夫の初恋の墓を掘り起こす私、その正体は隠れ令嬢第1話
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楓千尋(かえでちひろ)は私の名前。
佐藤翔太(さとうしょうた)と結婚してから十年経った。
世間は翔太が亡き初恋の桜井詩織(さくらいしおり)に一途だと称賛している。
いわゆる情けの深い翔太との結婚生活も心から幸せだと思っていた。しかし詩織の命日に、翔太がパリで「亡くなった」詩織とキスしている写真を見つけた。さらに、父が私にくれたサブカードをなんと「死んだ人」に不正利用されていたという事実に驚く。
問い詰めたところ、精神病院に入院させるよと逆に翔太に責め立てられた。
さらに、私が妊娠できなくなった原因となるあの交通事故は、まさか翔太が詩織と結ばれるために仕組んだものだった。
十年もかけた真心が冗談のようだ。
もう忍びはしない。証拠を集め、翔太と詩織を刑務所へ入らせた。楓氏グループの人脈や財産などを動員し、佐藤グループを潰した。
今や翔太は法律で裁かれ、私もついに騙されたという苦境から抜け出し、太陽に向かって生きていく。
* * *
私は楓千尋(かえで ちひろ)。結婚十年目、夫・佐藤翔太(さとうしょうた)の初恋の墓を掘り起こした。
しかも、翔太の初恋の命日に。
墓石に刻まれた桜井詩織(さくらいしおり)の顔、私と少し似ている。
その顔を見ながら、私は涙が出るほど笑った。
「千尋、何てことを!なんで詩織の墓を掘り返すんだ!
お前、正気か!」
翔太は私の手首を掴み、苛立ちに満ちた口調で叱責した。
手首の骨が砕けそうな痛みだったが、心の痛みと比べれば取るに足らないものだった。
私をちょっと叱っただけで数日間眠れなくなるほど不安だった男が、今や別の女のために、こんなにも私を罵るなんて。
私は翔太の手を振りほどき、墓石に貼られた詩織の写真を指さし、震える声で言った。
「じゃ、教えてよ、死んだ人間がどうやって生き返って、あんたとパリに旅行に行ったの?」
翔太は一瞬呆然とし、目に一瞬の動揺が走った。
だが次の瞬間、翔太は尻尾を踏まれた猫のように、私を勢いよく突き飛ばした。
背中が石碑に激しく打ちつけられ、痛みに息を呑む。それなのに翔太は私の鼻先を指さし、怒りに震えながら責め立てた。
「千尋、お前、俺を尾行してたのか?
ただ未熟なだけかと思ってたが、まさかこんな卑劣なことを!こっそり俺の行方を調べるとは!」
墓石に手をついてよろめきながら起き上がる私は、翔太の事実を歪曲する様子を見ていると、胸に苦いものが広がった。
昔、よく友達に翔太の情け深さを自慢していた。初恋が亡くなって十年経っても、翔太は忘れられなかったというのだ。
翔太の書斎には詩織の写真が飾られていた。翔太は「写真を捨てるのが心惜しい」と言ったから、私は写真立てを拭いてあげた。こんなにも昔のことを大切にする人なら、絶対に私を裏切らないだろうと思っていた。
詩織の命日ごとに、翔太に一人にしてあげ、詩織を偲ぶ時間を与えた。
だが今、それは皮肉にしか思えない。情に厚いなんて全て嘘だった。私はまるでピエロのように翔太に弄ばれていたのだ!
翔太が墓地へ行くはずだった日は、パリの街で詩織と高級ブランド店を巡っていた。
「尾行?そんなことする必要はある?
この『死者』が、どうやって父があんたに渡したサブカードで千万円の請求額を立てたの?」
私は冷笑を漏らし、スマホを取り出して翔太の顔に突きつけた。
写真には翔太が詩織の腰を抱き寄せ、二人は深く、優しくキスしている。その幸せそうな様子が再び私の心を痛めた。
視線が写真についた瞬間、翔太は顔色が真っ青になった。
突然、翔太はスマホを奪い取り、地面に叩きつけた。
「千尋、お前は本当に悪辣だ!
詩織が『死んで』から十年も経つのに、俺に詩織を忘れさせるために、こんな偽造写真で詩織を貶めるなんて!死んだ人間さえ許せないのか?」
翔太は私の手首を強く掴み、
「俺が詩織を偲ぶとしてもなんなのだ?十年の結婚生活で、お前にはそれほどの度量すらないのか?こんな卑劣な手段で陥れようとは、お前以上卑劣な人間はいない!」
翔太の瞳にわずかに残っていた動揺さえ怒りに覆い隠された。突然十年の結婚生活が完全な茶番に思えて、私は涙が止まらなくなった。
「翔太、離婚しよう」
翔太は一瞬呆然としたが、すぐに私を車に押し込んだ。
額が車のドア枠にぶつかり、私は痛みで視界が真っ暗になった。
「お前は最近ストレスが溜まりすぎて、精神病になったから妄想してるんだ!
今すぐ病院に連絡して、医者にお前をしっかり治療させる。正気に戻ったら、自分がどれだけ馬鹿げてるか分かるだろう!」
翔太の冷たい表情を見た私は、心が完全に死んだ。
翔太は十年もの間芝居を続け、十年分の真心をかすめ取ったのだ。
だから。
翔太が私に返すべきものは、一つ一つ取り返してやる。
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