偽りの従順第3話
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騒ぎに気づいたのか、義母・桐島静江 (きりしま しずえ)が奥から慌てて駆け寄ってきた。
……もちろん、私のためではない。
静江は私を押しのけるようにして二人の間に入り込む。談笑する三人の輪から弾き出された私は、まるで空気の読めない部外者のようだ。
感極まったのか、静江は目尻の涙を指で拭う。
「愛理ちゃんが湊斗と結婚するって、家ではしゃいでいたあの光景……今でもはっきりと覚えているわ」
愛理の瞳が潤む。
「おば様……」
私は唇を噛み締め、ただ俯くことしかできない。
振り返るまでもない。周囲からの嘲笑を含んだ視線が、どれほど熱烈に私へ降り注いでいるか肌で感じる。
玉の輿。
湊斗の心の隙間に、ただ運良く滑り込んだだけの格下の女。
いくら機嫌を取って尽くしたところで、何の意味もない。
私の献身など、あまりに安っぽい。
そして、私の夫である湊斗。
彼もまた過去の記憶に心を揺さぶられているのだろう。無表情を装ってはいるが、その拳は強く握り締められている。
……やっぱり、彼は私を愛してなどいなかったのだ。
居心地の悪さに耐えながら、じっと立ち尽くす。その時だった。
愛理が顔を上げ、悔しさを滲ませた瞳で私を見据える。
「……その人が、今の奥さん?」
平気を装ってはいるが、その声の震えこそが、彼女の精一杯の強がりなのだろう。
ついに、私と彼女が並び立つ時が来た。
その差は歴然としている。あまりの惨めさに、自分自身が恥ずかしくなってくるほどだ。
私は愛理に向かって、能面のような笑みを浮かべてみせた。
湊斗はそんな私を冷ややかに一瞥するだけだ。弁解もなければ、労りの言葉もない。
ただ一言、こう告げた。
「蓮司たちが、お前のために歓迎会を用意してるそうだ」
蓮司をはじめとする、彼の悪友たち。
私を徹底的に見下し、玩具のように扱って笑い物にする連中だ。
彼らにされた酷い仕打ちを思い出すだけで、目眩がしてくる。
湊斗はそれを知ろうともしないし、知ったところで止めることもない。
私は彼らに拒絶反応を起こし、一瞬、呼吸が詰まる。
それでも引きつった笑みを浮かべ、必死に言葉を紡いだ。
「じゃあ、皆さんで楽しんできて。私はこれで……」
「お前も行くんだ」
湊斗の冷徹な遮りに、私は言葉を失う。
彼は私をじっと見据え、冷ややかな表情のまま、一語一語噛み含めるように繰り返した。
「お前も、一緒に来るんだ」
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