告白してきた彼は人違いだった第2話
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ふたりはステージを降りるなり、さっきのゲームの話で盛り上がりだした。
誰も私を見ないし、私がどんな気持ちでいるかなんて誰も考えていない。
「昨日が何の日か、ふたりともわかる?」
私が問いかけると、ふたりは一瞬固まって顔を見合わせ、まったく同じ表情で首をかしげた。
花連は首を傾けてしばらく考え込んだが、結局わからないまま「何の日だっけ?」と呟く。
直人も眉をひそめて私を見たが何も言わず、その目に浮かんだ戸惑いがすべてを物語っていた。
私はうつむき、唇の端をわずかに持ち上げる。
可笑しいわけじゃない。ただ、自分が少し哀れに思えただけだ。
花連は昔、田舎の祖父母に預けられて育った子だった。祖母は男の子ばかり可愛がり、彼女にはよく手を上げていたらしい。
だから私は彼女を家に呼び、一緒に暮らすようになった。周りからは、うちの母には娘がふたりいるみたいだとよく言われたものだ。
私たちの誕生日は1日違いで、毎年この時期になると母がケーキを買ってきてくれた。
ケーキに私の分と花連の分のろうそくを1本ずつ立てて、ふたりで一緒に願い事をしたものだ。
あの頃、私たちは「これからも毎年一緒に祝おう、絶対に置いていかない」と約束していた。でも、私が直人と付き合うようになってから、少しずつすべてが変わっていった。
花連は私の誕生日を忘れるようになり、口にすることさえほとんどなくなった。なのに直人は花連の誕生日だけは正確に覚えていて、私に「そろそろプレゼント用意しないと」と言ってくる。
いつだったか、私は彼に自分の誕生日は花連の前日なのだと伝えたことがある。
あの年だけは私の誕生日を一緒に過ごしてくれたが、それきりだった。
翌年以降、そんな日は二度と来なかったのだ。
私はティッシュを1枚取って口元を拭い、お手洗いに行くと告げた。これ以上そこにいたら、泣いてしまいそうだったから。
まだそう遠くまで行かないうちに、背後から花連の焦った声が聞こえてきた。
「まずい、昨日って未羽の誕生日だったよね。すっかり忘れてた。絶対怒ってるよ」
直人は一瞬黙り込んでから、気のない声で答える。
「あー。あいつは聞き分けがいいから、あとで俺がなだめとくよ」
「でも、あなたは私と誕生日過ごしたのに、未羽とは過ごしてないじゃない」
「そもそも俺が最初に告白しようとしてたのはお前だったんだよ。友達が人違いをしたせいでさ。未羽はお前の親友だから、傷つけたくなくてずっと引き延ばしてただけだ」
「もういいよ。済んだことでしょ。今だって、うまくいってるじゃない」
「邪魔してたのはあいつだろ。あいつがいなければ、とっくに俺たちが付き合ってたはずなんだ。いつになったらお前は、俺があいつにちゃんと別れ話を切り出すのを許してくれるんだよ?」
「でも、未羽が傷つく……私、未羽を傷つけたくないの」
「じゃあお前は?どうしていつもそうやって、自分を犠牲にしてまで優しくするんだ?」
世界がぐるぐる回って、もう何も聞こえなくなった。
あの親密そうで耳障りな会話が、頭の中で何度も何度も繰り返される。
一緒に過ごしてきた3年間はすべて偽物で、私はただ、ふたりの間に無理やり割り込んでいただけの存在だったのだ。
なんて滑稽だ。笑えるほどに。
彼がどこか上の空だったことも、目を逸らす仕草も、全部心の中に別の人がいたからだった。
私は道化そのものだった。ふたりが3年かけて演じてきた芝居の中で、真剣にヒロイン役を務めていただけだった。
母からの電話で、ぼんやりしていた意識が急に現実に引き戻された。
「未羽、昨日連絡返してくれなかったから、どうせまた直人と誕生日過ごしてはしゃいでるんだろうなって思ってたのよ。
そうそう、今日って花連の誕生日でしょ。お母さんの代わりにおめでとうって伝えといてね、どんどん綺麗になってね、って」
私は母の言葉を遮り、「ねえ、お母さん。前に話してた海外留学の話、あれ、受けることにした」と告げた。
電話の向こうが一瞬沈黙した。
「直人と離れたくないからって、そのチャンスを花連に譲るって言ってなかった?」
「彼女のものは彼女に返す。私のものは、私が取り戻すことにしたの」
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