咲き尽くした桔梗に春は訪れず第1話
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誕生日の当日、六年間付き合っていた彼氏は、彼の初恋の相手にプロポーズした。恋が過ぎ去り、私は冷静に身を引き、その関係から離れることを選んだ。そして、家が決めてくれた政略結婚を受け入れることにした。
* * *
恋愛六年目、私は彼氏の篠原凌也(しのはらりょうや)のコートのポケットの中で、婚約指輪が入った小箱を見つけた。
誕生日当日、期待に胸を膨らませていたのに、凌也が別の女性と高級レストランに出入りしている写真をSNSで見てしまった。
私は急いでタクシーに乗り、そのレストランへ向かい、目の前で凌也が片膝をついて他の女性にプロポーズする様子を目撃した。周囲の人たちは、二人の結婚を促した。
失望が募る中、私はこれまでのように大騒ぎはせず、ただ静かに父親に電話をかけた。
「お父さん、森田(もりた)家との縁談を受けることにした。もう結婚の準備を進めていいよ」
私の言葉を聞いた父親は一瞬驚いたが、すぐに喜びの声をあげた。
「いい子だ。結婚はやっぱり釣り合いが大事だ。外の貧乏男は味見するくらいでいいけど、一生そのままじゃ食えないからな!」
私は小さく「うん」と返事をした。レストランのロビーに一人立ち尽くした私は、凌也とあの女性が皆の歓声の中で抱き合うのを見つめた。
周りはみんな二人を祝福し、私はまるで体の動かない木偶のようにそこに立っていた。
父親もこちらの騒ぎに気づき、催促した。「じゃあいつ家に帰るんだ?森田家の御曹司に会わなきゃ。あっちももう婚約を急かしているぞ」
「三日後に。こっちのことが全部片付いたらすぐ帰るね」
電話を切った後、周囲の歓声や熱気から私が浮いているせいか、凌也は震える手であの女性の指に指輪をはめ、立ち上がったところで私と目が合った。
私たちは人混みを隔てて見つめ合った。凌也は私の存在に少し驚いたように眉をひそめ、あの女性の手を引いて席に戻った。
薔薇、シャンパン、甘美なピアノの愛の調べ、それとロマンチックなキャンドルディナー……六年間彼と一緒にいても、私たちはこんな場所で食事をしたことはなかった。
私は振り返り、その場を去った。凌也の友人たちもそこにいて、写真はそのうちの一人のSNSで見つけたものだった。
帰るとき、彼らが口笛を吹きながら拍手しているのが聞こえた。「やっぱり似合う二人だ、長年の想いがついに実ったな!」
「さあさあ、みんな乾杯だ!この二人の幸せを祝おう!」
私は心の中で苦笑いした。六年も凌也のそばにいたのに、彼の友人たちは私たちの関係を知らなかった。それなのに、彼らは凌也とあの女性の仲は知っていた。
酸っぱさが胸にこみあげてきた。
今日は私の誕生日だ。最初に凌也のコートのポケットで指輪を見つけた時の甘さは、今はすべて毒になった。
タクシーで帰宅すると、玄関に配達された誕生日ケーキがあった。箱の外に貼られたカードには凌也の字で、「ハニー、誕生日おめでとう。すべてうまくいきますように」と書かれていた。
配達員の男性が私に羨ましそうに微笑んだ。「お嬢さん、彼氏さんは本当に優しいですね。当店で一番高いケーキを注文して、しかも手書きのカードまで添えているぞ!」
私はドアを開け、ケーキをテーブルに無造作に置いた。そうか、凌也は今日が私の誕生日だと覚えていた。それなのに今日、彼はあんなことをした。
私は力なくソファに倒れ込み、誰もいない部屋を見つめ、知らず知らずに目が潤んでいた。
部屋のあちこちには二人の生活の痕跡が残っているのに、凌也は婚約指輪を買いながら、他の女性にプロポーズした。
今、そのケーキを見ていると、吐き気すら覚えた。
ソファに座ったまま時間を忘れていると、突然、部屋のドアが開いた。
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