今、あの時の過ちを知る第2話
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前庭には、宮人たちがずらりと並び、宮中で仕立てられた花嫁衣装を丁寧に捧げ持っていた。
どれもこれも、まばゆいばかりに豪華絢爛だった。
柳如煙は嬉しさを隠しきれず、両腕を広げては侍女に支えられ、次々に服を試していく。
一着、また一着と服を替えるたび、笑みを浮かべて宋懐景に尋ねる。
「殿下、妾……これ、お似合いでございますか?」
宋懐景は倦むことなく、丁寧に答え続けた。
――まさに、情愛厚き男女そのもの。
私は端に座り、これらの綺麗な花嫁衣装の波をただぼんやりと見つめていた。胸の奥底まで、じんわりと、そして確かに痛みが広がっていく。
「殿下……三年前、私の花嫁衣装を選んでくれた時のこと、まだ覚えていますか?」
声は小さかったが、彼はすぐにそれを聞きとった。一瞬、彼の動作を止め、目にかすかな懐かしみが浮かぶ。
「もう、そんなに経ったのか……よく、覚えていたな」
私は微笑んだ。けれど、その笑みはどうしても寂寥を帯びてしまう。
――忘れるはずがない。
あれは、私がこの人生で初めて誰かを愛した日だったのだから。
そして今、私はこの人生で初めて裏切りの痛みを知った。
三年の歳月が流れ、すべては移り変わった。
この愛に取り残されていたのは、きっと私ひとりだけ。
私の表情に、昔日の面影が滲んだのだろうか、宋懐景はたまらず、そっと私のもとへ歩み寄った。
「歳晩……孤を信じてくれ。如煙の病さえ癒えれば、孤と汝はまたやり直せる。これはただの芝居だ。幕が下りれば、汝は変わらず皇太子妃なのだ」
私は彼を見ず、視線を綺麗な花嫁衣装へ落とした。
「……お二人は、本当にお似合いです」
心臓が一瞬、止まったように、宋懐景は言葉を失った。
ちょうどその時、柳如煙が花嫁衣装を着替えて戻ってきた。
「殿下……妾、いかがでございますか?」
その甘ったるい声に、場の空気が一瞬、そちらへ流れる。
彼が顔を上げた瞬間、私は、その瞳の奥に宿った驚きと、心を奪われた色をはっきりと見てとった。
――あれは、昔彼が私を見つめた時と、まったく同じ輝きだった。
彼の心が動くその瞬間は、もはや私だけのものではなかった。
彼が言葉を見つけるより早く、私が口を開いた。
「とてもお綺麗です。柳さんは、私の見た中で……一番美しい花嫁です」
宋懐景の笑みが一瞬で固まり、信じがたいという様子でこちらを見つめた。
三年前、同じ言葉を私に贈ったのは彼自身だった。
今、私はそれをそっくりそのまま、お返ししただけ。
柳如煙は勝ち誇ったようにくるりと回り、満足気に言った。
「姉上は本当にお心が広い。妾のこの花嫁衣装、殿下が特に職人を急がせて仕立ててくださったのです。
殿下がおっしゃいましたの――妾には、この上ないものを贈りたい、と」
私は宋懐景を見つめたが、彼は私の視線から逃げるように逸らした。
この上ないもの……だからこそ、私に離縁状を書かせたのだ。
皇太子妃の座という「この上ないもの」を、彼女に贈るためか。
揺れ動く心を必死で押し殺し、私は静かに告げた。
「もう用はございませんので、部屋に戻らせていただきます」
柳如煙は内心にやりとしたが、表面は心配顔してみせた。
「姉上、どうぞごゆっくり。妾と殿下は、これから結婚式の段取りを改めて打ち合わせなければなりませんので」
私は軽く頷くと、背後に焼けつくような視線があるのも感じぬふりをして、歩き出した。
――もう決めたのだから、宋懐景。どうか、最後まで振り返らずに進んでください。
二人の結婚式まで、あと五日。
前庭を出たところで、私は東宮全体がすでに祝賀の色に染め上げられていることに気づいた。
まぶしいほどの紅い布が、下働きの者たちの手で運ばれ、屋敷の隅々に飾りつけられていく。
前庭を離れれば、少しは息がつけるかと思っていた。
だが私は忘れていた――この広い東宮には、もはや私の居場所などどこにもないのだということを。
呆然と立ち尽くしていると、慌ただしく駆けてきた執事が声をかけた。
「皇太子妃様……」
言いかけて、執事は慌てて言い直した。
「雲(うん)お嬢様」
我に返り、私は軽く頷いて応えた。
そして自然と、下働きの者が抱える錦の箱へと視線が向かう。
そこには、幾通もの招待状が整然と収められていた。
一枚を取り出し、そっと開くと、目に飛び込んできたのは――宋懐景の、見覚えのある端正な筆跡だった。
【謹啓、春爛漫の候、皆様には……】
一文字一文字がすべて、彼自身の手で丁寧にしたためられたものだった。
その心尽くし、その重ねた想いは、本当に柳如煙が哀れなだけだからなの?
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