悠真は明らかにたじろいだ。いつもなら寛容な私が、あんなにきっぱり言うなんて思わなかったらしい。

「怒ってるのか?さっき市役所に一人残していったからか?」

彼は自分が悪いことをしたという自覚はあったんだ。

そして、私は深く息を吸い込み、念を押すように言った。

「この家は売るから。二人とも、出ていって」

悠真の顔色が一変した。

「指輪一つのために、新居まで売るって言うのか!」

彼は自分が少し感情的になりすぎたことに気づき、すぐに語調を緩めた。

「他人が嵌めた指輪が嫌なら、今すぐもっといいやつを買い直すから。な、いい子だから、もう怒らないでくれ」

「出て行かせて」

私は三度目、同じことを言った。

バン!

悠真が突如として激昂し、ソファの上のぬいぐるみをすべて床に払い落とした。

「莉子!俺はお前を一時的に住まわせただけであって、この家をゴミ溜めにしろとは言ってないぞ!

ほら見ろ、翠を怒らせたじゃないか。さっさと出て行け!」

莉子はしゃくり上げながら身をかがめ、床のぬいぐるみを拾い集め始めた。

そして、震える声で私に謝罪した。

「翠さん、私が空気を読めなくて……ご迷惑をおかけして、本当にごめんなさい」

私は目を閉じ、いつものように「気にしないで」と軽口を叩くのをやめた。

やがて彼女が重いスーツケースを引きずり、私の足を容赦なく轢き潰して通り過ぎた。

骨の髄まで響くような激痛に、思わず涙がこぼれそうになった。

私は本能的に、立ち去ろうとする悠真を呼び止めた。

「ちょっと待って——」

「塗り薬を」という言葉を口にするよりも早く、悠真の声がそれを遮った。

「いい加減にしろ、翠。いくら何でもやりすぎだ。どんなことでも人を送り出してから話せ」

ドアが乱暴に閉められた。

その瞬間、冷水を頭から浴びせられたように、胸の奥に残っていた温もりも消えてしまった。

私はもう一切の迷いを捨て、不動産業者に連絡して売却価格を確定させた。

同時に、父・神崎宗隆(かんざき むねたか)にも連絡を入れ、悠真の会社・スターライズの株式評価を大急ぎで進めてもらうよう手配した。

スターライズは、悠真と二人で作り上げた会社だ。

ここ数年、私はずっと金と労力を捧げて、彼を海鳴市で一躍注目される若き実業家に仕立て上げた。

今になってそれを完全に清算するとなれば、相当な泥沼になることは目に見えていた。

私は息をつく暇もないほど忙しかった。

その後、部下から確認の電話がかかってくる。

「部長、今夜の新製品発表会、お忘れではありませんよね」

電話を切って初めて、スマホに悠真からの不在着信が数十件も溜まっていることに気がついた。

私は少し考え、この馬鹿げた5年間の情にピリオドを打つためにも、最後にもう一度だけ彼に会うことを決めた。

何より、今回の新製品には私のすべてを注ぎ込んだのだ。

市場調査からコア技術の突破に至るまで、一つずつ私自身の手でやり遂げた。

徹夜に酔いつぶれるまで飲み歩いた会合、デザインのやり直し、すべてこのためにやってきた。

これだけ苦労したのだ、堂々たる成果を持ち帰らなければならない。

会場に着くと、ちょうど発表会が始まったところだった。

悠真はステージ上で朗々と語り、今回の新製品の最大の功労者を紹介し始めた。

激しいドラムロールの後、スポットライトがパッと照らし出された。

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