今度こそ、幸せな道を歩もう第2話
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私は周囲の驚きの視線を一身に浴びながらも、何の未練もなくその場を離れた。
芹澤家へ戻ると、重たいドレスを脱ぎ捨てる。
私は和也のことを愛し、尽くしてきたことは周知の事実。
彼に関わることなら、何でも先回りして考え、すべて完璧に段取りしていた。
彼が「仕事が疲れる」「息抜きが欲しい」と口にすると、私は彼のスケジュールに合わせてハワイ旅行を手配してあげた。
彼がかつて「ハワイの海とビーチが恋しい」と言っていたのを覚えていたから。
――けれど、彼はハワイ旅行を断り、代わりに菜々子と登山に行くことを選んだ。
私には同行を命じられた。
土砂降りの中で、菜々子が落としたブレスレットを拾ってこいと命じられ、私は崖から転げ落ちて脚を骨折した。
2か月もの間、病院のベッドで寝たきりだった。
あの命の尽きそうな絶望感――もう二度と味わいたくない。
和也から離れること、それが人生をやり直す第一歩だ。
私は手早く荷物をまとめ、パスポートなどを持って階段を降りた。
ちょうどそのとき、正装姿の和也が慌ただしく玄関から飛び込んできた。
私の姿を見た彼は、いきなり冷笑し、こちらのスーツケースを奪って床に叩きつけた。
「何をするの?」
私がそう聞くと、彼は逆ギレのように怒鳴った。
「それはこっちのセリフだ!
だいの大人が家出など子どもじみた真似をするとは。
次は何?また遺書を残して自殺するつもりか?」
怒りと軽蔑に満ちた目で、和也は私を責め立てた。
「いいかあゆみ、お前の幼稚さには呆れた。自殺で俺を脅かしても無駄なんだぞ!」
私は投げられたスーツケースを拾い、彼をまっすぐ見返す。
「自殺なんて一言も言ってないよ」
和也と菜々子みたいな卑怯な人間まで都合よく生きているのに。
せっかく手にした「もう一度の人生」を、私が捨てるわけがない。
和也は鼻で笑い、何も答えなかった。ただ、その目には露骨な嘲りが浮かんでいた。
そのとき、菜々子がゆっくりと現れ、やさしい口調で語りかけてきた。
「あゆみ、誕生日パーティーに参加したかったら、ちゃんと和也くんに言えばよかったのに。
二人は兄妹みたいに育ったんだから、中に入れてくれないわけがないでしょ?
命を使った脅しは、一度ならまだしも、二度目はもう嘘同然だからね」
彼女は言葉を選びながらも、明らかに何かを仄めかしていた。
和也の視線もますます私への嫌悪に染まっていく。
記憶の奥がざわめいた。
――高校時代。和也が菜々子と付き合い始めた後、私のことを無視し始めた。
私はやるせなさに耐えられず、「川に飛び込んでやる」とメッセージを残した。
それを聞いた和也の両親、正治(まさはる)さんと恵子(けいこ)さんは大きく動揺した。
二人は激怒し、和也と菜々子の交際を無理やり止めさせた。
その件以来、和也は私を憎み、拒絶し、口を利こうともしなくなった。
菜々子の取り巻きたちは私を孤立させ、陰湿ないじめを繰り返したが、和也は見て見ぬふりをした。
私は、視線を逸らさずに和也に告げる。
「誤解しないで。自殺なんて考えてないよ。今からハワイに行くの、だから荷造りしてただけ」
和也は鼻で笑った。まるで、私がくだらない言い訳で自分を正当化しようとしているとでも言っているかのように。
すると菜々子が、少し困ったように彼の袖を引いた。
「ねえ和也くん、あゆみを誕生日パーティーに連れてってあげようよ。このままじゃ可哀想でしょ?」
和也は眉をひそめ、口を開こうとした瞬間、私は彼を遮った。
「結構だよ。私はハワイに行くって言ったでしょ」
和也の顔色がわずかに変わった。
「……聞いたか?『ハワイに行く』ってさ!」
菜々子がため息をつき、そっと私の腕に手をかけてきた。
「あゆみ、ワガママも大概にしなさい」
その長いネイルが、誰にも気づかれない場所で私の皮膚に深く食い込んだ。
「……ッ!」私は思わず彼女を突き飛ばした。
菜々子は床に倒れ込み、弱々しく手を押さえながら私を見上げる。
その唇はわなわなと震え、まるで心の底からショックを受けたように。
「あゆみ……なんて……」
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