八年の愛、儚く散りて第2話
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友人の松岡美咲(まつおか みさき)に離婚協議書の作成を依頼し、私の要求を伝えた。
美咲が初めて蒼介に会った時、冗談めかして言ったのを覚えている。
「もし遥に酷いことをしたら、弁護士の私は容赦しないわよ」
蒼介は真剣に答えた。そんな機会は絶対に与えないと。
その時の私も、そんな日が来るとは思っていなかった。
だが今、時間が私たちをここまで押し流してしまった。
離婚協議書を手に、息子の骨壺を抱いて家に帰った。
ドアを開けると、息子専用のスリッパ、床に散らばったおもちゃ、テーブルの上の一歳の記念写真……
部屋の中は全て以前のままで、まるで次の瞬間には息子が私の腕に飛び込んできて、甘えた声で「ママ」と呼んでくれそうだった。
だが腕の中の冷たい骨壺が、はっきりと告げている。息子はもう死んだのだと。
それも息子が最も楽しみにしていた誕生日の日に。
手の中で息子の写真を撫でながら、再び蒼介に電話をかけた。今回も電話に出たのは優芽だ。
「蒼介さんはまだ起きてないの。昨夜一晩中寝てないから、今起こすのは可哀想でしょう? 何か用があれば私に言って」
これまで蒼介が仕事で帰宅すると、よく倒れるように眠っていた。
彼が疲れすぎていることを心配して、私は毎回そっと出入りし、服を脱がせる時も細心の注意を払った。彼を起こさず、より快適に眠れるように。
だが今は、その必要はない。
「今すぐ彼を起こして。どうしても本人に伝えなければならないことがあるの」
優芽は不機嫌そうに電話を蒼介に渡した。電話口から蒼介の苛立った怒鳴り声が聞こえてきた。
「遥、お前もっと気を遣えよ。昨夜寝てないの知ってるだろ?
少しは察しろよ、俺は今疲れてるんだ、お前の機嫌に付き合ってる暇はない!」
察しろ?
息子が死んだのに、まだ私にどう察しろというのか。優芽の家でゆっくり休んでくださいと優しく言えとでも?
それとも、優芽の犬の冥福の方を祈ってねとでも?
「蒼介、離婚協議書にはもうサインしたわ。あなたも帰ってきてサインして」
電話の向こうの時間が数秒止まり、蒼介は重いため息をついた。
続く声には苛立ちが滲んでいる。
「遥、昨日は優芽の犬が死んで、彼女があまりに悲しんでいたから、何かあったら困ると思って出て行ったんだ。一晩中話を聞いていただけで、何もしてない」
蒼介の会社が軌道に乗ってから、彼とまともに話したのがいつだったか、もう覚えていない。
帰宅すると疲れ切った様子で、食事を済ませると倒れるように眠る。少しも言葉を交わせない。
息子が一緒に遊びたいとせがんでも、今は疲れているんだと言って断っていた。
今になってようやく分かった。体力がないわけじゃない。ただ相手を選んでいただけなのだと。
以前なら、私は酷く傷ついて、彼と激しく喧嘩していただろう。
だが今は、心の中が不思議なほど静かだった。ただ彼と離れたいだけだった。
一言一言区切るように繰り返した。
「蒼介、私は離婚したいの」
蒼介は一気に怒りを爆発させ、声が跳ね上がった。
「もう説明しただろ、まだ何が不満なんだ!
今回急用が出て陽太に付き合えなかっただけじゃない。何をそんなに怒っている?
また時間作って陽太を連れて行けばいいだろ。そんなに無理難題な話か?」
息子の名前を聞いた瞬間、心に果てしない悲しみが押し寄せた。
もう二度とその機会はない。
私は直接電話を切った。蒼介と話しても無駄だ。帰ってきて離婚協議書を見れば、私が本気だと分かるだろう。
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