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八時間のフライトで恋は終わった第1話

この話は約2363字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

私、月島莉都(つきしま りと)が瀬尾晃成(せお こうせい)と別れて、五年目のことだった。

国際空港で、私は晃成と再会した。

彼は海外にいる妻、瀬尾依澄(せお いずみ)に会いに行くところで、私は仕事で海外出張へ向かうところだった。

しばらく言葉が出なかった。

先に口を開いたのは、晃成だった。

彼は少し気まずそうに、私へ軽く会釈した。

「ここ数年……元気にしてた?」

私も静かに答えた。

「ええ。元気よ」

それぞれの搭乗口へ向かう途中、晃成がふいに振り返った。

「莉都、あのとき……お前が会いに来てくれたとき、実は……」

その先の言葉は、空港のアナウンスにかき消された。

私は聞き返さなかった。

そのまま背を向けて、歩き出した。

あの年、私は遥か遠く離れた彼に会うため、飛行機に乗った。機内での丸八時間、一切の連絡が途絶えていた。けれど到着後、私の元に届いたのは意外なメッセージ。晃成はそのメッセージで私にすべてを打ち明けた。

彼には、ずっと別の女性がいたのだ。

一万キロの距離を越えて会いに行った先で、私はようやく気づいた。

あの恋は、私が思っていたよりずっと前に終わっていたのだ。

* * *

私、月島莉都(つきしま りと)が瀬尾晃成(せお こうせい)と別れて、五年目のことだった。

国際空港で、私は晃成と再会した。

彼は海外にいる妻、瀬尾依澄(せお いずみ)に会いに行くところで、私は仕事で海外出張へ向かうところだった。

しばらく言葉が出なかった。

先に口を開いたのは、晃成だった。

彼は少し気まずそうに、私へ軽く会釈した。

「ここ数年……元気にしてた?」

私も静かに答えた。

「ええ。元気よ」

それぞれの搭乗口へ向かう途中、晃成がふいに振り返った。

「莉都、あのとき……お前が会いに来てくれたとき、実は……」

その先の言葉は、空港のアナウンスにかき消された。

私は聞き返さなかった。

そのまま背を向けて、歩き出した。

あの年、私は遥か遠く離れた彼に会うため、飛行機に乗った。機内での丸八時間、一切の連絡が途絶えていた。けれど到着後、私の元に届いたのは意外なメッセージ。晃成はそのメッセージで私にすべてを打ち明けた。

彼には、ずっと別の女性がいたのだ。

一万キロの距離を越えて会いに行った先で、私はようやく気づいた。

あの恋は、私が思っていたよりずっと前に終わっていたのだ。

……

飛行機に乗り込み、席に着いた直後、私のSNSに数件のDM通知が届いた。

送り主は、数年前、恋愛相談の配信で話を聞いてもらったことのある配信者だった。

【月島さん、こんにちは。あれから五年になりますね。フォロワーの方からも、今どうされているのか気にする声が届いています。あの件は、もうお気持ちの整理がついていますか?】

彼女のアカウントを開いた。

私が出たあの動画は、今でもいちばん「いいね」が多く、ページの上にピン留めされたままだった。

再生すると、動画の中で五年前の私は、声を震わせながら泣きじゃくっていた。

「彼、ずっと付き合ってる彼女がいたんです。

その人とは五年も付き合っていて、もうお互いの親にも会っていて、卒業したら婚約するつもりだったって……

それに、その人の実家はすごく裕福なんだって言われました。でも……私の家だって、それなりに恵まれているのに……」

当時、その言葉に引っかかった人は多かった。

【怒るのも問い詰めるのもわかるけど、この子はお金のことで張り合いたかったんじゃなくて、そんな理由で自分が軽く扱われたのが悔しかったんだと思う】

【五年も付き合っていたなら、彼女のほうだって簡単には割り切れないよね】

【こういう人って、いつか絶対に罰が当たる】

もちろん、すべてが味方だったわけではない。

彼女がいると知っていて近づいたのではないか。

被害者ぶっているだけで、本当は彼女から彼を奪いたかっただけではないか。

あの配信に出たのも、同情されたいだけで、相手の彼女を悪く見せたかったのだと言われた。

当時のコメント欄を少し眺めてから、画面を閉じようとした。

そのとき、一分前に投稿されたばかりのコメントが目に入った。

【これ、もう五年前か。案外、今はあの男の隣にいたりして】

そのコメントを報告しようとした瞬間、すぐ下に新しい返信が表示された。

【勝手に決めつけるな】

見覚えのあるアイコンだった。

それが、瀬尾晃成(せお こうせい)が長いあいだ使っていなかったサブアカウントだと、すぐに分かった。

あのとき、私がネットで叩かれるきっかけを作ったのは、ほかでもない彼の流した噂だった。

そんな彼に、今さら誰かの憶測をたしなめる資格なんてあるのだろうか。

私は思わず笑ってしまい、その配信者にDMを返した。

【もう気持ちの整理はついています。お手数ですが、あの動画は削除していただけますか】

……

思い返せば、私と晃成の出会いは、少しだけドラマめいていた。

父の本当の妻が家に押しかけてきた日、晃成は初めて、父に自分たち以外の家族がいたことを知った。

その女性は数人を連れていて、手には録画中のスマホまであった。

彼女たちは晃成の母親の服をつかんで引っぱり、耳を塞ぎたくなるような言葉を浴びせ続けた。

晃成は母親をかばって前に立ち、顔にも体にも殴られた跡を作っていた。

そこへ割って入り、警察を呼んだのが私だった。

警察が来て、騒ぎはそこで収まった。関係者は全員、警察署で話を聞かれることになった。

「事情がどうであれ、暴力はだめです。

相手はけがをしているんですよ。分かっていますか」

私もその場で見たことを話し、必要な手続きが終わったところで帰ろうとした。

入口まで歩いたところで、晃成に呼び止められた。

彼の顔には、まだ青あざがいくつも残っていた。

口を開くと、切れた唇の端からまた血がにじんだ。

それでも晃成は、私の前で深く頭を下げた。

そして、よければ連絡先を教えてほしいと言った。

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