和紙文夫の初恋の墓を掘り起こす私、その正体は隠れ令嬢 · 第3話設定≡

夫の初恋の墓を掘り起こす私、その正体は隠れ令嬢第3話

この話は約2244字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

その夜、眠りにつこうとした時、見知らぬ番号からまたメッセージが届いた。今度は十数本の動画だった。

動画を開いた瞬間、血は凍りついたようだ。

画面には、詩織が私のシルクネグリジェを着て、主寝室の大きなベッドに横たわっていた。甘えた声でこう尋ねる。

「奥さんの誕生日なのに、付き添ってあげないの?」

画面が切り替わると、翔太が浴室から出てきた。

ベッドに近づき、詩織の額にキスをすると、甘えた口調で言った。

「千尋のことは言うなよ、縁起が悪い。今日は君の『命日』だ。もちろん君と一緒にいるさ」

去年の私の誕生日に、翔太は山の別荘へお花火を打ち上げに行こうと言った。

結局私は一晩中翔太を待ち続け、凍えそうになりそうになったのに、翔太は現れなかった。

後で翔太は緊急会議があったと説明したが、その緊急会議とは「死者」を慰霊することだとは思ってもみなかった!

【千尋さん、動画は面白かった?

翔太が言ってたよ、楓氏グループの財産のためじゃなければ、絶対にあんたと結婚しなかったって。

そうそう、知らなかっただろうけど、おんたが車に轢かれたのは事故じゃなかったんだよ。

あのトラック運転手は、翔太の遠い親戚だったのよ】

胸がズキッと痛んだ。私はずっとあれは交通事故だと思っていた。

一生妊娠できなくなったことが、なんと夫が仕組んだ陰謀だったなんて!

寝室のドアを叩きつけながら、私は叫んだ。

「翔太!出て!

詩織との動画、見たわ!あの事故もあんたたちの仕業なの?」

ドアを開けて入ってきた翔太は無表情で、予備スマホを奪おうと手を伸ばす。

「千尋、本当にしつこいな。予備のスマホまで隠していたとは!」

必死にスマホを握りしめると、翔太は私を蹴り倒した。

「大人しくしてろ。まだ妻への情けは残してる。さもないと痛い目を見るぞ!」

予備スマホを奪い取った翔太は、カバーを開けてSIMカードを外し、それを勢いよく折った。

「ここにじっとしてろ。誰かが助けてくれるなんて妄想するな!」

しかし私は見た。翔太が電源を落とす直前に、画面が光った。父からのメッセージだ。

【心配するな。お父さんが帰国するのを待って!】

その後、翔太は私を完全に無視した。

家政婦に時間通りに食事を届けさせるだけ。その家政婦はなにか命令されたかのように一言も私に話しかけようとはしない。

七日目、翔太の秘書が一着のドレスを持って来た。

「佐藤社長が、今日の晩餐会は重要だと言っておりました。奥様、ご配慮ください」

そのドレスを見て、私はふっと笑った。

私が晩餐会で騒ぎを起こし、佐藤社長の面目を潰すのを恐れているのだろう?

結構だ。翔太がどんな芝居を打ちたいのか、見てやるわ!

その夜、アシスタントに会場に案内されると、人々がざわめいた。皆の視線を辿ると、詩織が豪華なドレスを纏い、翔太の腕を組んでゆっくりと歩いてきている。

周囲はたちまち噂話で持ちきりになった。

「この方は佐藤社長が家に隠していた奥様か。お二人は本当にお似合いだ!」

「奥様が羨ましいわ。あのドレスは佐藤社長が落札したものだって!」

それを聞いて翔太は反論せず、むしろ詩織の髪を優しく整えた。

翔太の背後に立つ私は、この荒唐無稽な光景を見て思わず声を出して笑った。

「佐藤社長にいつから二人の奥様が? 知らなかったわ」

東都中が知っている。翔太をこの地位に押し上げたのは私だ。翔太が私を裏切るなら、代償を払わせる!

会場は一瞬で静まり返り、全ての視線が私に向けられた。

私を見つけた詩織は呆れたようにため息をついた。

「メイドのくせに、私の服を着て出てきてどうするつもり?」

そんなセリフを言いながら、申し訳なさそうに周囲に謝った。

「うちのメイドが最近精神を病んで、自分が奥様だと妄想しているんです。私も困っています」

会場は一瞬で騒然となった。

「ただのメイドだったのか?雇い主の服を着るだけでもあれなのに、ここで勝手なことを言うなんて、まったく礼儀知らずだ!」

「やっぱり佐藤社長がこんな女性と結婚するわけないわ。桜井さんを見てごらん、なんて優雅なの。これこそ佐藤社長に合う人よ!」

「さっき奥様だなんて言ってたのも、狂ってたからか。笑っちゃうわ!」

翔太も眉をひそめて私を見つめ、苛立ちを隠せない口調で言った。

「千尋、クローゼットを勝手に触るなって言っただろう?

詩織のものは一切触るなと言っただろう?早くドレスを脱いで、台所に戻って仕事しろ。ここで邪魔するな!」

嘘を平然と吐く腰巾着どもを一瞥し、私は翔太を睨みつけた。

翔太にとって私は、ただ辱められるだけの狂ったメイドに過ぎないのだ。

あの時、翔太の工事現場で火災が起き、数十人が亡くなった。遺族が昼夜を問わず会社を包囲し、命の償いを求めた。

私が楓氏グループのコネで危機を救い、怒れる遺族の刃さえ翔太に代わって受け止めたのだ。

「千尋のおかげで、俺が今まで生き延びてこられたんだ!絶対に、一生かけて恩返しする!」

病床の前で誓った翔太の言葉は、どれほど力強かったことか。

結局、全ては芝居だった。

私は深く息を吸い込んだ。それで、振り返ってワイングラスを手に取り、勢いよく翔太の顔にぶちまけた。

翔太の惨めな怒りの姿を見ながら、私は一字一句と言った。

「翔太、この十年、私は盲目だった!

昔みたいなことは、もう二度としない」

場内は一瞬で静まり返った。

翔太の顔は青ざめ、殺意に満ちた鋭い眼差しを向けてきた。

彼は拳をぎゅっと握りしめ、遠くの警備員に向かって怒鳴った。

「ぼんやりしてるんじゃない!この狂った女を、外に放り出せ!」

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