五百円診察料を巡る冤罪、追い詰められた医者の逆転劇第2話
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「成分は同じなんだから、効果にそんな差が出るわけないでしょ?ただもっと儲けたいだけじゃないの?」
未桜はショート動画を再生した。そこには、いわゆる「医学専門家」と名乗る人物が、唾を飛ばしながら「高額な薬なんて、無知な人間をカモにして金を搾り取っているだけだ」と声高に批判している姿が映っていた。
それを目の当たりにした村人たちの視線が、完全に変わった。
信じてもらえない。その感覚が、胸の奥をざわつかせる。
だが同時に、未桜に理屈が通じないことも理解していた。
しかも後ろにはまだ大勢の患者が並んでいた。これ以上時間を無駄にするわけにはいかない。
「ネットで買えば同じだとお考えでしたら、ご自身で購入なさってください。
あなたの病気はもう診ません。今後、当クリニックには来ないでください」
僕は手を伸ばし、その薬を取り返そうとした。
だが彼女は薬をぎゅっと握りしめ、憤然として言い返した。
「なに?後ろめたいから証拠を隠したいの?
渡さないよ!これは証拠として取っておくんだから!」
なんて理不尽な――
怒りで思わず拳に力がこもった。そのとき、後ろの患者が顔をのぞかせ、小声で急かしてきた。
「大城先生、もうすぐ私の番なんですが……頭がまだ痛くて」
僕はそれ以上相手にせず、未桜を外へ押し出した。
「出ていってください!」
結局、彼女は一銭も払わず、薬だけを持って去っていった。
この件はそれで終わると思っていた。
だが翌日、クリニックのシャッターを開けた瞬間、目の前の光景に思わず一歩後ずさった。
入口の前には、黒山の人だかり。村中の老若男女が、ほとんど全員集まっていた。
その視線は、これまでのような親しみや敬意ではなく、怒りと軽蔑に満ちていた。
「金を返せ!」
誰かが叫んだのを合図に、群衆は一気にざわめき立った。
「大城晶(おおしろ あきら)、余分に取った金を返せ!」
「これだけ信じてやってたのに、裏でぼったくってたのか!」
僕は呆然とその場に立ち尽くし、頭が真っ白になった。
「何の話ですか……?何を返せと言うのですか」
人混みをかき分けて、村長が前に出てきた。痛ましげな表情で僕を見つめた。
「大城先生、どうして村のみんなから金を搾り取るような真似をしたんだ?」
そう言って、彼はスマホを差し出した。画面に表示されていたのは、目を疑うような刺激的なタイトルの記事……
【田舎の悪徳クリニック 白衣を着た悪魔 五百円の差額すら見逃さない】
その筆者の名前は……浅桐未桜。
動画は悪意をもって編集され、三千円を受け取る場面と、最後に未桜を追い出す場面だけが切り取られていた。
添えられた文章も扇動的で、僕は金のためなら手段を選ばない無徳の医者として描かれていた。
コメント欄は、もはや狂騒そのものだった。
【こんな医者、免許取り消しにして牢屋にぶち込め】
【最低だな、何も知らない村人を騙すなんて】
【浅桐さんの告発支持!これぞ正義!】
全身が震えるほどの怒りが込み上げた。
「全部でたらめです!彼女が悪意を持って投稿したんです。
僕がクリニックを経営してから何年も経ちますが、いつ誰から一銭でも多く取ったことがありますか?
薬代は、ほとんど原価で、診察料を少しだけ頂いているだけです!時には困っている近所の人には、自腹を切って薬代を補ったことさえあります」
そう訴えていると、群衆の後から未桜が姿を現した。
手には自撮り棒――ライブ配信の真っ最中だった。
「みなさん、見ましたか?これが悪徳医者の本性です。今になってもまだ言い逃れしてますよ。
本当に赤字覚悟の商売なら、どうして何年も続けられるんですか?
バカじゃないんだから、儲かるから続けてるに決まってる……しかも感謝までされるなんて、一石二鳥ですよね。
みんながあれだけ信頼していたのに、その裏で踊らせてたなんて……本当に偽善者ですね」
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