四つ子の母になる私の決断第3話
この話は約1410字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
「いい子にしてろ。明日迎えに行く」
有無を言わせず、亮は立ち去った。
翌日、私は亮に連れられ、清美の誕生日パーティーへ向かった。
ホテルの宴会場で、派手さはないがそれなりの人数が集まっていた。
亮の仲間たちも全員揃っていた。
私が姿を見せると、彼らの視線は一斉に私の下腹部へと向かい、口元に意味深な笑みが浮かんだ。
私は拳を握りしめ、爪が掌に食い込むほど力を込め、平静を装った。
清美の友人らしき女性たちの視線には、露骨な嫌悪が滲んでいた。
「よくもこんな場所に顔を出せたわね。あんな悪女、地獄に落ちればいいのに」
「本当に不愉快だわ。警備に追い出してもらいましょう」
清美は慌てて彼女たちの袖を引き、小声で制した。
そして私たちのもとへ駆け寄り、震える声で言った。
「平野社長、奥様、お忙しい中お越しくださりありがとうございます。
社長、こんなに素敵な会場を手配してくださって、心より感謝いたします」
隣の亮にちらっと視線をやった。
なるほど。これは彼が清美のために用意したものなのか。
心の底から冷たい水が満ちてきて、痛みさえ麻痺していた。
唇の端を無理やり上げ、手にしたプレゼントを差し出した。
「お誕生日、おめでとう」
清美はまるで怯えた小動物のように、両手で受け取った。
「ありがとうございます」
ほどなくして宴が始まった。
後方の大型スクリーンには、清美への祝福メッセージが次々と映し出された。
その中に亮の姿もあった。
彼はカメラを真っすぐに見つめ、私が見たこともない優しい笑みを浮かべていた。
「清美、お誕生日おめでとう」
次の瞬間、映像が乱れ、画面が切り替わった。
そこには清美が辱められた際に撮られた、あられもない写真が映し出されていた。
清美の顔からさっと血の気が引いた。よろめき、数歩ふらついたかと思うと、その場に崩れ落ちた。
亮の表情が凍りついた。即座に清美を抱き起こし、足早に会場を去った。
私はその場に立ち尽くした。
次の瞬間、顔面を強く殴られ、床に叩きつけられた。
「この女……よくもまた清美を傷つけたな!」
額がテーブルの角にぶつかり、生暖かい液体が目の縁を伝った。
視界が血の色に滲み、ぼやけていった。
痛みをこらえ、かすれた声で言った。
「違う……私じゃない」
誰も耳を貸さなかった。
「この女の服を剥いで!同じ目に遭わせてやる」
パニックに陥り、私は亮を探した。
しかし彼はすでに姿を消し、ドアの閉まる音だけが残っていた。
心の奥で、何かが静かに崩れ落ちた。
私は血と涙を流しながら、必死に抵抗した。
「やめて…… お願い、やめてください」
人々の中から、ためらいがちな声が上がった。
「待って。平野社長の奥様だし、叱るだけでいいんじゃ……」
その言葉で、周囲の手が一瞬止まった。
「でも、そう簡単に許すわけにはいかないわ。
パーティーを台無しにしたんだから、床の料理を全部食べさせろ」
彼女たちは私を押さえつけ、冷たく脂っこいスープに顔を押し込んだ。
血の味と混ざった汁を、喉の奥まで無理やり流し込まれた。
「あはは!見て、犬みたい。本当に底なしに卑しい」
嘲笑とともに、さらに強く蹴りつけられた。
痛みで体が丸まり、意識が途切れた。
やがて完全に闇に飲み込まれた。
目を覚ましたのは病院のベッドだった。
全身の傷は手当てされ、包帯が巻かれていた。
反射的にお腹に手を当てると、そばの看護師が静かに語った。
「ご安心ください。赤ちゃんは無事です」
しかし私は、その言葉に少しの喜びも感じなかった。
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