妊娠七ヶ月、夫がナイトランにはまっちゃった第2話
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胸の奥が、きゅっと痛んだ。
「いい匂いがして、すごく落ち着く」
隼人はよく、丸く膨らんだお腹に頬を当てて、嬉しそうに言っていたのに。
「今日はこれ読もう、胎教も大事だから」
そして毎晩のように、童話の絵本も開いたのに。
画面をスクロールするほど、胃の奥が冷えていく。
指先が震え、スマホも落としそうになる。
【俺のこと責めるのはまだわかるけど、外のあの若い子には関係ないだろ?
赤ちゃんが生まれたらちゃんと別れるって約束もしてくれたし、絶対に迷惑かけないって向こうから言ってんの。
どうよ、めっちゃいい子だろ?】
さらに、一つの動画まで添付されていた。
——高いポニーテール。
——若くて、柔らかい笑顔。
——すき焼きのたまごを真剣に混ぜる横顔。
——それに、浅く浮かぶえくぼ。
胸の奥が、刺されたみたいだった。
社会人になりたてで、仕事がつらかったあの頃のことを思い出した。
電話で泣き崩れた私のために、隼人は重要な会議を抜けて、何時間もかけて迎えに来てくれた。
「すき焼き、食べに行こう」
気づけば、たまごを混ぜながら、ほっと笑っていた彼。
「恵美の……笑みを守るために、俺は頑張るよ」
その時の言葉を思い出した途端、ぽたりと、涙が画面に落ちた。
どうして——
どうして隼人が……
高校、大学、そして仕事で離ればなれになった三年間さえ、一度も手放さなかった彼が……
どうしてこんな形で裏切るの?
女の子の手首には、なにかが光っていた。
あれはブレスレット——私が選んで、隼人に贈ったものだ。
あの女の子の正体も、私が知っている。
篠原つきよ(しのはら つきよ)だ。
私たちの新居マンションを案内してくれた、不動産営業だった。
あの頃、仕事に追われていた。早朝でも深夜でも、少し時間が空くと、無理をして物件を見に行くしかなかった。
相手だって休みたいはずだと分かっていたから、彼女に連絡するのがいつも少し気が引けた。
それなのに、いつ連絡しても、彼女はすぐ返してくれた。
どれだけ物件を回っても、嫌な顔ひとつ見せなかった。
毎回内見が終わる頃には、いつもすっかり夜も更けていて、私は毎回、隼人と一緒に彼女を家の近くまで送っていった。
彼女の家があるのは、細い路地ばかりで車が入り込めないような古い住宅街で、車を降りるときの彼女の顔には、いつもどこか気まずさと寂しさが浮かんでいた。
頑張り屋の彼女に、つい自分を重ねてしまった。
あの大都会で生き残るために、必死で働いてきた頃の自分を。
親近感すら、私は勝手に抱いていた。
でもどうやら、その思いは、私だけのものではなかった。
……
動画の中。
何枚かのバラ肉を、当たり前のように隼人の皿へ置くつきよ。
「隼人さんは、本当にエリートですよね。こんな若さで家まで買って、奥さんにもあんなに優しくて……私にも、隼人さんみたいな彼氏がほしいな——」
そして軽く笑いながら、彼女は続けた。
「奥さんが子どもをほしがるのも分かります。逃げられないように、ですよね?」
仕方なさそうに、隼人はその額を指でつついた。
「黙って食べな」
その言葉に、つきよは頬をふくらませた。
「奥さんに、私なんて全然敵わないですよ」
冗談めかして言ったが、その目には一瞬だけ、本気の色がよぎった。
それを察したのか、隼人は思わず指輪を擦る。沈黙が落ち、やがて疲れたように声が漏れた。
「……もうできちゃった子供は、仕方ないだろ。いらないなんて言えないし……」
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