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初恋は白く、傷痕は紅く第2話

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「千尋、朝だよ」

翌朝、千尋は怜のキスで目を覚ました。彼女が目を開けると、怜はいつものようにベッドサイドのカメラを持ち上げ、横たわる二人を写真に収めた。

怜の笑顔は輝いていて、瞳には星が散りばめられているようだった。「今日は随分寝坊したね。さあ起きて。会社は休みを取ったんだ。千尋に小さなサプライズを用意してあるよ」

千尋はベッドに横たわりながら、怜の首筋に残る薄くなったキスマークをじっと見つめ、素直に頷いた。「うん」

身支度を整えると、千尋は怜に手を引かれて家を出た。玄関を出る前に、怜は彼女を抱き上げ、優しく車まで運んだ。

「目隠ししてね。秘密の場所に行くんだ。きっと気に入ると思うよ」

車は街を抜け、三十分後に静かに停まった。

怜はドアを開け、千尋の手を取り、優しく彼女の頭を守りながら車外へ導いた。

「目隠しを取っていいよ、俺のお姫様」

目隠しを外した瞬間、視界いっぱいに広がる薔薇の花畑が目に飛び込んできた。

「気に入った?」怜は期待に満ちた表情で尋ねた。

「綺麗だね」千尋はただそれだけを答えた。

実際のところ、この場所のことは既に知っていた。数日前、晴美から写真が送られてきたのだ。

『綺麗でしょう?大学時代、怜が私のために作ってくれた秘密の薔薇園なの。ずっと残しておいてくれたのね』

千尋は何も返事をしなかったが、今、晴美の言葉の意味をようやく理解した。

自慢げに語る怜の横顔を見て、千尋はそっと目を閉じた。

怜は千尋の沈黙には気付かず、嬉しそうに続けた。「これからはここが俺たちの秘密基地だよ。子供が生まれたら一緒に来ようね」

そんな未来はもう来ない。

そのとき、怜のスマホが鳴った。画面に映ったのは『最愛』と書かれた名前だった。

怜は千尋の反応を伺い、彼女が平然としているのを確認すると安心したように微笑んだ。「秘書からだ。会社の急用かな、ちょっと待ってて」

「うん」千尋は静かに答え、薔薇の海を眺め続けた。

離れた場所で電話を取った怜の表情は柔らかく、愛おしげだった。風に乗って、途切れ途切れに怜の声が聞こえてくる。

どうやら晴美は悪夢を見ただけで電話をかけてきたらしい。

『ピコン』

千尋のスマホに通知が届いた。彼女はゆっくりと視線を落とし、震える手でスマホを握りしめた。

胸が締め付けられ、まるで地獄へ引きずり込まれるようだった。

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