和紙文夫の初恋の墓を掘り起こす私、その正体は隠れ令嬢 · 第2話設定≡

夫の初恋の墓を掘り起こす私、その正体は隠れ令嬢第2話

この話は約2088字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

マイバッハが猛スピードで道路を疾走する。翔太が時折バックミラーで私を一瞥するが、その目には嫌悪感しか浮かんでいなかった。

ここ数年、翔太は私の前で優しく思いやりのあるふりをしていた。それで、私は楓氏グループのすべてを翔太に注がせ、翔太を貧乏な若造から今の佐藤社長へと押し上げたのだ。

今思えば、私は本当に盲目だった。その人の言う「真心」を信じてしまったなんて!

突然、スマホが振動した。見知らぬ番号からのメッセージだ。

【千尋さん、知ったんだってね。

私が怖がってるって聞いて、翔太は今日も私のところに戻って付き添うんだって。空き家で寒くないかな?】

私が返信しようとした瞬間に、翔太はスマホの画面をちらりと見たら、急ブレーキを踏んだ。

「今さらそんな芝居までやるのか?」

翔太は私のスマホを奪おうと手を伸ばした。「お前は暇すぎて、毎日こんなことばかり考えているんだ!」

私は必死にスマホを握りしめたが、翔太に平手打ちを食らわされた。

「翔太、お前、頭おかしいじゃない!」

翔太は冷笑を漏らし、スマホを窓の外へ放り投げた。「おかしいのはお前だ。善悪もわかんないくせに!」

家に着いたら、もうお医者さんが到着していた。

翔太は駆け寄り、目が赤くて言った。

「先生、やっと来てくれましたね。妻が最近おかしくなって、毎日私にまとわりついて離れないんです!

存在しない初恋なんて妄想までして、子供ができないから、頭がおかしくなったんじゃないかと思います!」

もう心が冷めていたのに、平然と不妊のことを話すのを聞いていたら、胸が張り裂けるようだった。

あの時、私は翔太と結婚すると決心した。父は翔太の動機が絶対に怪しいと指摘した。

私は激怒してドアを叩きつけ、父の前に誓った。「もし翔太が十年も心変わりはしなければ、翔太が婿であることを認めなきゃ!」

しかし家を出た途端、車に轢かれる事故に遭った。妊娠ということはありえなくなった。

その時の翔太は病床の前で跪き、涙で目を真っ赤にしていた。

「一生子供ができなくても、俺が認めるのは、千尋だけだ」

私はその言葉を信じて、この十年、翔太を陰で支える女でいた。

翔太のために朝早くから夜遅くまで取引交渉をし、会社からの反対を押し切って、彼を社長の座に就かせた。

翔太の面目を保つため、財務諸表すら読めない彼に、私はいつも喜んで付き合った。

でも今、その人に、あまりにも、気持ち悪くて、胃の中がぐるぐる渦巻いているほど。

「妄想?あの請求書や写真も、全部私の妄想だって言うの?」

私の言葉がまだ終わっていないうちに、翔太が一歩踏み出し、目を赤くして焦った。「先生、最近千尋はこんな感じで、いつも脈絡のないことを言うんです」

お医者さんは眉をひそめ、私を見る目に哀れみを込めた。「楓さん、お気持ちはわかります。長期の不妊は妄想を引き起こしやすいのです。入院して観察し、薬物療法で回復されることをお勧めします」

反論しようとした私の口を、翔太が慌てて遮った。

「千尋!お医者さんはお前のために、この家族のために言っているんだ。もう騒ぐのはやめろ!」

翔太のスマホが突然振動した。

画面に詩織の写真が表示された。

翔太は慌てふためいてサイレントモードに切り替えると、振り返って、私を睨みつけた。

「全部お前のせいだ!詩織が死んでも安らげない。お前が大人しくしてれば、こんなことにならなかったのに!」

翔太のその姿を見て、私は突然笑った。そして、涙がこぼれ落ちた。

「ならなんで電話を切ったの?死んだんじゃないの?どうして詩織を呼んでくれなかったの?私の目の前に立たせて、どっちがやましいことがあるか見せてやればいいのに!」

口元をひきつらせ、冷笑を浮かべた翔太は、医師に向かって偽善的なため息をついた。

「ほら、また支離滅裂なことを言い出しました。詩織がまだ生きていたら、自分がこんな風に貶められるなんて許さないでしょうに!

残念ながら詩織はとっくに死んでいました。詩織のために口を利いてくれる者さえいないのです」

お医者さんはため息をつき、私を見る目に哀れみの色を浮かべた。

「佐藤社長、楓さんの状態はあまり楽観できません。早急に強制入院の手配をされることをお勧めします。介入は早ければ早いほど良いのです」

翔太は慌ててうなずいた。

医者を送り出す際、翔太は玄関で小声で念を押していた。「お手数ですが、できるだけ早く病床の手配をお願いします」

ドアが閉まるやいなや、翔太の顔から穏やかさというものが一瞬で消えた。

私は髪を掴まれ、寝室へ引きずり込まれた。

「千尋、精神的に負担が大きいなら、家で落ち着いて休め」

バタンと寝室のドアが閉められた。

ドアを越しに、翔太は冷たく言い放った。

「警告する。もう一度詩織の話をしたり、離婚なんて騒いだりしたら、本当に精神病院に入らせるぞ!」

冷たいドアに寄りかかり、全身が震えた。

十年もの間、愚か者のように翔太に心を捧げてきた私は、精神病院に入らされるという脅迫を!

なんで!なんで!

引き出しから予備のスマホを取り出し、父にメッセージを送った。

【お父さん!後悔した。お願い、一週間以内に翔太を無一文にして!】

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