夢見る貴方は真冬に降る雪の如き第2話
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翌日、美波は音夢に朝食を作るために早起きした。
階段から降りてきた冬雪の身には、まだ酒の匂いが残っていた。
音夢はうさぎのぬいぐるみを抱えながら、彼へ飛びついていった。
「パパ……」
まだ話の途中なのに、冬雪の険しい目つきを見て、彼女は立ちすくんでいた。
彼は冷たい口調で詰問した。
「今なんて?」と。
それに怯えた音夢は腕の中のぬいぐるみを抱きしめて、もごもごと「ひ……平野さん」と答えた。
冬雪はイライラした顔でネクタイを引っ張って、美波に警告のように言った。
「こいつにちゃんと教え込め。次があったら出て行け」
美波の心はチクチクと痛みだした。
「出て行け」という言葉は、冬雪の一番よく言っている言葉だった。
毎回その言葉を聞く度に、彼女も音夢も怖くて仕方がなかった。しかし今、彼女は自分から出て行くと決意をしたのだ。
冬雪に返事せず、美波は朝食をテーブルに運んできて、音夢を膝の上に抱き上げ、箸をつけた。
作った卵焼きもパンも冬雪の好みに合ったものなのに、彼は見向きもせず、ただ冷たく話した。
「梨乃(りの)が戻ってきたから、彼女のいる時には現れるな。梨乃は嫌がるから」
そう言って、冬雪は音夢のほうに目が行って、「そいつも」と補足した。
美波はその無慈悲な目を見て、「人の心を持ってるの?」と問いかける衝動を抑えた。
結局、彼女はただ苦笑を漏らしながら、「わかった」と答えた。
音夢を幼稚園まで送ってから、美波は自分の画室に向かった。
彼女は美大の卒業生で、まあまあ人気のあった画家だった。その故、卒業する前から個人美術展を開いたのだ。
結婚した後、冬雪と家族の世話をするために、美波は熱情を傾けてきた美術生涯を諦めて、暇な時にだけ趣味として描いていた。
大半の作品は、冬雪にまつわるものだった。
彼女は自分の愛をすべて絵に込めた。点から線まで、その愛の強さが現れていた。
しかしその絵を見た冬雪本人は、嫌そうな顔をして、「そんな無意味なことをやめろ。俺が愛してるのは、最初から梨乃一人だ」と言った。
彼の心は溶けない氷のように、どんなに熱い愛だとしても溶けなかった。
今や、美波はこの十年間、自分の描いた冬雪にまつわる作品を全部まとめて、市外まで運んでいった。
そして油を注いで、火をつけた。
平野冬雪、何をしても「無意味」なら、手放すわ。
無数の冬雪の顔が炎に燃やされて、消えて、最終的に灰になった。
美波の今の気持ちのように。
彼女は冬雪のことを完全に手放して、この人を跡もなく自分の人生から消すと決めたのだから!
突然、彼女のポケットに入っているスマホが鳴った。
美波が電話に出たら、幼稚園の先生の声が向こうから届いてきた。
「時光さん、早く幼稚園に来てください。音夢ちゃんが……!」
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