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偽りの花束、灰に帰す愛第2話

この話は約2126字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

翌朝早く、成景と陽向はすでに姿を消していた。

枝織は成景のSNSに残された僅かな痕跡――不自然な「いいね」の履歴やフォローリストの隅々までを執拗にたどり、ついにあの女のアカウントを突き止めた。

あの女のハンドルネームも「陽菜」だった。

枝織は裏垢で相手をフォローし、通知をオンにした。案の定、その日の夜には、相手の新しい投稿がフィードに流れてきた。

三着のお揃いの親子コーデの写真。

そして、幸せそうなコメント。

【やっと旦那さんと息子と一緒に、島で親子コーデが着られる】

もともと、彼らの家族旅行の行き先はあの島だった。

おかしなことに、成景は今、自分だけを置き去りにして、あの女と息子を連れて行くつもりなのだろうか?

陽向は他人と同じ服を着るのを極端に嫌がった。枝織が何度頼んでも、彼は眉をしかめて拒否した。

だから、彼ら家族が親子コーデを着たことは一度もなかった。

庭で車の音が響き、枝織は回想から引き戻された。

「ママ」陽向が大人のように落ち着いた声で彼女を呼んだ。

傍らの車のドアが開き、ある女の白く細い脚が伸びてきた。あの写真で見た親子コーデを身に着けていた。

続いて、あの女の顔が枝織の目の前に現れた。

「こちらは安西先生」

陽向が紹介し終えると、相手は突然しゃがみ込み、彼の頬にキスをした。

その光景が枝織の胸を刺した。

陽向は他人にキスされるのが嫌いなはずだった。

だが陽向は拒否せず、むしろ唇を引き結び、少し照れくさそうに笑っていた。

陽菜はハイヒールの音を鳴らして歩み寄ると、枝織の目の前でぴたりと立ち、手を差し出してきた。

枝織は彼女の手に結婚指輪がはめられているのに気づいた。

枝織は目を伏せた。「奇遇ね。安西先生の結婚指輪、私のとそっくりだわ」

「そう?」陽菜は艶やかに微笑んだ。その笑みには得意気な色と意味深な響きが混じっていた。「この指輪、夫が特別に買ってくれたものなのよ」

枝織は結婚指輪を決めた時のことを覚えていた。デザインを決めたのは成景だった。

枝織はそうしたものに疎く、成景に任せると言った。

彼はカウンターに行くと、すぐにこのデザインを選んだ。

枝織は成景が結婚式に対して準備万端で、計画的だったのだと思っていた。だがまさか、妻である自分の結婚指輪でさえ、「ついで」だったとは。

「和泉先生、神谷社長から聞いた?しばらくお邪魔することになりそうよ」

その言葉に、枝織はわずかに固まった。

問いただす前に、一台のリンカーンがそばに停まった。

成景が車から降り、陽菜とは一線を画すように、すぐに枝織の腰を抱いた。

「安西先生、もう来てたんだ?」

成景は枝織に向き直り、説明した。「枝織、もうすぐ家族旅行だろう?陽向の勉強が遅れるのが心配でね。特別に安西先生に来てもらって、先に授業を進めてもらうことにしたんだ。

安西先生の住まいは遠いから、便宜上、この期間はうちに泊まってもらう」

陽菜はうっすらと笑みを浮かべ、枝織に向ける視線には隠しきれない挑発の色があった。

「和泉先生、まだ握手してくれてないわ」

枝織は手を伸ばし、陽菜の手を握った。

陽菜は眉を上げ、軽い声で言った。「初めまして、和泉先生。私の名前は……

安西陽菜(あんざい ひな)です」

枝織はその場で凍りついた。考えるより先に、無意識に口が開いていた。

「安西陽菜?」

陽向が寄ってきて、得意満面だった。「すごくいい名前でしょう?安西先生の名前、僕の『陽』の字と同じ漢字が入ってるんだ!」

枝織は素早く手を引いた。はっとしたように成景を見つめ、思わず思った。

息子の名前を付けた時、彼の心と目にはずっとこの隠された愛人の姿が映っていたの?

枝織は麻痺するほどの心痛を感じ、声もか細くなった。「ええ、とても素敵ね」

素敵すぎて、吐き気がした。

枝織はもう笑えなかった。彼女は素早く身を翻し、家の中へ向かった。

成景が心配そうに言った。「枝織、大丈夫か?」

成景が後を追ってこようとした時、陽菜が甘えた声を出した。「神谷社長、私の部屋はどちら?」

成景はためらいがちに枝織を見た。「枝織、先に安西先生を部屋に案内してくる。すぐに君のところへ行くから」

だが、成景が戻ってくることはなかった。

枝織は二階の窓辺に立ち、庭で陽菜が陽向のブランコに座り、成景が彼らを見つめているのを見ていた。

ブランコは陽向の一番のお気に入りだ。

それが設置されたばかりの頃、枝織がほんの少し腰掛けただけで、陽向は火がついたように泣き叫び、彼女をそこから追い払ったのだ。

「座らないで!これは僕のブランコだ!僕のブランコに座っちゃダメ!」

だが今、そこには陽菜が座り、陽向が彼女の背中を押していた。

二人はとても楽しそうに笑っていた。

その様子に、成景もまた穏やかに微笑んでいた。

彼らこそが、幸福な三人家族……

枝織はずっと深夜まで待っていた。

ようやく成景からメッセージが届いた。【枝織、ごめん。急な仕事が入って、まだ帰れそうにない】

枝織は再び陽菜のSNSアカウントを開いた。

ダイレクトメッセージのアイコンに、未読を知らせる青いマークがついた。

彼女は戸惑いながらトーク画面を開くと、陽菜からのメッセージが目に飛び込んできた。

【和泉先生、私のアカウントを覗き見するのって、刺激的じゃないかしら?】

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