四つ子の母になる私の決断第1話
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99階の高層マンション、ある真っ暗な部屋で。夫・平野亮(ひらの りょう)は私を抱き寄せ、飽きることなく唇を重ねてきた。
それから二か月後、私は妊娠した。しかも、四つ子だった。
検査報告書を握りしめ、胸の高鳴りを抑えながら、この知らせを夫に伝えようと家路を急いだ。
ところが……
思いがけず、彼が悪友たちと交わしている会話を耳にしてしまったのだ。
* * *
99階の高層マンション、ある真っ暗な部屋で。夫・平野亮(ひらの りょう)は私を抱き寄せ、飽きることなく唇を重ねてきた。
三日間、彼は疲れを知らないかのように、私が泣きながら「やめて」と頼んでも、決してその手を緩めようとはしなかった。
それから二か月後、私が妊娠したのが判明した。しかも、四つ子だった。
検査報告書を握りしめ、胸の高鳴りを抑えながら、この知らせを夫に伝えようと家路を急いだ。
ところが……
思いがけず、彼が悪友たちと交わしている会話を耳にしてしまったのだ。
「亮さん、その手はすげえよ。
あの女に俺たちのガキ孕ませるなんてな。
そうすりゃあいつ、亮さんに悪いって思って、これからは何でも言うこと聞くようになるだろ」
「そうそう。そうなりゃ、もう清美ちゃんにちょっかい出せねえしな」
「そろそろいい頃合いだろ。あいつ、できたか?」
ざわついた室内で、亮の声が静かに響いた。
「さっき病院から連絡があった。咲夜(さくや)が妊娠した。四つ子だ」
個室は一瞬でどよめきに包まれた。
「マジかよ、四つ子!?やっぱ俺、つええな」
「はいはい、俺の子に決まってんだろ。勝手にパパ面すんな」
「バカ言え。一番に出したのは俺だろ。当然、俺の子だ」
「まあまあ、争うなって。ここはひとつ、賭けにしようぜ」
「いいぜ。俺の子に一億!」
「俺も一億。もちろん、俺の子だ」
何人かが賭け金を宣言したあと、ふと誰かが別の可能性に気づいた。
「でもよ……あいつ、四人産むんだろ。一人ずつ父親が違うってこともなくね?」
「じゃあ、一人だけハズレか」
一瞬の沈黙のあと、どっと笑い声が響いた。
私は入り口に立ち尽くしていた。
背筋に冷たいものが這い上がる。
手元の報告書を見下ろすうち、血の気がすっと引いていった。
……どういうこと?
お腹の子は、亮の子じゃないというの?
あの三日間、部屋も真っ暗で、頭もぼんやりとしていた。私を抱いていたのが誰なのか、判別することなど到底できなかった。まさか……
そのとき、ためらいがちな女の声が聞こえた。
「でも……咲夜さんが知ったら、可哀想じゃないですか?」
声の主はすぐにわかった。
亮が学費を支援している女子大生、林原清美(はやしばら きよみ)だ。
亮の仲間たちが口を開いた。
「清美ちゃん、優しすぎるんだよ。
咲夜があれだけひどいことをしたのに、まだ同情するのか?こうなったのも自業自得だろ。
あいつ、清美ちゃんを無理やり海外に送ろうとしただけじゃねえ。その後の仕打ちも……
辱めるつもりがなきゃ、裸で立たれても見向きもしねえよ」
「そういう悪質な女に同情の余地はないよな。亮さんもそう思うだろ?」
私はその場に釘付けになっていた。
確かに私は、清美に頼まれたことがある。それで、留学資金として、まとまったお金を渡した後、知人を頼って彼女を海外へ送り出した。
ただ、それだけだ。
その後、彼女が路地裏で襲われ、全身傷だらけで救出されるとは思ってもみなかった。
誰もが私の仕業だと言った。
嫉妬して追い出し、辱めようとしたのだと。
何度説明しても、誰も信じてくれなかった。
ただ一人、亮だけが違った。
「君のせいじゃない。あれは不幸な出来事だった」
その言葉に、かすかな希望が灯った。
個室が一瞬、静まり返った。
そして、亮の声が氷のように冷たく響いた。
「こんなものは、あいつがやったことに比べればまだ生温い。
ああいう悪辣な女には、これが当然の報いだ」
希望が粉々に砕けた。
私はよろめき、後ずさった。
その場から離れたいのに、足がすくんで一歩も動けなかった。
唇を噛みしめながら、涙が次々と溢れ、頬を伝った。
そうだったんだ。
あの人が言った「信じてる」というのは全部、嘘だった。
信じていると言ったが、裏ではこんなやり方で私に復讐し、清美の恨みを晴らしていたんだ。
噛みすぎた唇から血の味が広がる。
心臓を大きな手で握り潰されるようだった。
個室の中では、まだ話し声が続いていた。
亮の仲間が口を開いた。
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