和紙文夫に捨てられた私が、妹のためにすべてを暴く · 第2話設定≡

夫に捨てられた私が、妹のためにすべてを暴く第2話

この話は約1413字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

これ以上揉める気はなかったので、私は次の書類を差し出した。

「これは財産放棄の離婚協議書よ。署名して」

蓮は机を叩いて立ち上がり、怒鳴りつけた。「そんなに俺と別れたいのか?」

そのとき、蓮の携帯が鳴った。電話に出た途端、顔から血の気が引いていく。

次の瞬間、私は頬を打たれていた。

口の端から、じわりと血がにじむ。

「詩乃を学校まで送れと言っただろうが!お前はいったい何をしてる。こんなくだらない離婚協議書なんか用意しやがって!

詩乃が事故に遭ったんだ!お前は本当に役立たずだな。長年、家でぬくぬく暮らしてきて、お前が俺の役に立ったことなんて、一度でもあったか?

いいだろう。離婚したいんだな。してやるよ!」

蓮は財産放棄の離婚協議書の方に署名すると、書類を私の顔へ投げつけた。

「来い。病院へ行って詩乃に謝れ!」

そう言うと、蓮は私の腕をつかみ、乱暴に社長室から引きずり出した。

病室に入った途端、詩乃は涙をこぼした。

わずかに赤くなっただけの手首を、ひどくつらそうに蓮の前へ差し出す。

「蓮さん、痛い……」

蓮はその手首にそっと息を吹きかけた。「ほら、こうすれば痛くない」

そんな2人の姿を見て、私は昔、蓮と一緒に屋台でアイスを売っていたころを思い出した。

大粒の雪が降るなか、私の手は冷え切って、じんじん痛んだ。

蓮はあのときも、同じように優しく息を吹きかけてくれた。「ほら、こうすれば痛くない」

そこまで思い出した途端、目頭が熱くなり、胸まで苦しくなった。

けれど蓮は、不機嫌そうに私を睨んだ。「泣く資格があると思ってるのか。全部お前のせいだ。さっさと詩乃に謝れ!」

私は背筋を伸ばし、静かに答えた。「それはできない」

蓮はベッド脇の棚にあったものをつかむなり、そのまま私に投げつけた。

金属の重いものが額に当たり、たちまち血が流れ落ちた。

「この数年、甘やかしすぎたな。謝ることもできなくなったのか。悪いと思うなら、さっさと謝れ!」

詩乃は泣きながら蓮の手を引いた。「蓮さん、やめて。澪さんを怒らせたら怖いですし……これから一緒に暮らすんですから。私は大丈夫だけど、赤ちゃんに何かあったら……」

胸の奥が、ざわりとした。

私は、2人が一夜だけ過ごしたと思っていた。まさか、子どもまでいたなんて。

蓮はその言葉を聞いた瞬間、目を輝かせた。

「よくやった、詩乃。ようやく鷹宮家の子を授かってくれたんだな!」

そして蓮は急に立ち上がり、私の膝裏を思いきり蹴った。

私は踏ん張れず、片膝を床についた。

「謝れ!」

意地で立ち上がると、蓮はまた私を蹴り、床にひざまずかせた。

耳元で、蓮の冷たい声がした。「お前の妹も、この病院にいるのを忘れたのか?」

蓮は携帯を取り出し、どこかへ電話をかけた。

「雨音への支払いを止めろ。今すぐ病室も引き払わせろ……」

私は慌てて蓮の脚にしがみついた。「やめて!お願い、それだけはやめて!」

蓮は顔をしかめると、私の胸を蹴りつけた。「3秒だけ待ってやる。謝らなければ、妹の命はないと思え」

「3、2……」

私は詩乃に向かって、額を床に打ちつけるように頭を下げた。

「ごめんなさい。許してください」

涙と血が混じり、顔じゅうを濡らした。蓮は一瞬だけひるんだが、すぐにしゃがみ込み、ティッシュで私の顔を拭いた。

「もういい。これからは詩乃の世話をきちんとしろ」

私は顔を上げ、静かに告げた。「弁護士が、離婚協議の手続きに1ヶ月くらいかかるって。1ヶ月後には私たちの離婚は成立するのよ」

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)