姉からの100円、俺は死を選んだ第1話
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資産家の姉、鳴海涼音(なるみ すずね)にブロックされてから3年。
彼女はネットの医療募金で俺に100円を寄付し、さらに皮肉に満ちたメッセージを残した。
【肺がんになったの?本当に死んだら教えて、お祝いしてあげるから】
3年前、姉が支援していた苦学生の瀬戸拓海(せと たくみ)が、俺に大学の推薦枠を奪われたと訴え出た。
姉は激怒し、有無を言わさず俺、鳴海湊(なるみ みなと)の退学手続きをとった。
「たとえ学校に行かなくても、私が一生養ってあげる。でも、他人のものを奪ったことには、罰を受けてもらうわ!」
俺たちは激しく口論になり、最終的に彼女は冷酷な表情で俺を家から追い出した。
「自分の過ちを認めたら戻ってきなさい。その腐った性根、絶対に叩き直してやるから!」
その後、彼女はその苦学生をまるで本物の御曹司のように甘やかして育てた。
一方で、俺が見つけた仕事はことごとく彼女に潰され、換金できそうな不用品を拾って食いつなぐしかなかった。
彼女のメッセージを見つめながら、俺はしばらく呆然としていた。
やがて、霊園の管理業者に電話をかけた。
「一番安い区画を押さえておいてください。明日、手付金を振り込みます」
姉が寄付してくれたあの100円で、ちょうど手付金が払える額になった。
俺は、彼女の望み通りにしてやった。
* * *
「早めに決めた方がいいですよ。最近は墓地もすぐに売れてしまいますからね」
業者は電話越しにため息をついた。要するに、金が支払われない限りは何も確約できない、ということだろう。
彼の言い分も理解できる。
過去1年間、俺は霊園に何度も足を運んだが、高すぎて一つも契約できなかった。
俺の金は薬代や治療費に使い果たされ、もうほとんど残っていない。
だから、運良く安い区画が空いていないか、定期的に様子を見に行くしかなかった。
毎回、業者からどの区画にするのかと尋ねられるたび、俺は気まずさを誤魔化しながらこう答えていた。
「すみません、次は家族と一緒に見に来ます」
しかし今回ばかりは、迷いなくはっきりと口にした。
「安心してください、今回は本当に買いますから」
電話を切った後、スマホの画面はネットの募金サイトに戻った。
早期回復を祈る温かいメッセージが並ぶ中、姉の残したコメントだけが嫌でも目を引いた。
【肺がんになったの?本当に死んだら教えて、お祝いしてあげるから】
何度読み返しても、実の姉の言葉だとは未だに信じられなかった。
とはいえ、彼女が寄付してくれた100円のおかげで、墓地の手付け金を支払うのにちょうど足りる額になった。
俺は苦々しく唇を噛み締め、寄付金の引き出し申請ボタンを押そうとした。
突然、最新の寄付とメッセージが更新された。
姉が支援している苦学生の拓海だ。
彼は俺に1円を寄付し、こうコメントしていた。
【湊さん、家に帰っておいでよ。ちゃんと謝れば涼音さんも許してくれるから。こんな嘘をつくのはもうやめなよ】
俺はスマホを強く握りしめた。
しかし、あれこれと考えた末、結局何も言い返さずにボタンを押した。
拾った野良猫のチビが、俺の感情の乱れに気づいたのか、足元にすり寄ってきた。
しゃがみ込んでその頭を撫で、残り少ないキャットフードを器いっぱいに注いでやった。
チビは足を引きずりながら駆け寄り、勢いよく食べ始めた。
チビは片脚が折れた障害猫だ。
キャットフードを食べながらも、時折振り返っては俺の様子を窺っている。
その媚びるような眼差しと視線がぶつかった瞬間、俺は目頭を熱くし、姉に家を追い出されたあの夜へと引き戻されたような感覚に陥った。
嫌悪感を露わにした彼女の声は、骨の髄まで凍りつかせるほど冷酷だった。
「自分の過ちを認めないなら出て行きなさい。もうあなたなんていらない!」
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