八年の愛、儚く散りて第1話
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息子の五歳の誕生日、家族三人で流星群を見に行った。その途中で夫が電話を受けて急いで出て行った。
真夜中に、息子が喘息で発作を起こしたが、喘息の薬は夫の車の中にあった。
荒野で人気のない場所を、息子を抱きながら必死に走り回り、何度も夫に電話をかけ続けたが、返ってきたのは冷たいメッセージだけだった。
【急用中だ。邪魔するな】
翌日、ようやく夫から電話がかかってきたが、電話口から聞こえてきたのは夫の初恋の女の声だった。
「昨夜、私の愛犬が急病で亡くなって、彼が私を心配して一晩中付き添ってくれたの。今ようやく眠ったばかりだから、何か用があれば私に伝えてくれればいいわ」
息子の氷のように冷たい頬を撫でながら、私は言った。
「彼に伝えて。離婚すると」
* * *
息子の五歳の誕生日、家族三人で流星群を見に行った。その途中で夫が電話を受けて急いで出て行った。
真夜中に、息子が喘息で発作を起こしたが、喘息の薬は夫の車の中にあった。
荒野で人気のない場所を、息子を抱きながら必死に走り回り、何度も夫に電話をかけ続けたが、返ってきたのは冷たいメッセージだけだった。
【急用中だ。邪魔するな】
翌日、ようやく夫から電話がかかってきたが、電話口から聞こえてきたのは夫の初恋の女の声だった。
「昨夜、私の愛犬が急病で亡くなって、彼が私を心配して一晩中付き添ってくれたの。今ようやく眠ったばかりだから、何か用があれば私に伝えてくれればいいわ」
息子の氷のように冷たい頬を撫でながら、私は言った。
「彼に伝えて。離婚すると」
……
結局、桐谷蒼介(きりたに そうすけ)が言っていた急用とは、初恋の女、桜庭優芽(さくらば ゆめ)の飼い犬が死んだから、優芽が心配で仕方なかっただけだった。
それが彼が立ち去った理由であり、私の電話に出なかった理由だった。
電話を切った後、私は人形のように機械的に息子の後始末を始めた。
息子の桐谷陽太(きりたに ようた)の骨壺が手渡された時も、私はまだ呆然としたままだった。
理解できなかった。昨日までは私の耳元で「ママ」と何度も呼んでいた小さな命が、今日にはこんな形になってしまうなんて。
居合わせた親族たちは口々に私を慰めながらも、蒼介への不満を隠さなかった。
父親として息子が亡くなった時にすらその場にいないなんて、どんな大事があろうと駆けつけるべきだと彼を責めた。
蒼介は有名な傑出した若手経営者だから、仕事が忙しいのは当然だ。だから皆、当然のように彼は仕事に縛られていると思い込んでいた。
だが優芽は一分前、ちょうどSNSに投稿していた。蒼介の寝顔の写真に、こんな文章を添えて。
【私の悲しみに寄り添ってくれた彼に感謝。一晩中眠らずに大変だったでしょう、ゆっくり休んでね】
蒼介と一緒になって八年。周りの人たちは私たちが七年目の倦怠期を乗り越えたんだから、一生一緒にいられると言ってくれた。
だが今日の残酷な現実が教えてくれた。八年の愛も、結局は空しく終わるのだと。
私と蒼介が出会ったのは、彼が起業したばかりの頃だった。最も苦しかった時期を、私が彼の傍で支えてきた。
結婚式の時に、彼は私の手を固く握って誓いの言葉を言った。
「君が俺の最も確かな支えだ」
私はその言葉を胸に刻んだ。彼と一緒に社会で戦う機会を諦め、彼のために家の全ての事をこなすことを選んだ。
家に帰れば作りたての温かい食事が待っている。朝出かける時には、前夜に私が選んでおいた服がいつも用意されている。
息子が生まれてからは、大小問わず全ての世話を私一人で引き受けた。
心の中にどんなに不満があっても、私は一度も愚痴をこぼしたことはなかった。
この八年間、彼の会社がどんどん大きくなるのを見守り、彼もどんどん忙しくなっていった。
息子が「パパに会いたい」とせがむ度に、私は息子を慰めた。
「パパはスーパーヒーローだから、悪者をやっつけに行ってるの。パパのこと、理解してあげようね」
蒼介の会社が軌道に乗れば全てが落ち着くと思っていた。家族三人の日々の先はまだまだ長い。焦る必要はないと。
だが蒼介の初恋の女、優芽が帰国して彼の秘書になってから、全てが変わった。二人は一緒に出勤し、出張にも接待にも、蒼介の隣には必ず優芽の姿があった。
毎晩帰宅する彼のシャツからは、かすかに香水の匂いが漂っていた。
私が問い詰めると、彼は言った。優芽は帰国したばかりで知り合いがいない。友人としての情けで、仕事で傍に置いているのだと。
私は彼を信じることにした。
なぜなら彼はかつて言ったから。私と息子は、彼の永遠の宝だと。
だが私は忘れていた。人の心は移ろいやすいという言葉を。
今こそ、現実を見つめる時だ。
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