妊娠七ヶ月、夫がナイトランにはまっちゃった第1話
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夫の佐藤隼人(さとう はやと)が私・佐藤恵美(さとう えみ)にマタニティオイルをゆっくり塗ってくれているあいだ、何気なく開いたSNSで、妙な投稿が目に入った。
【妻が妊娠後期で一人でいられない。なのに外の若い子がやたらまとわりついてきて……マジで困ってる。どうしたらいいんでしょう?大至急アドバイス求む】
そんなクズみたいな書き込みに、コメント欄は案の定、罵倒であふれている。
それでも、なぜか得意げに「助言」をしている人までいた。
【筋トレって言っとけば?
夜の八時ぐらいに外で会って、十時ぐらいに帰っていい旦那の顔しとけばバレないよ。
妊婦なんて鈍くなるし、絶対気づかないって】
コメントを読んだ瞬間、なぜかその奥さんの姿が自分と重なって、胸がぎゅっと痛んだ。
妊娠後期なんて、心も体もいちばん弱くなる時期なのに。
そんなときに、いちばん信じたい相手に裏切られるなんて……
「ねぇ、この投稿——」
隼人に見せようと顔を上げた瞬間。
——スポーツウェア姿の彼が、目に飛び込んできた。
「恵美、今日からナイトランしようと思って……」
……えっ?
* * *
夫の佐藤隼人(さとう はやと)が私・佐藤恵美(さとう えみ)にマタニティオイルをゆっくり塗ってくれているあいだ、何気なく開いたSNSで、妙な投稿が目に入った。
【妻が妊娠後期で一人でいられない。なのに外の若い子がやたらまとわりついてきて……マジで困ってる。どうしたらいいんでしょう?大至急アドバイス求む】
そんなクズみたいな書き込みに、コメント欄は案の定、罵倒であふれている。
それでも、なぜか得意げに「助言」をしている人までいた。
【筋トレって言っとけば?
夜の八時ぐらいに外で会って、十時ぐらいに帰っていい旦那の顔しとけばバレないよ。
妊婦なんて鈍くなるし、絶対気づかないって】
コメントを読んだ瞬間、なぜかその奥さんの姿が自分と重なって、胸がぎゅっと痛んだ。
妊娠後期なんて、心も体もいちばん弱くなる時期なのに。
そんなときに、いちばん信じたい相手に裏切られるなんて……
「ねぇ、この投稿——」
隼人に見せようと顔を上げた瞬間。
——スポーツウェア姿の彼が、目に飛び込んできた。
「恵美、今日からナイトランしようと思って……」
……えっ?
頭がうまく回らなくて、彼の言いたいこともまだよく飲み込めないうちに、彼はフルーツの盛り合わせを運んできて、皮をむいたぶどうを一粒、さりげなく私の口元に差し出してきた。
酸味が舌に触れた瞬間、ぱっと私を現実に引き戻された。
スマホの画面を消して、私はゆっくりと体を起こした。
「そんな急に……どうかした?」
「出産まであと二ヶ月だろ? 君にはちゃんと休んでほしいから、夜中の授乳もオムツ替えも、全部、俺がやろうと決めたんだ。
だからその前に、ちょっとでも体力をつけておこうと思ってさ」
その言い方は、やけに滑らかで、迷いがない。
まるで——あらかじめ用意していたネタみたいに。
いや、それどころか……まるで「ここで感動してくれ」というような期待まで、彼の瞳に、微かに浮かんでいたような気がした。
「……行かないと、ダメなの?」
私は思い切って、そう口にした。
彼の笑顔も、そこでぴたりと固まった。
視線を逸らし、隼人は後ろ首をかきながら誤魔化そうとする。
「ほんとうは、家にいたいんだけど……
でも部長がね、健康診断の結果がやばくてさ……それで毎晩みたいに筋トレやってて、それに付き合わないと……
子どもを育てるのにお金もかかるし、昇進も……ね?」
確かに、言っていることだけ聞けば筋は通っている。
けれど彼は昔から、忖度なんて大嫌いで、「上司にもう少し合わせなよ」と言っても、逆にむっとするタイプだった。
家族が増えると、人って丸くなるものなのかな。
ゆっくりと息を吐き、きれいに片付いたリビングを思わず見回した。
私のことを過保護なくらいに気遣って、どんな小さな用事も「俺がやる」と言ってきた人が……あの投稿のようなことをするなんて、そんなはず……ない、よね?
「わかった。じゃあ気をつけて……」
そう言うと、額にそっとキスを落とされた。
「帰ったら足のマッサージもしてあげるから。待っててね」
と、彼はどこか嬉しそうに微笑んだ。
静まり返った部屋で、胸のざわつきが消えないまま、もう一度あの投稿を開いた。
「筋トレと言っとけ」と書かれたコメントには、すでに「ベストアンサー」のマークがついていた。
【その案マジで最高!助かった!ほんとサンキュー!!
それに疑うどころかナイトランに気をつけてって心配してくれてるし、妊婦ってマジでチョロいんだよね(笑)
さんざん文句言ってるのってどうせ女だろ?すぐキレるくせに自覚ゼロでマジ草。
妊婦って臭いって知らねーの?マジできついんだよ。外の子と遊ばねえとストレス溜まって無理】
画面が、一瞬で冷たく凍りついたように見えた。
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