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咲き尽くした桔梗に春は訪れず第2話

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凌也は帰ってきて、手には花束を抱えている。

彼は私の方へ歩み寄り、少しのやましさも謝罪の色も見せずに言った。「明里(あかり)、君の一番好きなトルコキキョウを持ってきたよ」

忠実で唯一の愛を意味するトルコキキョウ。今、凌也の手に抱えられているそれは、まるで笑い話のようだった。

私はその花束を受け取った。凌也は、私の怒りが収まったと思ったのか、ようやく説明を始めた。「遥香が骨肉腫になってしまってね、唯一の願いが俺と結婚することなんだ。俺たち、幼い頃から一緒に育ってきたし、その願いを無下にはできないよ。だから三日後、彼女と婚約するんだ。

明里はいつも優しい人だから、きっとわかってくれるだろ?」

その口調は説明というより、通告だった。三日後、鐘井遥香(かねいはるか)と婚約、ということか。

それなら奇遇だ。三日後は私が去るつもりの日でもあった。

私は静かにうなずいた。

これまで凌也は、私のお嬢様気質を一番嫌っていた。些細なことで彼の元へ行き、「愛してる?」と何度も何度も問い詰めることが、彼は大嫌いだった。

その後、私は少しずつ改め、我慢することも覚えた。

今、私は騒ぎもせず、問い詰めることもない。凌也は意外そうに私を一瞥した。

「明日から遥香と一緒に暮らすことになる。これから数か月は、君には一人で我慢してもらうことになるね。

遥香は病気だ。君よりも、今は彼女の方が俺を必要としているんだ」

私は笑って花を置いた。反対しない私を見て、凌也は私の顔に触れようと身を寄せてきた。

私はさりげなく身を引いた。彼のシャツの襟にはくっきりと口紅の跡がつき、甘ったるい香水の匂いが鼻を突き、私は思わず吐き気がこみ上げた。

拒まれた凌也は、苛立ちを覚えたようだが、何も言わず足早にここを出ていった。

私は花もケーキもゴミ箱に投げ捨て、それから自分の荷物をまとめた。

花はいらないし、凌也もいらない。六年間暮らしたこの家にも、もう未練はない。

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