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偽りの従順第3話

この話は約963字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

騒ぎに気づいたのか、義母・桐島静江 (きりしま しずえ)が奥から慌てて駆け寄ってきた。

……もちろん、私のためではない。

静江は私を押しのけるようにして二人の間に入り込む。談笑する三人の輪から弾き出された私は、まるで空気の読めない部外者のようだ。

感極まったのか、静江は目尻の涙を指で拭う。

「愛理ちゃんが湊斗と結婚するって、家ではしゃいでいたあの光景……今でもはっきりと覚えているわ」

愛理の瞳が潤む。

「おば様……」

私は唇を噛み締め、ただ俯くことしかできない。

振り返るまでもない。周囲からの嘲笑を含んだ視線が、どれほど熱烈に私へ降り注いでいるか肌で感じる。

玉の輿。

湊斗の心の隙間に、ただ運良く滑り込んだだけの格下の女。

いくら機嫌を取って尽くしたところで、何の意味もない。

私の献身など、あまりに安っぽい。

そして、私の夫である湊斗。

彼もまた過去の記憶に心を揺さぶられているのだろう。無表情を装ってはいるが、その拳は強く握り締められている。

……やっぱり、彼は私を愛してなどいなかったのだ。

居心地の悪さに耐えながら、じっと立ち尽くす。その時だった。

愛理が顔を上げ、悔しさを滲ませた瞳で私を見据える。

「……その人が、今の奥さん?」

平気を装ってはいるが、その声の震えこそが、彼女の精一杯の強がりなのだろう。

ついに、私と彼女が並び立つ時が来た。

その差は歴然としている。あまりの惨めさに、自分自身が恥ずかしくなってくるほどだ。

私は愛理に向かって、能面のような笑みを浮かべてみせた。

湊斗はそんな私を冷ややかに一瞥するだけだ。弁解もなければ、労りの言葉もない。

ただ一言、こう告げた。

「蓮司たちが、お前のために歓迎会を用意してるそうだ」

蓮司をはじめとする、彼の悪友たち。

私を徹底的に見下し、玩具のように扱って笑い物にする連中だ。

彼らにされた酷い仕打ちを思い出すだけで、目眩がしてくる。

湊斗はそれを知ろうともしないし、知ったところで止めることもない。

私は彼らに拒絶反応を起こし、一瞬、呼吸が詰まる。

それでも引きつった笑みを浮かべ、必死に言葉を紡いだ。

「じゃあ、皆さんで楽しんできて。私はこれで……」

「お前も行くんだ」

湊斗の冷徹な遮りに、私は言葉を失う。

彼は私をじっと見据え、冷ややかな表情のまま、一語一語噛み含めるように繰り返した。

「お前も、一緒に来るんだ」

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