声なき弁護士の華麗なる復讐第2話
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私はしおれかけたバラの花束を抱え、誰もいない個室で一晩中座っていた。
翌日、司が私を訪ねてきた。彼の目は充血しており、申し訳なさそうに言った。
「ごめん、雫。莉愛のことを上手く処理できなくて、君に辛い思いをさせてしまった。約束する、次は絶対にないから」
私は彼の言葉を信じたが、その「次」がこれほど早く訪れるとは思わなかった。
莉愛が三回目の自殺を図ったのだ。
彼女は私と司がキスしているところを偶然目撃し、その日の午後に自宅マンションの屋上に登った。
司が電話を受けた時、私たちはバレンタインデーを一緒に過ごす準備をしていた。
彼は私をちらりと見て、慌てた口調で言った。
「雫、先に莉愛の様子を見てくる。すぐに戻るから」
その日を境に、彼は半ヶ月間姿を消した。
その期間はあまりにも長く、私は彼が私と別れ、義妹と一緒になる覚悟を決めるには十分だった。
だから、司が再び私の元に戻ってきた時、私は彼からの贈り物をすべて返し、先回りして別れを切り出した。
しかし思いがけず、司は目を赤くした。彼は私を強く抱きしめ、骨まで砕けそうなほどの力で私を腕の中に閉じ込めた。
「雫、別れないでくれ。もし莉愛が二人の邪魔をするのが嫌なら、彼女を海外に行かせてもいい」
私は同意した。
だが、運命はまるで悪ふざけをしているかのようだった。莉愛が海外へ発った翌月、彼女の母親、司の継母が急性心筋梗塞で突然亡くなったのだ。
莉愛が駆けつけた時、彼女が目にしたのは冷たい墓石だけだった。彼女は声が枯れるほど泣き叫び、司を指差して罵った。
「全部あなたのせいよ!あなたが私を追い出さなかったら、お母さんの最期に立ち会えなかったなんてこと、あるわけないじゃない!」
その日、司は墓石の前で一晩中立ち尽くし、戻ってくると私を抱きしめ、かすれた声で言った。
「雫、俺は莉愛に残酷なことをしすぎたのだろうか」
当時の私は彼の背中を撫でて慰めたが、その日から彼の心には莉愛への罪悪感しか残っていないことを知る由もなかった。
彼は莉愛をどこまでも甘やかすようになった。
莉愛が私たちのデート中にわざと仮病の電話をかけてくると、彼は何も考えずに私を置いて彼女の元へ帰った。
莉愛が私の昼寝中に悪意を持って私の髪を剃り落としても、彼はウィッグを買ってきて私を宥めるだけだった。
私の誕生日に莉愛が私の家に放火した時でさえ、燃え盛る炎の中で彼が真っ先に飛び込んで庇ったのは、やはり莉愛だった。
火が消し止められた後、莉愛は司の腕の中に隠れ、私を指差して言った。
「お兄ちゃん、火をつけたのは雫よ。彼女は最近お兄ちゃんが私を可愛がっていることに嫉妬して、私が彼女の誕生日を祝いに来た隙に、私を焼き殺そうとしたの。
私は無事だったけど、煙を吸い込んだせいで喉がやられちゃった。お兄ちゃん、雫に声帯を弁償させて!」
その言葉を口にする彼女の声はひどくかすれており、哀れで無垢な被害者のように見えた。
それを聞いて私は目を丸くした。
「莉愛、何をデタラメを言っているの、火をつけたのはあなただったのに……」
私の言葉は途中で司に遮られた。彼は眉間を揉み、少し疲れた様子で言った。
「この件はここまでだ。あとのことは俺がすべて処理する」
彼は私に安心させるような視線を向けたので、私は本当に安心しきっていた。
彼は莉愛の狂気を知っているのだから、彼女の言葉など信じるはずがないと思っていた。
しかし、彼の言う「処理」とは、人を雇って殺人未遂の芝居を打ち、恐怖で私の意識が朦朧としている隙に、私の声帯を摘出することだったとは思いもしなかった。
録音アプリはまだ作動しており、書斎から拓海の感慨深げな声が聞こえてきた。
「そういえば、お前が最初に雫にアプローチしたのは、莉愛を諦めさせるために彼女を利用しようとしただけだったよな。それがまさか、お前が本当に惚れ込んじまうとはな」
涙が無意識に頬を伝い落ちた。
この三年間だけでなく、司は最初から私を騙していたのだ。
これ以上聞いていられなくなり、私はよろめきながら書斎のドアの前から離れた。
寝室に戻ると、私は三年前に使っていたノートパソコンを取り出し、起動して長らく放置していたメールアカウントに手慣れた様子でログインした。
宛先の欄に、ある名前を入力する。
橘朔也(たちばな さくや)。
彼はかつて国内トップの法律事務所で私の宿敵だった人物だ。私たちは法廷で激しく火花を散らし、一歩も譲らなかった。
だが、彼の専門的な能力が極めて高く、その上実直な人柄であることは否定できない。
私はメールにこう書き込んだ。
【橘先生、水瀬雫です。ある傷害事件について、あなたの助けが必要です】
司と莉愛に、彼らの行いの代償を払わせてやる。
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