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夫に捨てられた私が、妹のためにすべてを暴く第1話

この話は約1901字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

社交界の集まりでは、決まってひとつの笑い話が出る。

「鷹宮夫人は自分じゃ子どもも産めないくせに、毎日のように鷹宮蓮(たかみや れん)の寝室へ女を送り込んでるんだってな。うちの鬼嫁にも、それくらいの覚悟があればいいんだが」

けれど彼らは知らない。あの女たちはみんな、蓮の母が私の名を使って連れてきたのだ。

最初の女を、蓮はその場で追い返した。そして私と激しく口論した。

そのあと、数十億円を超える宝石を競り落とし、私の機嫌を取った。

2人目の女を寝室に送り込んでも、あの人は手が触れただけで顔をしかめ、そしてまた、私と喧嘩になった。

そのあと、広大な屋敷を買い、自分のそばにいる女は私ひとりだけだと言った。

……

10人目で、すべてが変わった。その夜、蓮は寝室の扉を閉めたまま、一晩出てこなかった。

私たちはもう喧嘩をしない。言葉を交わすこともなくなった。

誰もが、私が鷹宮家での居場所を守るためなら手段を選ばず、一生この家にしがみつくと思っていた。

だからこそ私が本当に離婚協議書を差し出したとき、それを信じた者は、ひとりもいなかった。蓮でさえも。

* * *

社交界の集まりでは、決まってひとつの笑い話が出る。

「鷹宮夫人は自分じゃ子どもも産めないくせに、毎日のように鷹宮蓮(たかみや れん)の寝室へ女を送り込んでるんだってな。うちの鬼嫁にも、それくらいの覚悟があればいいんだが」

けれど彼らは知らない。あの女たちはみんな、蓮の母が私の名を使って連れてきたのだ。

最初の女を、蓮はその場で追い返した。そして私と激しく口論した。

そのあと、数十億円を超える宝石を競り落とし、私の機嫌を取った。

2人目の女を寝室に送り込んでも、あの人は手が触れただけで顔をしかめ、そしてまた、私と喧嘩になった。

そのあと、広大な屋敷を買い、自分のそばにいる女は私ひとりだけだと言った。

……

10人目で、すべてが変わった。その夜、蓮は寝室の扉を閉めたまま、一晩出てこなかった。

水原詩乃(みずはら しの)という清楚そうな女子大生が蓮とともに寝室へ入っていったあと、私はリビングのソファに座ったまま、黙っていた。

中から漏れてくる、なまめかしい喘ぎ声を一晩中聞いていた。

空が白みはじめたころ、蓮が上半身を裸にしたまま部屋から出てきた。

情事のあとの生温い匂いが、扉の隙間から私の鼻先まで流れてくる。吐き気がした。

蓮は私の前に立ち、冷ややかに言った。「もう満足か?」

私は顔を上げ、蓮を見返した。「満足したのは、あなたのほうでしょ」

蓮は急に声を荒らげた。

「毎日のように女を探してきて、俺の子どもを残したいんじゃない。結婚して10年、俺に飽きただけなんだろ。いいさ、望みどおりにしてやる。今この瞬間から、お前には指一本触れない!

詩乃が起きたら、車で学校まで送ってやれ」

私は立ち上がり、震えそうになる声を抑えて、ひとつだけ訊いた。

「あの子を愛してるの?」

「ああ、愛してる。だが安心しろ。鷹宮家の奥様っていう肩書きは、ずっとお前のものだ。明日、ゲストルームをひとつ片づけさせる。お前はそこへ移れ。詩乃は俺と同じ部屋を使う」

そう言い捨てると、蓮は浴室へ入っていった。

シャワーの音に紛れるように、涙がこぼれ落ちた。

10年前、私たちが何も持っていなかったころ、蓮は私の手を握り、結婚に反対する母親の前に立った。

あのときも、蓮は同じように迷いなく言った。

「俺は彼女を愛してる。一生、彼女だけを愛する」

私だけに向けられていたはずのその愛は、結局、別の女のものになった。

夜が明けても、私は詩乃を学校へ送らなかった。代わりに、法律事務所へ向かう。

弁護士と財産のことを確認して、私はようやく思い知った。

結婚して10年。私には、何ひとつ残っていない。

蓮が私に贈ったものは、すべて蓮の名義だった。

母から受け継いだ大切な形見を売ってまで支えた会社でさえ、今の私には1株の持ち分すらなかった。

唯一あったのは、毎月きっちり振り込まれる2000万円の小遣いだけ。だがその口座さえ、名義は蓮のものだった。

昼になってようやく、私は離婚協議書を手に蓮の会社へ向かった。

蓮は眉間に深い皺を寄せ、書類を机に叩きつけた。

「白石澪(しらいし みお)、俺がお前に贈った屋敷も他の不動産も、全部お前のものだと言うのか?まさかここまで欲深い女だったとはな!

俺の妻でいるうちは、全部お前のものだ。だが離婚するなら、1円たりとも渡すつもりはない」

胸の奥がすっと冷えた。人は、愛しているときと愛していないときで、ここまで変わるのか。

愛されていた頃は、この世の幸せを全部手にしている気がした。

愛されなくなった今、私はそこにいるだけで邪魔者だった。

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