四つ子の母になる私の決断第2話
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「亮さん、あの女のガキ、産ませるのか?」
「産ませねえわけあるかよ。十か月も苦しめといて、産んだガキが俺たちの子だと知ったときの顔、見たくねえか」
「しかも離婚のネタになるぜ。一銭もやらずに追い出せる」
亮は眉をひそめ、冷たく言い放った。
「子どもはタイミングを見ておろさせる。この話はもうするな」
仲間たちは顔を見合わせた。誰かが口を開いた。
「亮さん、まさか今さらあの女に未練が……」
亮の目が一瞬揺れた。薄い唇は一文字に結ばれていた。
清美はその様子をうかがい、うつむきながら、そっと笑みを浮かべた。
「私も亮さんと同じ考えです。咲夜さんは私にあんなことをしましたけど、きっと亮さんのことを愛しすぎてのことだと思います。
仕返しは十分していただきましたから。これで終わりにしませんか?
このままじゃ咲夜さんも私と同じ目に遭います」
亮はその言葉を聞いた瞬間、顔に一気に氷が張りついた。
すべての感情が消え去り、ただ冷たいだけの表情が残った。
「咲夜が君にしたことは、十倍にして返させてもらう」
心臓が鈍い刃物で削られていて、血が止めどなく流れ出るほどの痛みを感じる。
私は無表情で携帯を取り出し、電話をかけた。
「あの契約書、執行して」
……
クラブを出ると、私は抜け殻のように車に乗り込んだ。
痛みだけがすべては夢ではないと告げていた。
あの三日間のことを思い出した。
カーテンは閉め切られ、昼も夜もわからなかった。
ぼんやりとした意識の中で、彼の顔さえもはっきり見えなかった。
今思えば、最初から仕組まれていたのだろう。
なのに私は妊娠を手放しで喜び、亮に伝えに来た。
しばらくして、手の甲で涙を拭い、三日後の中絶手術を予約した。
亮、望み通りにしてやる。
家に着いたときには、私は疲れ果てていた。
顔を上げると、リビングのソファに亮が座っていた。
以前なら、彼が私を待っていてくれたのだと思い、胸がいっぱいになって飛びついていただろう。
けれど今は、ただ自嘲気味に唇の端を上げるだけだった。
亮は私を見ると、立ち上がって歩み寄ってきた。
「病院に行ってたんだろ?なんでこんなに遅くなったんだ」
顔には微塵の動揺もなかった。
一瞬、あの言葉が彼の口から出たとは思えないほどだった。
我に返り、私はうつむいて適当な嘘をついた。
「検査のあと、ちょっと買い物を」
亮はそれ以上聞かず、私の手を取ってダイニングへ導いた。
「冷める前に食べて。全部君の好物だよ」
テーブルに並んだ料理は、ほとんどシーフードだった。
私はシーフードが苦手だ。アレルギーもある。
シーフードが好きなのは清美だ。
私の好みどころか、アレルゲンさえ覚えていない。
あるいは、知っていて気にしていないのか?
胸に細かな痛みが走った。
私は息を吸い込み、席に着いた。
数少ないシーフード以外のものをなんとか口に運び、砂を噛むような気分で食事を終えた。
「明日は清美の誕生日だ。仕事が終わったら迎えに行く」
亮は口元を拭いながら、何気ないふうに言った。
私は一瞬驚き、反射的に断った。
「私は行かない」
亮の顔が瞬時に冷たくなるのがわかった。
すぐに隠したものの、口調には苛立ちが滲んでいた。
「あの子はあんな目に遭っても君を責めず、誕生日に俺たちを呼んでくれたんだ。
それなのに水を差すつもりか?」
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