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俺と息子を捨てた元妻の報い第3話

この話は約1862字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

夕依の言葉を聞き、俺も陽斗も言葉を失った。

特に陽斗は、何か言おうとして口を開くものの、涙だけがとめどなくこぼれていく。

「ママ……」

その一言に、夕依の強張っていた表情がわずかに緩む。だが、その瞳に宿った冷たさは、外の吹雪よりも身にしみた。

「それで?今度は何が目的なの?

お金?それとも家でも欲しいわけ?」

陽斗の小さな手は、いつの間にか強く握りしめられていた。それでも、反論することはできない。

以前、陽斗は夕依に、昂輝にひどいことをされたと訴えたことがある。

だが昂輝が少し言い訳をしただけで、夕依は俺が昂輝に嫉妬し、陽斗に嘘をつかせたのだと信じ込んだ。

その結果、俺は地下室に1週間閉じ込められた。

陽斗もまた、その1週間、悪夢にうなされ続けた。

そのときのことを思い出したのか、陽斗はぶるりと身を震わせる。そして俯いたまま、小さな声で言う。

「パパがどうしても起きないんだ。だから、あの羽根、僕にくれないかな?」

夕依の表情が変わる。胸騒ぎを覚えたように、思わず問い返す。

「起きないってどういうこと?雅彦は400mLしか血を抜かれてないはずじゃ……」

「夕依!」

昂輝が慌ててその言葉を遮った。

夕依は振り返り、不思議そうに眉をひそめる。

「何?」

疑いの視線を向けられ、昂輝の体が一瞬こわばった。そして不自然なほど慌てて話題を変える。

「今日は大晦日だろ。陽斗が帰るのが遅くなったら、雅彦さんも心配する。

羽根くらい、渡してやればいい。

これ以上、あっちの年越しを邪魔することもないだろ」

案の定、夕依はあっさりと注意を逸らされ、表情を少し和らげた。

「昂輝は相変わらず優しいのね。わかったわ。陽斗、ついてきなさい」

一行が屋敷の中に入ると、明るい照明の下で、陽斗の額に残る傷がより一層痛々しく目立って見える。

そこへ、昂輝の娘・斉藤莉緒(さいとう りお)が近づいてきて、汚れた服の陽斗を上から下まで眺め、不思議そうに首をかしげる。

「この子、だれ?迷子なの?すっごく汚い」

無邪気な一言に、陽斗の顔が一気に赤くなる。

助けを求めるように夕依を見る。何か言ってくれるのではないかと期待した。しかし、その視線に触れた夕依の表情は、なぜかさらに冷たくなった。

陽斗を一瞥し、吐き捨てるように言う。

「雅彦にそうやってかわいそうなふりをするよう教えられたの?

わざとみじめな格好をすれば、私が心配するとでも思ったの?

くだらない」

夕依の言葉を聞くうちに、陽斗の顔から赤みが消えていく。痛ましいほどの蒼白さと脆さだけが残る。

……ママはもう、自分のことなんて好きじゃないんだ。そう思ったのだろう。

陽斗が涙を拭い、再び顔を上げたとき、夕依はすでに2階へ上がっていた。

その場に残った昂輝は、得意げな笑みを浮かべ、陽斗を見下ろしている。

「かわいそうに。ママにまで見捨てられたんだな。

いっそ俺のことをパパって呼んでみるか?そうしたら、特別にここへ置いてやってもいいぞ。ペットの犬としてな」

「嫌だ!」

陽斗は小さな手をぎゅっと握りしめ、目には涙が浮かび、怒りのあまり体まで震えている。

「お前なんか、パパじゃない!僕のパパは一人だけだ!古賀雅彦っていう、僕のパパだけだ!

調子に乗るなよ!パパが起きたら、絶対に僕の仇を取ってくれるんだからな!」

歯を食いしばりながら放ったその言葉には、迷いなどなかった。

だが、その言葉に俺の胸は張り裂けそうになる。

もし陽斗が、俺はもう二度と目を覚まさないのだと知ったら、どれほど傷つくだろう?

これから先、一人でどうやって生きていけばいい?

陽斗はまだ、6歳なんだ。

俺の視界は涙でぼやけていく。その一方で、昂輝は完全に逆上していた。

ちょうどその時、2階から夕依が下りてくるのを見ると、何かを思いついたように目を細める。そして、さりげなく自分のポケットをまさぐり始める。

「俺のスマホは?スマホがない!」

昂輝は焦った様子で全身をまさぐり、やがて視線を陽斗へ向ける。そして、にやりと笑った。

「陽斗……もしかして、俺のスマホを盗んだのか?」

陽斗はぎょっとして、すぐに首を振った。

「違う!盗んでない!スマホなら、さっき……」

パァンッ!

言葉の途中で、乾いた音が響く。

夕依は片手に羽根ペンを握り、もう片方の手で、ビンタで赤く腫れ上がった陽斗の顔を指さす。その目には、失望の色が浮かんでいる。

「やっぱり、ろくなつもりで戻ってきたんじゃなかったのね!

前に、父親にそそのかされて昂輝を陥れようとしたことは、百歩譲ったとしても、今度は人の物を盗むなんて!どうして、こんな子になってしまったの?」

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