初恋に溺れた夫、義母に追い出される第2話
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頭の中がぐちゃぐちゃだ。
慎也が不倫した?
その事実に至った瞬間、涙がこぼれ落ちた。
どういう感情なのか自分でもわからず、ただ苦くて辛くて、胸が締め付けられた。
こういうのは初めてではない。十年前に母も同じ目に遭っていた。
当時父は外の女に夢中になっていて、母と離婚したいと騒ぎ立てた。
母が拒否すると、父は勝手に家を出て別の場所で暮らし始めた。
とうとう、家の中は大荒れになってしまった。
母はどうしようもなくなって離婚を受け入れ、私の親権以外何も求めなかった。
父はそれを聞くや否や喜んでいた。
離婚後の十年、私と母は二人で寄り添って生きてきた。
私はやっと結婚して、妊娠して、慎也の家族にも大切にしてもらえて、
自分もようやく幸せになれたと思っていたのに、全部水の泡だ。
慎也のこれまでの優しさは全部嘘だったの?
一日中泣き続け、目はくるみのように腫れ上がった。
帰ってきた慎也にその顔を見られた。
慎也は一瞬固まり、「結衣(ゆい)、どうしたんだ?何かあったのか?」と聞いてきた。
私はテレビを指差し、「悲しいドラマを見てて……主人公が可哀想で、つい泣いちゃったの」と誤魔化した。
慎也はほっと息をつき、近づいてきて、そっと私を抱き寄せた。
「本当に感受性が強いんだから。テレビなんて全部作り話なのに、女性ってこういうの見るの好きだよな。ほら、街角の店のクッキーを買ってきたから、早く手を洗っておいで」
慎也の声も仕草も優しいのに、私の胸は苦しさでいっぱいだった。
あのラインのメッセージを見なければ、慎也のことを疑うこともなかったのに。
慎也が外で他の女とそういうことをしていたと思うと、吐き気で食事も喉を通らない。
慎也は私のつわりが急にひどくなったと思ったらしく、私も適当な理由で誤魔化した。
少なくともあの女が誰なのか突き止めないと。
翌朝、慎也は朝早くに出勤した。
彼が家を出たあと、私は急いで身支度を済ませて会社の近くまで後をつけた。
妊娠してから、慎也の勧めで私は仕事を辞めた。
慎也が「俺の稼ぎで十分だから、結衣が外で嫌な思いをする必要はない」と言ってくれたのだ。
だから今の私には時間がたっぷりある。
何日か観察したが、慎也は会社と家の往復のみで規則正しく、怪しい行動はなかった。
誰が見ても理想の夫だった。
一週間後、慎也が「今日は遅くまで残業だ」と言った夜までは。
私は慎也が車でホテルに向かうのを見てしまった。
ホテルの近くで延々と待ち続け、もう限界だと思った頃。
ロングスカートをはいた女と共に慎也が出てきた。
その女は細くて、白くて、帽子を目深にかぶっていた。
腕を絡ませ、二人は恋人のように寄り添っていた。
風でその女の髪が乱れると、慎也はそっと髪を耳にかけてやった。
その優しげな慎也の仕草に私は震えが止まらなかった。
何より、私はその女を知っていた。
結婚式の時、参列者席でこちらをじっと見ていたあの女だった。
その時私は不思議に思って慎也に聞いたのだ。
慎也は「石井綾香(いしい あやか)っていう大学の同期だよ。作家で感受性が強いから、きっと俺たちの幸せな姿を見て感動したんだろう」と言っていたのだった。
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