夫が妹との隠し子を告白した夜第1話
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友人たちとの飲み会で王様ゲームをしていたとき、如月奏多(きさらぎ かなた)が負けて、質問に答えることになった。
「俺と遥のあいだには、子どもがいる」
私、高瀬春名(たかせ はるな)は思わず彼を見た。全身がこわばった。
誰もが知っている。高瀬遥(たかせ はるか)は私にとって一番大切な妹で、奏多はつい先日、婚姻届を出したばかりの夫だった。
彼の口調は淡々としていて、どこか軽薄だった。
「三年前、酔った勢いだった。遥の格好が妙に色っぽくて、我慢できなかったんだ。まさか、それで妊娠するとは思わなかったけどな」
彼はうつむいて小さく笑い、含みを持たせるように言った。
「遥は、誰かさんよりスタイルもいいし、男を喜ばせるのもうまい。それに、子どもも産めない誰かさんと違って、俺を父親にしてくれる」
私はぎこちなく、隣にいる妹へ目を向けた。彼女は顔を真っ赤にして、うつむいたまま私を見ようとしなかった。
昨日、彼女は目を赤くしながら私の幸せを願い、私のために最高の結婚式を用意したいと言っていたのに。
奏多はグラスを置き、淡々と口を開いた。
「話は終わりだ」
その瞬間、場は静まり返り、全員の視線が私へ向けられた。
* * *
友人たちとの飲み会で王様ゲームをしていたとき、如月奏多(きさらぎ かなた)が負けて、質問に答えることになった。
「俺と遥のあいだには、子どもがいる」
私、高瀬春名(たかせ はるな)は思わず彼を見た。全身がこわばった。
誰もが知っている。高瀬遥(たかせ はるか)は私にとって一番大切な妹で、奏多はつい先日、婚姻届を出したばかりの夫だった。
彼の口調は淡々としていて、どこか軽薄だった。
「三年前、酔った勢いだった。遥の格好が妙に色っぽくて、我慢できなかったんだ。まさか、それで妊娠するとは思わなかったけどな」
彼はうつむいて小さく笑い、含みを持たせるように言った。
「遥は、誰かさんよりスタイルもいいし、男を喜ばせるのもうまい。それに、子どもも産めない誰かさんと違って、俺を父親にしてくれる」
私はぎこちなく、隣にいる妹へ目を向けた。彼女は顔を真っ赤にして、うつむいたまま私を見ようとしなかった。
昨日、彼女は目を赤くしながら私の幸せを願い、私のために最高の結婚式を用意したいと言っていたのに。
奏多はグラスを置き、淡々と口を開いた。
「話は終わりだ」
その瞬間、場は静まり返り、全員の視線が私へ向けられた。
「どうして」
私は唇を震わせ、やっとの思いでその言葉を吐き出した。
互いに好きだったのなら、どうして私と付き合ったのか。どうして私と結婚したのか。
そしてどうして今ここで打ち明けて、私に恥をかかせるのか。
奏多は私のうろたえた様子を見て、むしろほっと息をついた。
「遥を責めないでくれ。あのときは俺のほうから迫ったんだ。
遥はお前に知られたくなかった。お前に見捨てられるのが怖くて、それ以上に、お前に嫌われるのが怖かったんだ。
でも俺は、もうこんな生活を続けたくない。俺たち三人で、後ろめたさなく堂々と暮らしたいんだ。お前に気を遣って、隠れ続けるのはもう嫌なんだ」
彼はもっともらしくそう言い、目には妹への後ろめたさばかりが浮かんでいた。
そのくせ昨日、彼は私と婚姻届を出したことに、幸せで涙まで流していたのだ。
彼はしばらく黙り込んでから、また言った。
「春名、お前だって、自分の妹と姪が一生、人目を忍んで生きていくなんて望まないだろう?安心してくれ。俺たちはこれからも家族だ。これからも、お前に優しくする」
そこまで聞いた私は、怒りで震えた。
「奏多、あなたはただのケダモノよ!」
私は立ち上がり、バッグをつかむと彼の顔に叩きつけた。
「良心ってものはないの?よくもそんな吐き気がすることを言えたわね!」
その場にいた全員が凍りつき、互いに顔を見合わせたまま、誰ひとり口を開けなかった。
ずっと黙っていた妹は、私が二度目に振り下ろそうとした瞬間、すぐに私の手をつかんだ。
「お姉ちゃん、責めるなら私を責めて!」
彼女の声には焦りと必死さがにじんでいた。
「私たち、本当に三年前のあの一度きりなの。そのあとは何もないの!
知ってるでしょう?私、昔から体が弱くて、お医者さんにも堕ろすのは危ないって言われたの。だから産むしかなかっただけ。二人を引き裂くつもりなんてなかった。本当なの!」
私は視線を落として、彼女を見下ろした。涙で目を潤ませた遥は、ひどく哀れに見えた。
もし彼女の首筋に残る新しいキスマークを見ていなかったら、信じていたかもしれない。
私はそこへ手を伸ばしてなぞり、皮肉を込めた声で言った。
「遥、ここまで来て、まだ私を騙すつもり?」
彼女の顔は一瞬で真っ青になった。
わからなかった。どうして、よりによって遥が私を裏切ったのか。
私たちは幼いころに両親を亡くし、互いを何よりも大切にしてきた存在だった。
だから、私が恋人ができたと遥に話したとき、彼女は真っ先に相手の連絡先を聞き出し、彼のことを徹底的に調べ上げた。
「どこがいいのよ。私からお姉ちゃんを奪おうとするなんて!」
私は遥のスマホを受け取り、トーク画面でずっと奏多に突っかかっている彼女を見て、ただおかしく思った。
その後、私が奏多とデートに行くたびに、彼女は奏多へ何度も何度も念を押し、私が少しでも傷つけられないように心配していた。
三人で出かけるたび、彼女はいつも強引に私と奏多を引き離した。
「私がいる限り、お姉ちゃんに近づけると思わないで!」
私はそんな彼女を、甘えん坊のやきもち焼きだと笑っていた。私と離れたくないだけなのだと、そう思っていた。
昨日だって、彼女は私のために高価なネックレスまで注文してくれていた。私が幸せになったのだから、自分が世界一素敵な結婚式を企画してあげると言っていた。
私はてっきり、自分は世界で一番幸せな人間なのだと思っていた。誰より私を愛してくれる夫と妹がいるのだと。
けれど現実は、そんな私を容赦なく打ちのめした。
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