声なき弁護士の華麗なる復讐第1話
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西園寺司(さいおんじ つかさ)の義妹である西園寺莉愛(さいおんじ りあ)が最優秀音楽賞を受賞し、トップシンガーになったというニュースを、私は七十三回も繰り返し見ていた。
それを側で見ていた司はひどく心を痛めた様子で、私を抱きしめて慰めた。
「雫、他人を羨む必要なんてないよ。君はショックで一時的に声が出なくなっているだけだ。きっと今の心療内科医が合っていないんだね。俺がもっといい医者を探してくるから。絶対に治して、また声が出せるようにするからね」
私は無理に口角を上げて笑い、大丈夫よと手話で伝えた。
しかし、心の中は泥水に浸かっているようだった。
三年前、私は偶然ある殺人未遂事件に巻き込まれた。犯人が手を下す直前に司が駆けつけ、私を救い出してくれた。
だが、私の心には深いトラウマが残り、二度と声を発することができなくなった。
この三年間、司は百人以上の心療内科医を私に紹介してくれたが、誰も私を治すことはできなかった。
もう希望を持つのをやめようとしていた矢先、私は彼と友人の瀬戸拓海(せと たくみ)との会話を偶然耳にしてしまったのだ。
拓海は面白がるように笑って言った。
「司、お前もなかなかの役者だな!三年も経つのに、水瀬雫(みなせ しずく)はあの殺人未遂事件がお前の仕組んだ芝居だってことにまだ気づいてないのか。
しかも、自分が声を失ったのは、お前が雫の声帯を摘出させて莉愛に移したからだってことにも気づいてない。国内トップクラスの法律事務所の元エリート弁護士だって知らなかったら、ただの馬鹿だと思うところだぜ」
これを聞いて司は冷たい表情になった。
「これ以上雫のことをそんな風に言うなら、お前とは二度と会わない」
拓海が折れて謝罪すると、彼は少し表情を和らげた。
「雫の声帯を莉愛に移植したのは、彼女が以前放火という過ちを犯したからだ。だが、それでも俺が彼女を愛していることに変わりはない。彼女はすでに罰を受けたんだ。もう二度と弁護士になれなくても、俺が一生養っていくよ」
* * *
西園寺司(さいおんじ つかさ)の義妹である西園寺莉愛(さいおんじ りあ)が最優秀音楽賞を受賞し、トップシンガーになったというニュースを、私は七十三回も繰り返し見ていた。
それを側で見ていた司はひどく心を痛めた様子で、私を抱きしめて慰めた。
「雫、他人を羨む必要なんてないよ。君はショックで一時的に声が出なくなっているだけだ。きっと今の心療内科医が合っていないんだね。俺がもっといい医者を探してくるから。絶対に治して、また声が出せるようにするからね」
私は無理に口角を上げて笑い、大丈夫よと手話で伝えた。
しかし、心の中は泥水に浸かっているようだった。
三年前、私は偶然ある殺人未遂事件に巻き込まれた。犯人が手を下す直前に司が駆けつけ、私を救い出してくれた。
だが、私の心には深いトラウマが残り、二度と声を発することができなくなった。
この三年間、司は百人以上の心療内科医を私に紹介してくれたが、誰も私を治すことはできなかった。
もう希望を持つのをやめようとしていた矢先、私は彼と友人の瀬戸拓海(せと たくみ)との会話を偶然耳にしてしまったのだ。
拓海は面白がるように笑って言った。
「司、お前もなかなかの役者だな!三年も経つのに、水瀬雫(みなせ しずく)はあの殺人未遂事件がお前の仕組んだ芝居だってことにまだ気づいてないのか。
しかも、自分が声を失ったのは、お前が雫の声帯を摘出させて莉愛に移したからだってことにも気づいてない。国内トップクラスの法律事務所の元エリート弁護士だって知らなかったら、ただの馬鹿だと思うところだぜ」
これを聞いて司は冷たい表情になった。
「これ以上雫のことをそんな風に言うなら、お前とは二度と会わない」
拓海が折れて謝罪すると、彼は少し表情を和らげた。
「雫の声帯を莉愛に移植したのは、彼女が以前放火という過ちを犯したからだ。だが、それでも俺が彼女を愛していることに変わりはない。彼女はすでに罰を受けたんだ。もう二度と弁護士になれなくても、俺が一生養っていくよ」
……
書斎から漏れ聞こえてくる一言一言が、錆びた釘のように私の心臓に深く突き刺さった。
三年間、司が心療内科医を探して治療に付き添ってくれたのは、ただの芝居だったのだ。
彼は自ら人を雇って私の声帯を摘出させた。私が二度と声を出せないと知っていながら、それでも私を騙し、希望を与え続けていた。
息ができないほど心が痛んだが、私は瞬時にスマホを取り出し、録音を開始した。
書斎での会話はまだ続いている。
拓海がからかうように言った。
「雫を一生養うなんて、俺の前だけで言っておけよ。絶対に莉愛には知られるな。あの狂った妹がまた自殺騒ぎを起こすんじゃないかとヒヤヒヤするぜ。
でも、それについてだけど、あの件は本当に決めたのか?莉愛をどうにかするのは、そう簡単じゃないぞ」
司は落ち着いた口調で答えた。
「ああ、会場の準備はすでに進めている。その時が来たら莉愛を遠ざける。四回目の自殺のチャンスは与えないさ」
会場とは何のことか分からなかったが、私は無意識に莉愛の過去三回の自殺未遂を思い出した。
私が国内トップクラスの法律事務所の正式な弁護士になったばかりの年、長谷川弁護士に同行してM&A案件の協議会に参加した際、金融界で名を馳せる西園寺司に初めて出会った。
当時の彼は、仕立ての良いスーツを身に纏い、ネクタイを隙なく締め、大人びた冷徹な雰囲気を漂わせていた。
彼が書類に目を落とす横顔のラインはシャープで、私の視線に気づくと、顔を上げて少しだけ口角を上げた。
その瞬間、私は心臓が激しく跳ね上がるのを感じた。
私の様子がおかしいことに気づいた長谷川弁護士は、休憩時間に声を潜めて忠告してくれた。
「水瀬、西園寺司には深入りするな。彼には義理の妹がいるんだが、業界でも有名なトラブルメーカーでね。司に何度も告白して玉砕し、この前はついに手首を切ったらしい。あの兄妹の間に巻き込まれたら、無傷じゃ済まないぞ」
それが、莉愛の自殺について聞いた最初の出来事だった。
私は素直に頷き、芽生えかけた恋心を心の奥底に封じ込めた。
しかし、司の方からアプローチしてくるとは予想もしていなかった。
私が残業してM&Aの書類を整理していると、彼は静かに付き添ってくれた。
週末には偶然の出会いを装って、私がずっと行きたかった高級フレンチの店に誘ってくれた。
地方出張の際に突然の豪雨に見舞われた時も、突如として車で私の前に現れた。
司の優しいアプローチの前に、私は長谷川弁護士の忠告を次第に忘れ、どうしようもなく恋に落ちていった。
交際を決めた日、司は私にサプライズを用意していると言った。
私は彼から贈られたバラの花束を抱え、レストランの個室で彼を待った。午後七時から十時まで待ち続けたが、かかってきたのは彼のアシスタントからの電話だった。
「水瀬先生、莉愛様が薬を飲んで自殺を図りました。社長は現在病院におり、手が離せません」
それが、莉愛の二回目の自殺だった。
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