兄が生きて帰ったら、家族全員が狂ってしまった第2話
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警察署では、私の唯一の親友で、クラスメイトの山田杏平(やまだ きょうへい)が警察官と話をしていた。
彼女は、私の携帯がつながらず、約束の日にも姿を見せなかったことを必死に訴えていた。
真っ赤に腫れた目で焦るその姿に、私の胸も締め付けられる。
涙を拭いてあげようと伸ばした手は、彼女の顔をすり抜けた。
呆然としたまま、私は泣き笑いを繰り返す。
ありがとう。私を探してくれて。私を助けようとしてくれて。
警察官が杏平に私の両親の連絡先を尋ねたとき、父が現れ、冷たい視線を杏平に向けた。
「この子の話は気にするな。若林結菜の父親は俺だ。娘は失踪なんかしてない。ただ悪さをしたから、くだらない連中と遊び歩くのを禁じてるだけだ」
「くだらない連中」という言葉だけが、わざと強調された。
杏平の顔から血の気が引き、屈辱に耐えるようにうつむいている。
杏平は、そんな人じゃない!
彼女は、私がこっそり泣いている時、そっと上着を私の頭にかけてくれた。
お腹を空かせている私に、「食べられないから」と嘘をついて、自分の分を譲ってくれた。
私がいじめられると、汚物のついたモップを振り回して悪い人を追い払ってくれた。
孤立しているときには堂々と手を握り、「私たちは二人でクラス全員を孤立させたってことよ、クールでしょう?」って笑ってくれた。
山田杏平――彼女は、間違いなく私にとって一番の友達だった。
しかし、長年監察医を務めてきた父の言葉は信用されている。
私の失踪は、父の否定によって再び闇に葬られた。
警察署を出ていく杏平の背中を見つめながら、涙が止まらなかった。
追いかけたいのに、私の霊魂は父の傍に縛り付けられていた。
父が私の頭骨を処理し、仕事を終えて家に戻る。
食卓にはいつも決まって焼き魚、カニ、そしてエビの醤油煮が並んでいた。
母は兄の好物を忘れなかったが、私が甲殻類アレルギーであることだけは、決して覚えようとしなかった。
かつて、父に「なぜ食べない」と問われたとき、私はやっと愛されるのかと思った。
震える手で箸を握りしめ、勇気を振り絞って答えた。
「……パパ、私、甲殻類アレルギーなの」
すると母は箸を投げつけ、指を突きつけて怒鳴った。
「なんてことだ!恩知らずの出来損ない!一生懸命料理を作ったのに、それが悪いって言いたいか!」
私は助けを求めて父を見た。幼い頃、母に怒られたとき必ず守ってくれた「英雄」だった父は、大きなカニを私の皿に載せるだけだった。
「黙って食べろ。母さんを怒らせるな」
二人の視線に押し潰され、食べなければ罪人のようだった。
結局、私はカニを口にした。
その夜、喉は腫れ上がり呼吸ができなくなり、目も腫れて視界は歪み、全身が痛みと痒みに襲われた。
「た、助けて……」
かすれた声で玄関へ這い寄り、必死にドアノブを回すが、どうしても開かなかった。
恐怖に駆られ、ドアを叩いた。
「助けて……パパ、ママ……死にたくない……」
居間から母の声がぼんやりと聞こえた。
「アレルギーだけで死ぬわけないでしょ。鍵をかけておいて正解だったわ。どうせ可哀想ぶってるだけ、吐き気がする!
昨夜、経一が夢で新しいゲーム機が欲しいって言ってたの。早く買いに行くわよ、遅れたら店が閉まる!」
行かないで!ママ、パパ!置いていかないで!
私は死にたくない……助けて……
ドアがバタンと閉まり、私は完全に見捨てられた。
……もういい。死ねば楽になれるかもしれない。
私は隅に丸まり、死を待った。
そのとき階下から、父娘の楽しげな笑い声が聞こえてきた。
「お前も馬鹿だな、ピーナッツアレルギーなのを知らなかったのか?命を落とすところだったぞ!」
「ごめんねパパ、わざとじゃなかったの。ママには言わないでね」
「母さんはもう知ってるさ。お前の好きな料理をいっぱい作って家で待ってた。お前が無事ならそれでいい。本気で子供に怒る親なんてあるか」
私は下水道のゴキブリのように、他人の幸せを覗き見るしかなかった。
羨望と惨めさに押し潰されながら。
私も、愛される子どもでいたかった。
食べられないものを気遣ってもらい、好きな料理を作ってもらい、過剰なくらい心配されるような存在でいたかった。
けれど私は、兄を死なせた悪い子。愛される資格なんてない。
……でも、パパ、ママ……私は死にたくない。本当に、死にたくないんだ。
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