偽りの従順第2話
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二人はお似合いだなんて言葉じゃ足りない。最高の組み合わせ、まさに天が巡り合わせた運命の二人だ。
私だって、大学時代に二人の恋愛をこの目で見てきた証人の一人。
あの冷淡で、誰よりも輝いていた湊斗が、ただ一人、彼女の前でだけは傅くような姿を見せていたのだから。
手編みのマフラーを贈り、女子寮の下で待ち続け、徹夜で勉強に付き合う……
学内掲示板では、二人の後ろ姿の写真がアップされるだけで大学中がが盛り上がり、スレッドが乱立するほどだった。
私はどうしても愛理の写真を取り出しては、歯ぎしりするほど羨まずにはいられなかった。
神様がすべての美点を、たった一人の人間に注ぎ込んだことを呪ったものだ。
噂され、比較される。そんなことは、愛理が戻ってくるずっと前から日常茶飯事だ。
だからこそ、彼女が帰国した今、私への風当たりがどれほど強くなっているか想像に難くない。
いや、違うか。そもそも話題にすら上らないかもしれない。比較する価値すらないのだから。
会場には穏やかな音楽が流れていた。私は華奢なヒールで歩を進め、湊斗の腕にそっと手を添えた。
愛理は登場するなり会場中の視線を独り占めにし、そして旧友を懐かしむような足取りで、湊斗の目の前に立った。
彼女は手を差し出し、微笑む。
「久しぶりね」
湊斗は無表情のまま、何の反応も示さない。
けれど私にはわかった。彼が一瞬、全身を強張らせたのが。
湊斗が動こうとしないため、差し出された彼女の手は宙で止まったままだ。空気が気まずく澱み始める。
私は助け船を出そうと、自分の手を伸ばした。
「お久しぶりです。高嶺さん、いつ帰国されたんですか?」
胸の奥に、淡く非現実的な期待が芽生える。
もしかしたら。
もしかしたら湊斗は、共に過ごしたこの数年で私に情を抱き、心の中に少しは私の居場所を作ってくれたのかもしれない。
だが、それと同時だった。湊斗の親友・神崎蓮司 (かんざき れんじ)が割って入り、彼女の手を握りしめたのは。
私の手は空を切り、行き場をなくして宙を彷徨った。
周囲からの嘲るような視線が、私と彼女の間を行き来する。それは音もなく、私の淡い期待を粉々に打ち砕いた。
夫の頬の筋肉がピクリと動く。彼は私の目の前で、静かに言った。
「俺は、結婚した」
それは、彼女との未来がもう閉ざされてしまったことへの未練。
隠そうともしない、深い嘆きだ。
……私の、完敗だ。
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