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四つ子の母になる私の決断第1話

この話は約1772字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

99階の高層マンション、ある真っ暗な部屋で。夫・平野亮(ひらの りょう)は私を抱き寄せ、飽きることなく唇を重ねてきた。

それから二か月後、私は妊娠した。しかも、四つ子だった。

検査報告書を握りしめ、胸の高鳴りを抑えながら、この知らせを夫に伝えようと家路を急いだ。

ところが……

思いがけず、彼が悪友たちと交わしている会話を耳にしてしまったのだ。

* * *

99階の高層マンション、ある真っ暗な部屋で。夫・平野亮(ひらの りょう)は私を抱き寄せ、飽きることなく唇を重ねてきた。

三日間、彼は疲れを知らないかのように、私が泣きながら「やめて」と頼んでも、決してその手を緩めようとはしなかった。

それから二か月後、私が妊娠したのが判明した。しかも、四つ子だった。

検査報告書を握りしめ、胸の高鳴りを抑えながら、この知らせを夫に伝えようと家路を急いだ。

ところが……

思いがけず、彼が悪友たちと交わしている会話を耳にしてしまったのだ。

「亮さん、その手はすげえよ。

あの女に俺たちのガキ孕ませるなんてな。

そうすりゃあいつ、亮さんに悪いって思って、これからは何でも言うこと聞くようになるだろ」

「そうそう。そうなりゃ、もう清美ちゃんにちょっかい出せねえしな」

「そろそろいい頃合いだろ。あいつ、できたか?」

ざわついた室内で、亮の声が静かに響いた。

「さっき病院から連絡があった。咲夜(さくや)が妊娠した。四つ子だ」

個室は一瞬でどよめきに包まれた。

「マジかよ、四つ子!?やっぱ俺、つええな」

「はいはい、俺の子に決まってんだろ。勝手にパパ面すんな」

「バカ言え。一番に出したのは俺だろ。当然、俺の子だ」

「まあまあ、争うなって。ここはひとつ、賭けにしようぜ」

「いいぜ。俺の子に一億!」

「俺も一億。もちろん、俺の子だ」

何人かが賭け金を宣言したあと、ふと誰かが別の可能性に気づいた。

「でもよ……あいつ、四人産むんだろ。一人ずつ父親が違うってこともなくね?」

「じゃあ、一人だけハズレか」

一瞬の沈黙のあと、どっと笑い声が響いた。

私は入り口に立ち尽くしていた。

背筋に冷たいものが這い上がる。

手元の報告書を見下ろすうち、血の気がすっと引いていった。

……どういうこと?

お腹の子は、亮の子じゃないというの?

あの三日間、部屋も真っ暗で、頭もぼんやりとしていた。私を抱いていたのが誰なのか、判別することなど到底できなかった。まさか……

そのとき、ためらいがちな女の声が聞こえた。

「でも……咲夜さんが知ったら、可哀想じゃないですか?」

声の主はすぐにわかった。

亮が学費を支援している女子大生、林原清美(はやしばら きよみ)だ。

亮の仲間たちが口を開いた。

「清美ちゃん、優しすぎるんだよ。

咲夜があれだけひどいことをしたのに、まだ同情するのか?こうなったのも自業自得だろ。

あいつ、清美ちゃんを無理やり海外に送ろうとしただけじゃねえ。その後の仕打ちも……

辱めるつもりがなきゃ、裸で立たれても見向きもしねえよ」

「そういう悪質な女に同情の余地はないよな。亮さんもそう思うだろ?」

私はその場に釘付けになっていた。

確かに私は、清美に頼まれたことがある。それで、留学資金として、まとまったお金を渡した後、知人を頼って彼女を海外へ送り出した。

ただ、それだけだ。

その後、彼女が路地裏で襲われ、全身傷だらけで救出されるとは思ってもみなかった。

誰もが私の仕業だと言った。

嫉妬して追い出し、辱めようとしたのだと。

何度説明しても、誰も信じてくれなかった。

ただ一人、亮だけが違った。

「君のせいじゃない。あれは不幸な出来事だった」

その言葉に、かすかな希望が灯った。

個室が一瞬、静まり返った。

そして、亮の声が氷のように冷たく響いた。

「こんなものは、あいつがやったことに比べればまだ生温い。

ああいう悪辣な女には、これが当然の報いだ」

希望が粉々に砕けた。

私はよろめき、後ずさった。

その場から離れたいのに、足がすくんで一歩も動けなかった。

唇を噛みしめながら、涙が次々と溢れ、頬を伝った。

そうだったんだ。

あの人が言った「信じてる」というのは全部、嘘だった。

信じていると言ったが、裏ではこんなやり方で私に復讐し、清美の恨みを晴らしていたんだ。

噛みすぎた唇から血の味が広がる。

心臓を大きな手で握り潰されるようだった。

個室の中では、まだ話し声が続いていた。

亮の仲間が口を開いた。

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