入れ替えられた娘だけど、逆転劇で家族を地獄に落とした話第1話
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姑が、私の娘を自分の娘と入れ替えた。
理由はただ一つ、遅くに産まれた末娘を甘やかし、苦労させたくなかったからだ。
夫はそのことを黙認していた。
けれど私は黙って見過ごすことができず、こっそり娘を取り返し、それを誰にも知らせなかった。
こうして、私の娘は大切に育てられ、一方で入れ替わった子は苦労を重ねた末に家を出ていった。
時が流れ、姑は癌を患い、親子鑑定の結果を持ち出して娘に尽くすよう求めてきた。
私は姑と得意げな夫をじっと見据え、微笑みながらこう言った。
「いいわよ!それなら元に戻しましょうか。あんたたちの娘を返すわ。だから私の娘を返してもらうわね」
* * *
姑が癌を患ったという知らせが入ったのは、私と娘の桜坂陽菜(さくらざか ひな)が買い物をしている最中だった。
夫から十数回も電話がかかってきて、まるで彼の母親が今にも亡くなりそうな勢いだ。
姑の家に到着すると、そこにはご近所の人々が集まり、同情の視線や好奇の目が一斉に向けられた。
少しすると姑が親子鑑定の結果を差し出し、声を震わせながらこう告げた。
「梓(あずさ)、何年か前、楓(かえで)が病気になったときに病院で検査を受けたの。それでね……陽菜が私の娘で、楓はあなたの娘だって分かったのよ。病院が間違えていたみたい!
この事実を墓場まで持っていこうと思っていたの。でも……私、癌になったのよ。もう長くない。もし陽菜が私に『お母さん』って呼びかけてくれたら、私は思い残すことなく逝けるわ。
陽菜、宝物のような私の娘……本当に手放したくないのよ!」
そう叫びながら姑は陽菜にすがりつき、涙をぼろぼろと流した。
年配の人たちはその姿に感化されたのか、涙を拭いながら口々に言った。
「そんなこと言わないで、まだまだ元気でいてくれないと」
「そうだよ!今は医学がこんなに発達してるんだから、これからもっといい日々が待ってるよ!」
「陽菜ちゃんなんて素晴らしい子なの!大学生だって。あなたは幸運ね」
周りは騒がしいが、陽菜は困惑した目で私を見つめている。
私は冷笑を浮かべ、手渡された親子鑑定書をその場で引き裂いた。
娘が孫娘になり、妹が娘に。兄が父親になる……そんな倫理を無視した話、良心のある人間なら絶対にできるはずがない。
しかし、迅(じん)の家族は堂々とやってのけた。そしてその態度はあまりに傲慢だった。
私の行動に、夫は勢いよく立ち上がり、怒声をあげた。
「梓!これはどういうつもりだ!二人を元に戻すんだ。それが俺の母さんの最後の願いだ。もしお前が同意しないなら、俺たちは離婚だ!」
迅は私が崩れ落ちるのを待ちわびているかのような顔をしていた。
陽菜は容姿端麗で名門大学に通う才女。一方の楓は痩せ細り、家を出て音信不通。
こんな状況なら誰だって取り乱すだろう。ましてや私にとって、陽菜は人生で唯一の娘なのだ。
ご近所の人たちは私に同情の目を向けたが、「死人に口なし」という暗黙の了解があるのか、誰も口を挟まない。
私がいつまでも首を縦に振らないのを見て、姑は再び声を張り上げた。
感情が高まりすぎたのか、ついには血を吐いてみせるという熱演ぶりだ。
「私の……娘を返して!」
彼女の哀れな声に涙を流す人々。
迅は母親の苦しむ姿に耐えられないとばかりに私を睨みつけ、怒りを爆発させた。
「梓!お前はどうするつもりだ!母さんを死なせたいのか!」
私は必死に育て上げた娘を、数言で奪おうとする彼らを軽蔑の目で見やり、毅然と答えた。
「いいわよ。そこまで言うなら元に戻しましょうか。あんたたちの娘を返すわ。そして――私の娘を返してもらうわ」
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