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告白してきた彼は人違いだった第1話

この話は約2082字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

3軒も店舗を回って何度も注文をやり直し、ようやく引き当てたノベルティの限定コラボの缶バッジ。

全5キャラのうち、残るはこれひとつ。これでようやくコンプリートできるはずだった。

なのに、封を開けた瞬間、私の彼氏である多比良直人(たひら なおと)は、有無を言わせずそれをひったくり、隣の夏井花連(かくだ かれん)にあっさりと手渡した。それだけでなく、彼は彼女の手を取ると、ブレスレットを1本、その手首にはめてやった。

「誕生日、おめでとう」

その光景に、私、藍沢未羽(あいざわ みう)は、胸の奥がきゅっと締めつけられた。彼の手首にもお揃いのブレスレットが光っていたからだ。

私が贈った方は、とっくにどこかへ行ってしまったらしい。

花連は笑いながら彼の胸に飛び込み、「やだ、うちの親友の彼氏、出来すぎでしょ」とはしゃぐ。

直人は私の頭をこつんと叩いた。

「親友の誕生日も忘れるなんて、お前らしいよ。これは、お前からのプレゼントってことにしとけ。お前、ほんと抜けてるよな。次は忘れるなよ」

あまりに自然で、悪びれる様子もない口ぶりだった。彼は完全に忘れているのだ。私の誕生日が、親友の誕生日の前日だということを。

あんなに欲しかった限定コラボの缶バッジが、テーブルの上に無造作に転がっているのを見つめる。鞄にしのばせていた花連への誕生日プレゼントも、もう取り出す気にはなれなかった。

* * *

店員がテーブルにやってきて、「本日のカップル企画、おふたりでご参加になりますか?」と尋ねた。店員の目は、寄り添って座る直人と花連にしか向いておらず、愛想よく声を弾ませている。

勘違いされても仕方ないだろう。ふたりは肩がふれ合うほど近くに座っていて、私だけが向かいの席にひとり、まるで相席の他人のように座っているのだから。

「前回もおふたり、息ぴったりでしたよね。うちのアロマギフトをお持ち帰りになりましたし。

今日はもっと豪華な景品ですよ!」

手の中のフォークが皿に当たり、コトンと音を立てた。

あのとき彼が「会社の抽選で当たった」と持ち帰ったアロマは、このふたりが一緒にカップルゲームに参加して勝ち取ったものだったのか。

私が誘うたび、彼はいつも忙しいと言っていた。

仕事が立て込んでいる、クライアントの相手をしなくちゃいけないと、週末でさえ30分の食事の時間すら作れないと言っていたくせに。

やっと重い腰を上げてくれたと思ったのに、席に着いてみれば、花連はとっくに隣で待っていたのだ。

ふたりとも、私の様子がおかしいことにはまるで気づいていない。顔を見合わせたあと、花連はもう笑顔で直人の腕に絡みつき、ステージに上がる支度をしていた。

照明が点く直前になって、彼女はふと振り返り、申し訳なさそうに甘えた声を出す。

「あ、未羽もいるんだったね。忘れてた。やっぱり未羽たちが出た方がよくない?」

口では譲るようなことを言いながらも、直人の腕に絡めた手は少しも緩めようとしない。

「いいわねえ、あのふたり。お似合い」

「ほら、早く行きなよ!」

周りのテーブルから囃す声が上がり、グラスの触れ合う音に周囲の笑い声が混じる。店中の視線が、固く絡み合ったふたつの手に集まっていた。

私はグラスを握る指に思わず力が入ったまま、口元をわずかに引きつらせた。

「いいよ、ふたりで楽しんできて」

直人もさすがに私の様子がおかしいことに気づいたらしいが、振り返っただけで、花連とつないだ手を離そうとはしなかった。

「機嫌悪くするなよ。今日、花連の誕生日なんだから」

ステージはフロアより半段ほど高く、上がるには段を1段上らなくてはならない。

花連は細いピンヒールのまま急いだせいで足元を狂わせ、体が大きく前のめりに傾いた。

離れた席からでも小さな悲鳴が聞こえた。

すると、ほとんど反射的に直人が彼女の腰を抱き寄せる。もう片方の手で肘をしっかり支え、自分の方へ引き寄せて「危ないよ」と囁くその口調は、まるで何百回も口にしてきたかのように自然だった。

あたたかな黄色のステージライトがふたりを照らし出す。美男美女で、嫌になるほどお似合いのカップルだった。

司会がマイクを手にゲームの開始を告げると、ふたりはティッシュの端をそれぞれ口にくわえ、鼻先が触れそうなほどの距離で向き合った。

1枚ちぎるたび距離が縮まり、吐息が混ざり合う。客席の囃し声が何度も上がるが、ふたりは顔をそむけることも、吹き出すこともなく、自然に、息ぴったりにこなしていく。

最後の1枚をちぎった瞬間、直人は勢いを止めきれず、わずかに前へ傾いた。その拍子に、唇と唇がぶつかった。

周りの歓声が波のように押し寄せ、私の耳に流れ込んできた。私はその真下に座ったまま、ふたりを盛り上げる観客のひとりに成り下がっていた。

ステージを降りるとき、花連の唇はほんのり赤く色づいており、直人は手を伸ばして、当たり前のように彼女の耳元の髪を直してやる。

「おめでとうございます。こちら、おふたりへのカップルギフトセットです」

店主が笑顔で景品を差し出すと、直人は花連の手を取ったままそれを受け取り、最後まで「彼女じゃない」とは訂正しなかった。

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