卒業写真から消された、私の七年の恋第3話
この話は約1276字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
卒業を控えた頃、晴香は汐見市で働くことが決まった。
それに伴い、さまざまなことが具体的に動き始めた。
晴香と智也が知り合ったのは大学に入ってからだった。
二人は同じサークルに所属していた。
性格も合って、交友関係も重なっていた。
智也はずっと、晴香のことは男友達と同じだと言っていた。
最初は私も信じていた。
大学2年のとき、旅行へ出かけたことがあった。
もともとは、私と智也の二人で行く予定だった。
ところが駅に着くと、晴香がキャリーケースを引いて現れた。
そこで初めて智也は、晴香が最近失恋して落ち込んでいるから、ちょうどいい気分転換になると思って誘ったのだと話した。
私は不満だった。けれど、旅行の予定はすでに決まっていた。
結局、3人で行くことになった。
道中、智也はずっと晴香の話し相手をしていた。
歩き疲れた私は、観光地のベンチで休んだ。
二人は少し先まで飲み物を買いに行った。
私があとから追いついたときには、二人ですでに十数枚の写真を撮っていた。
その後、私は智也に尋ねた。
「どうして私たちの写真はないの?」
智也はスマホを取り出し、ホテルに戻ったら撮ろうと言った。
けれど結局、撮らなかった。
大学3年の夏休み。
晴香は初めて、汐見市へインターンに行った。
賃貸契約書に目を通したのは智也だった。
インターンに応募するための履歴書も、智也が直した。
晴香は初めての面接に遅刻した。
智也は本人以上に焦り、寮の前で1時間以上待って、面接で聞かれそうなことを晴香と一緒に整理し直した。
どれも一つずつ見れば、別れるほど深刻なことではなかった。
私が不満を口にするたび、智也にはもっともらしい理由があった。
友達が失恋したのだから、気遣うのは当然だった。
初めて知らない街へ行くのだから、手を貸すのも当然だった。
女性の一人暮らしなら、賃貸契約書は慎重に確認するべきだった。
晴香は面接に不慣れで、智也には経験があった。
どの理由も間違ってはいなかった。
だから毎回、最後には私のほうが物分かりの悪い人間に見えた。
やがて私は、何も聞かなくなった。
すると智也は、かえって私たちの関係が安定してきたと思うようになった。
ある日、一緒に食事をしていると、晴香が汐見市の電車は複雑すぎて、いくら路線図を見ても覚えられないと言った。
翌日、智也は晴香に詳しい路線図を送った。
どの路線で乗り換えるのか。
会社に通いやすい駅や、その周辺で暮らしやすいエリア。
夜遅く帰っても比較的安全なのはどの駅か。
そこまで細かく書き込まれていた。
一人で汐見市へ行くとなれば、事前に考えておくことがこれほどたくさんあるのだと、私もその日初めて知った。
初めて智也と汐見市へ行ったとき、智也が私に送ってきたのはホテルの住所だけだった。
空港に着いたら、自分でタクシーに乗って来るように言われた。
当時は、何とも思わなかった。一人でも行けたからだった。
道に迷うこともなかった。
一人で移動することにも抵抗がなかった。
今になって分かった。
自立しているからといって、そのぶん大切にしてもらえるわけではなかった。
ただ、後回しにしても大丈夫だと思われるだけだった。
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