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凍てつく夜明けと、さよならの温度第3話

この話は約1936字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

よろめきながら病院に駆けつけると、母はベッドに横たわり、弱々しい息を吐いていた。

分厚い酸素マスク越しに、軽蔑と悲しみの入り混じった目を私に向ける。

「内藤さんから聞いたわ……あなた……どうして人様の家庭を壊すような真似を……」

その瞬間、目の前がぐらりと揺れた。

かつて母は、私を凌雅のもとへ喜んで嫁がせた。これからのすべての希望を、私たち夫婦に託した。

私が他人の家庭を壊す泥棒猫に成り下がったと聞かされ、母は私の何百倍も心を痛めたに違いない。

私は体を震わせて泣いた。

「お母さん、違うの、聞いて、私は……」

言い終わらないうちに、母は顔を背けた。ポロポロとこぼれ落ちた涙が、枕を濡らしていく。

医師が母をストレッチャーで手術室へ運んでいくのを見届けてから、私は放心状態のまま、凌雅がいるはずの華恋の家へ向かった。

ドアを開けた途端、目に飛び込んできたのは――私のこれまでの人生で見たこともないような、ひどく賑やかで和やかな親族の宴席だった。

私は周囲の奇異な視線など構わず、真っ赤に充血した目で凌雅を問い詰めた。

「凌雅、私たち……籍を入れてなかったってこと、母に話したの?」

その瞬間、彼が否定してくれることを、どれほど願ったか。何かの誤解だと言ってくれることを。

けれど凌雅は悪びれる様子もなく私を見下ろし、あろうことか開き直ったように言い放った。

「ああ。お前が華恋と波風立てずにやれると思ってたんだがな。今朝の態度はあまりに度が過ぎた。これはその罰だ」

その言葉で、私の中に残っていたわずかな希望が完全に砕け散った。

乾いた笑いがこぼれた。

母の命は、彼にとって華恋の軽い捻挫ほどの価値すらないというわけか。

怒りに任せて掴みかかろうとした瞬間、凌雅の冷たい視線が私を射すくめた。そこでようやく、周囲の顔ぶれに気がついた――

宴席の上座には華恋の両親だけでなく、とっくに亡くなったと聞かされていた凌雅の両親も座っていたのだ。

「……ご両親は、亡くなったって言ってなかった?」

気まずそうに目を逸らす凌雅を見て、私はすべてを悟った。

この家族団欒の中で、私は最初からただの日陰の女でしかなかった。

彼の両親に会わせてもらう資格すら、端からなかったのだ。

華恋は四人の親たちに甲斐甲斐しく尽くし、すっかり「奥さん」としての顔をしていた。

親たちは見知らぬ者を見るような視線が私に注がれる。きっと私の存在など、これっぽっちも聞かされていないのだろう。

凍りついた空気の中、華恋がわざとらしく慌てた様子で駆け寄ってきた。

「詩乃さん、どうしたの?また子供が泣いてパパに会いたがってるの?よかったらあっちで待っててくれる?もうすぐ終わるから」

その言葉が火種となり、親たちの怒りが爆発した。

「子供だと?あんたが、うちの凌雅をたぶらかしたっていうふしだらな女かい!」

「今日は身内の席だ。図々しい真似は許さん、さっさと出て行け!」

「家の恥だ!こんな厚顔無恥な女がいるとは!」

……

降り注ぐ罵声の中、凌雅は一言も私をかばおうとはしなかった。

それどころか、苛立たしげに舌打ちをして、有無を言わさぬ口調で冷たく命じた。

「詩乃、今日はもう帰れ」

この数年間、私が信じ込まされていた幸せな「結婚生活」は、ただの世間から隔絶された薄いガラスの幻想だったのだ。今、それが音を立てて粉々に砕け散った。

次の瞬間、凌雅の母が怒りでバンッとテーブルを叩いて立ち上がった。そして、控えていたボディーガードに向かってヒステリックに命じた。

「こんな泥棒猫、鞭で打って痛い目を見せてやらなきゃ、人様の家庭を壊した罪がわからないんだよ!叩き出しておしまい!」

ボディーガードが手にした鞭がバシッと鳴った。恐怖と絶望に駆られ、私は振り乱した髪のまま、凌雅の胸を狂ったように叩き続けた。

「どうして本当のことを説明してくれないの?なんで私がこんな泥棒猫扱いされなきゃいけないの?」

凌雅は無抵抗のまま立ち尽くし、ただひどく複雑な表情を浮かべていた。

その時、華恋が突然、いかにも傷ついた被害者のように泣き崩れた。

「じゃあ、本当に悪いのは私だって言うの?詩乃さんの言い分だと、私があなたたちの家庭を壊した憎い愛人ってことなの?」

華恋の涙を見た途端、凌雅はひどく取り乱し、鬱陶しいものを払うかのように、力任せに私を床へと突き飛ばした。

数秒の冷たい沈黙。

「……悪いが、認めてくれ」

私は愕然として顔を上げた。

冷酷に見下ろしてくる目の前の男は、もうかつて私を優しく抱きしめてくれた凌雅とは、全くの別人だった。

ちょうどその時、病院から高額な医療費の請求が届いた。

凌雅は画面を冷ややかに一瞥し、氷のような声で言い放った。

「お母さんを生かしたいなら、俺の言う通りにするかどうか、今すぐ決めろ」

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