入籍の日、婚約者は秘書と裏切りのキスを交わした第2話
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ベッドに横たわりながら、私はこれまでの年月を思い出さずにはいられない。
英二と付き合い始めた頃、彼は本当に優しかった。
私と一緒にいるだけで、空気まで甘く感じると、何度も言ってくれた。
私が一言言えば、英二はすぐに仕事の手を止めて、私のそばにいてくれた。
彼は独占欲がとても強かった。
私の周りに男性の友人がいるだけで、すぐに不機嫌になった。
私と付き合う女性でさえ、彼は厳しくチェックし、その人柄を試していた。
生活の面でも、至れり尽くせりだった。
他人から見れば、その愛はあまりにも束縛が強いものだったかもしれないけれど、私はそれが好きだった。
しかし、今の彼はもう昔の英二ではない。
そして私も、もう彼のことだけを考えていた自分ではなくなった。
その時、枕元のスマホが震えた。
画面を開くと、英二の秘書・皆川友香(みなかわ ともか)からのメッセージだ。
【英二さん、今日の誕生日は今まで一番楽しかった。あなたのおかげよ、本当にありがとう】
【そうだ、インスタにあなたへのサプライズを用意したから、見てみてね】
私は少しぼんやりしていたが、何かを言う前に、メッセージは取り消された。
【ごめんなさい、若菜さん。間違って送っちゃった。怒らないでね】
私は鼻で笑って、スマホを傍らに放り投げる。
本当に間違えたのか、それともわざとなのか。
初めて友香に会った時、彼女はまだ社会に出たばかりの大学生だった。
何も知らず、あちこちでいじめられていた。
一度、仕事でミスをして、上司にクビにされそうになったことがある。
その時、彼女は私の前に来て、鼻水と涙でぐちゃぐちゃになりながら、自分の恵まれない家庭環境や、苦労を訴えた。
私は友香にチャンスを与え、仕事のことも手ずから教えた。
そのおかげで、彼女は英二の目に留まることができた。
その後、英二が彼女を自分の秘書にしたいと言い出した時、私は何も考えず、むしろ彼女のために喜んだ。
まさか、あんなに従順で賢そうに見えた人間が、裏ではこんなにも計算高いなんて、誰が想像できただろう。
私が手ずから引き上げた人間に、一番致命的な部分を、深くえぐられてしまう。
翌朝、私はまず実家への航空券を買い、それから会社へ直行し、書いておいた辞表を提出した。
机の上の辞表を見て、英二は少し驚いていた。
「本気か?」
「他に何があるの?」
私は笑って問い返す。
英二は黙り込んでいる。
しばらくして、ようやく口を開いた。
「残ってくれ。会社にはお前が必要だ」
「会社は一人で回ってるわけじゃないわ」
そう言うと、私は彼の同意を待たずに、踵を返してその場を去ろうとする。
しかし、ドアを出る瞬間、英二が立ち上がって追いかけてきて、私の腕をぐっと掴む。
「二日だ!」
私は彼を振り返る。
その顔には、珍しく焦りの色が見える。
「二日後、この仕事が片付いたら、一緒に婚姻届を出しに行く。もう一度だけ、俺を信じてくれないか?」
私は静かに彼を見つめる。
何の返事もしない。
「もう一度、チャンスをくれないか?」
英二は緊張した面持ちで、まるで私の答えが本当に重要であるかのように見える。
ふと、ある考えが頭をよぎる。もし今、彼に「結婚するの」と告げたら、しかもその相手が、彼がいつも「小さい頃から何においても俺より上手だった」と言う兄だとしたら、英二はどんな反応をするだろうか。
私は何も言わず、ただ黙ってその場を去る。
家に帰り、書斎に飾られたたくさんの写真を見ると、かつての思い出が次々と蘇ってくる。
しかし、感動はなく、ただ苛立ちを感じるだけ。
私は全ての写真を壁から外し、火鉢の中に放り込んで燃やした。
しかし、その途中で、会社にいるはずの英二が、なぜか突然帰ってきた。
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